57話:巻き込まれた一般人
「クウェっ! クウェっ!」
森の中、四メートルはある巨大な怪鳥が心配そうになき一人の少女に寄り添っていた。
「……っ…うんっ………ああっ………」
少女は呻き声をあげて生存を示す。
「クウェェェ!」
怪鳥は生存を喜び、癒すための魔法と聖術を同時に発動させて彼女の命を繋げようと頑張る。
* * *
「うんっ、うん? はっ、はぁ!」
「くウェェ!!」
優夢はボロボロの状態で目を覚ました。傷は塞がったようだが、お腹以外の欠損した部位は治ってはいない。右手を使って体を起こす。
「ここはって、ヒッ!」
死にかけだったから考えが及ばなかったが、今の彼女には体が部分部分欠損しているだいぶ重傷な状況だ。現状を理解した段階で自分の体にショックを受ける。そして目の前にいる怪鳥に気付いてそれにも驚愕する。
「キャアアアアアァァァァァ!!」
一通り、驚き、困惑し、泣いた後、落ち着いて状況を飲み込む。
「はぁー、はぁー、はぁ、ここは何処?」
「クウェ?」
「貴方は誰?」
「クウェー………」
「移動は、この足じゃなぁ」
「クウェ!」
優夢は移動しようと思ったが足の問題でできないと悟ったが、怪鳥が彼女を自分の背に載せて運び始める。森の中を歩き始め道中に無害そうな木の実を見つけると怪鳥はそれ彼女に与える。
「食べていいの?」
「クェッ!」
「ありがとうね」
「クェ」
優夢は木の実を勇気を出して口に入れると、甘い味がして泣きそうになる。懐かしさを感じる様なとても素朴で優しい味だった。
思い返せば彼女に起こった悲劇はとても理不尽であった。平々凡々に生きていただけなのに訳の分からない場所へ飛ばされ、何かに選ばれた訳でもなく体を失くし森の中で放置される。これほど理不尽で惨い仕打ちもそうはあるまい。幸運だった事は生きていられた事と支えてくれる存在がいた事だろう。
数時間は彷徨っただろうか。すっかり日は暮れて、彼女は疲れの所為か倒れるように眠ってしまった。
* * *
優夢が目を覚ますとそこは見知らぬ天井が目に入って来た。そして左目の感覚がない事から眠る前の出来事は事実だったと認識させられる。
「って、ここは?」
落ち込むより前に現状の確認をするすると小さくなった怪鳥っぽい小鳥が彼女の下腹部に乗っかってる。こっちは起きているようで優夢の肩にのってすり寄ってきた。
「あれ、種類が違くない?」
「ピィ」
大きい時は鷲の様な姿だったのに、小さくなってシマエナガに似ている姿になっている。
「ピィ、ピィ、イィ」
「あっ………」
パタパタと羽ばたいて開いていた扉から小鳥は出て行く。部屋の中に置いて行かれた優夢は自分の現状を振り返ってみる。着ている服は新品になっていて元の服は小棚の上に置かれていた。寝ている場所は柔らかいベッドになっていて、布もスベスベで今まで寝てきた寝具の中で随一のモノである。
すると、外からスリッパで歩く音が聞こえてきて、入室前に壁をノックされる。
「入っても良いですか?」
若い男性の声だ、状況がよく分からないが取りあえず、
「どうぞ」
優夢は許可を出す。
室内には白髪で翆眼の優夢と同じ年頃の少年が入って来た。その手にはサンドイッチの乗った皿を持っている。
「無事に起きたようで何よりです、コレ、良かったら」
そうして手に持っていたサンドイッチを差し出す。右手しかない優夢だったが、サンドイッチは片手で持てて何とか食事をする。
「っう、ひぐぅ、ひぐ、ひぐ、ぅぅぅぅ」
安心からか、優夢はまた泣き出してしまう。少年の方は困惑して戸惑っている。小鳥は戻ってきて泣いている優夢を見つけると少年の頭をつつき始める。
少年は優夢が落ち着くまで、傍にいて慰めてやる。その間も小鳥に頭を突かれ続けていた。
「あっ、ありがとう、ございます」
泣き止んだ優夢は少年に感謝を述べる。
「自分はリョウっていいます。それで、ええと、君の名前は?」
「あっ、私は、桜川優夢、っていいます」
「良い名前ですね」
「えっ、いや、そんな事ないですよ」
照れつつ、謙遜する優夢だったが、色々思い出してリョウ――、ジンに説明をする。
「あ、あの、こんな事言っても信じてもらえるか分からないんですが、私、気付いたら森の中にいて、体も無くなって、どうしたら、良いか分かんなくて」
「………そうですか」
ジンは優夢の説明に大体納得した。勇者召喚に巻き込まれて左手と両足、右目を失い、腹部にも損傷を負って森の中に転がっていたところをジンが拾って祈達のいるエルフの村に連れてきたというのが優夢のこれまでの出来事の大筋だろう。ジンは行く前にニホン商会の仕事の大半を片付けてから来たので時間が掛かってしまったのだ。
「さて、貴方の身体の事を説明すると、両足、左手、左目、左脇腹の内臓が幾つかが全部なくなっていますね」
「っ、そ、そうですか」
薄々実感していた事だが、自分の身体が欠けている事を実感する。
「で、此処は君達の認識で判断すると異世界と呼ばれる場所だ」
「異世界、ですか」
「ああ、だからこんな事もできる」
ジンは分かりやすく指先から火を出してみる。
「お、おぉ」
「という訳で此処は異世界です」
「成程」
「再生させる魔法をかけたんだけど魔法の効果が無かったんで、内臓の方は重要性が高いので特殊な処置をして今まで通り生きられる様になっていますよ」
「ありがとうございます」
特殊な処理というのが気になったが、優夢はそこを置いておく。
「じゃあ、少し待っててくれ、一先ず使ってもらいたいものがあるから」
「わ、分かりました」
ジンは食べ終わった皿を運んで、室内から出て行く。




