56話:風の勇者は自立する
ガロリド皇国の皇都、ガーロンド。
ここでも光の柱が天を突いて立っていた。色は緑。その光は城から立っているので、城下町は大騒ぎだった。天変地異だの、この世の終わりなど、また王女が何かしたのだの、色々とな言葉が飛び交い城下町の人間は全員暴れている。少しすると光も収まり、騒ぎも収まった。
* * *
ガロリド皇国の皇城内の最深部にある宝物庫にて、莫大な魔力と光が宝物庫内にあふれて少しするとそれが収まりその場に元々いたメイドとドレスの少女が二人に加えて小型の竜と四人の男女が現れた。
「ふがぁ! ………っ!」
現れた少年の一人が鳥の様な不気味な仮面をつけて起き上がる。
「「「だれ?」」」
三陣営の人間が疑問をこぼす。
その時にはもう仮面の少年――、ジンは正確に相手の素性を理解する。
「いや、勇者と王女か」
「そういう貴方は何者です?」
「勇者の守護者と、同じく守護神獣だ」
「グガァァァァウ!」
室内に現れた小型の竜(それでも二メートルは身長があるが)がジンに呼応するように吠える。
「おっ、コイツが噂の」
ジンは宝物庫内にあった眼鏡を手に取ると、王女――、サテラに投げ渡す。渡されたメガネの意味を理解してそれをかける。そのまま、鑑定を使用して、現れた人間たちの素性を大体理解する。
しかし、サテラは少し首を傾げる。
「勇者の守護者って大層な肩書の割には能力が低いみたいだけど」
「成程、俺の能力はそいつに勝ると、安心したね」
「コレで見通せないか、かなり強力な能力持ってるのね」
ジンは自分の能力が通じる事を再認識した。サテラはジンの能力を確認して何となく理由を察した。
「交流欄とやらで出す情報を規制できるのか」
「そこまで、バレるか。けど、規制するだけで虚偽は出せない。数値に関しては全体から割合分を出しているってだけだ」
「つまりは表示よりも高い数値であると………」
サテラはこの時点でジンの能力の高さを悟った。
「ま、俺の事よりこっちの方にも意識を向けてあげな」
ジンは召喚されてきた勇者を指す。突然、話を向けられた三人は少し密集する。
「それで貴方達の内、そこの長髪の子が勇者ってなっているけど、そこの所はどうなの?」
「えー、勇者ってなに、ああいや、何ですか?」
「………考えてみれば何をやるんだろうね」
長髪の子の質問にジンは顎をさすって考える。
「そういう話は他に置いておいて、先ずは自己紹介でもしましょうか」
「そ、そうですか」
「では、俺から。名前はジン。前世の名前は東郷亮だ」
「……!……えっ、と……大月菜花です」
「う、宇田風琴葉です」
「青凪俊哉です」
「私はサテラ=ミル=クルスと申します」
「サテラ様のメイドで、ミシリカと申します」
ジン達はこの後どうしようか少し考えようとした所、ジンは分厚い扉の外から何者かが近づいてくる足音が聞こえてきた。
「騎士達が来るぞ」
「グルルルゥ」
「ムーゥ、ムーゥ」
「なんか黒いのが増えてる」
「あ、ごめん、俺の仲間だ」
ゴゴゴゴ、という音と共に宝物庫の重い扉が開いていき、サテラと似た容姿を持った美女が肉厚の剣を持って入ってくる。その後ろには重装備の騎士が控えている。
「サテラ、この状況はいったいなに?」
美女がサテラに対する声のトーンは優しげだが、随分と威圧的だ。しかし、サテラとミシリカ以外は彼女の体に目線が行っていた。
「うわぁ」
「デッカっ…」
「えー」
「おぉー」
入って来た美女の髪色はサテラと同じダークオレンジであり、瞳も同様の色だ。整った顔立ちはサテラの面影も感じさせる。しかし、最大の特徴はそのたわわに実る立派な胸部であろう。男ならつい見てしまうほど立派な爆乳である。サテラの方も年から考えれば中々の物が付いている。
そんな視線に気付いたのか艶やかな表情でジン達を見つめる。
畏縮する菜花達の前にジンが出て来る。
「ごきげんよう、サディア皇王陛下」
綺麗なお辞儀でジンは皇王である女性に挨拶する。彼女の名はサディア=ミル=クルス=ガロリド、二年前にこの国の王位を継いだ近隣でもまだ若い王である。聞くところによればまだ三十代前半らしい。
サテラはサディアに眼鏡を渡し、サディアをそれを受け取り彼らを確認する。
「貴方、能力と表示が釣り合ってない様に思えるのだけど?」
「ええ、自分の能力の一部でしょう。姫様が言うにはスキル【メニュー】の能力である程度は誤魔化せることが分かりましたので」
「成程、コレでも見通せないものがあるとは」
サディアは少し悩むが、その前に少し話しを聞くことにする。
「それで、お主は何が目的だ?」
「最低でも彼女彼らの穏やかな生活を保障してくれれば、自分はそれで満足です」
「……守護者としてか?」
「いや、兄弟子としてです」
「関係が分からぬな」
ジンの言葉を聞いて訝し気に首を傾げるサディア。
「勇者殿達はどうしたいのだ?」
「………少し、考えたいです」
「私もです」「自分もです」
菜花が喋り、他もそれに続く。ジンの後ろから言わなければ少しは格好がつくだろう。
「………あー、それで彼女らをどうします?」
「……保護したいが、色々問題があるね」
「男子がネックならばこの子だけは自分が預かりますが?」
「それじゃあ、任せる」
「軽いですねー。……君はいいかい?」
「まぁ、大丈夫です」
「じゃあ、お嬢さんたち用に俺の部下を残していくんで好きに使ってやってください」
ジンは空中に穴を開けて、その中からメイド服姿の少女を取り出し菜花の方へ渡す。
「じ、人身売買!」
「失敬だな。コレでも自分は多忙な身でね。いつも守ってやれるわけじゃないから、コイツはその備えだ」
「……成程。私はアスタルテと申します。これから、末永く宜しくお願い致します」
「じゃあ、アスタルテ、あとは任せるわ」
「承知致しました」
ジンは開けた穴に俊哉を詰め込み彼と一緒にトウキョウへ戻った。
* * *
「少し、移動しようか」
サディアが重要な話はまた今度にしてその場の解散を宣言して、サテラがそう言って菜花と琴葉を連れて自室へ連れていく。ミシリカは来客用としてお茶を淹れる。
「と、いう訳で貴方達にはこの国に協力してもらうことになります」
「………はぁ」
強制された未来に現実感が付いてこない溜息をもらす。
「で、始めにどうすればいいと思う?」
サテラはそう言ってアスタルテに尋ねる。
「………最悪国が滅んでも自分で生きられる様に二人を育ててみるのが一番かと」
「ウチ、滅びそう?」
「いえ、万が一も想定しておくならです」
アスタルテは真面目な顔でそう告げる。
「と、言う訳で一回現状のステータスと固有スキルを確認してみましょう」
アスタルテはそう言って二人の目の前に彼女達のステータスを表示してやる。
次からは本編に戻ります。同じようなのが続きましたが次回からは主人公視点に戻ります。




