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勇者の守護者〜誰かのために出来る事〜  作者: Dr.醤油煎餅
第四章 召喚勇者と見守る守護者
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54話:氷の勇者は保護される

 セイムント聖王国の属国の一つ、豊かとも貧しいとも言えない国。そこでは藍色の光の柱が立ち上がっていた。藍色の光は周りに大量の魔力をまき散らしながら、ある者をこの世界に連れてきた。光が収まるとその中心部に四人の人間と一匹の猿が現れていた。


「なに、これ?」

「家が、無くなった」

「キ、キィ!」

「うわ! 猿だ………」


 人間の内、二人は高校生くらいの少女で、もう二人は幼い少年少女だった。誰もパニックには成っていないが困惑はしていないようだった。


「おー、姫ちゃんだ」

「えっと、貴方は?」

「私は王華だよ。元だけどねー」

「は、はぁ。……元って意味は?」

「それは――」


 オウカが喋ろうとすると突然、かなりデカい蟻の群れが出現し、獲物と見定めた四人と一匹に向けて歯をカチカチ鳴らして近づいてくる。


「邪魔しないで」


 冷たい声が聞こえ、蟻の全身を冷気が包む。その余波で異世界から来た彼らの肌を冷気が強く刺激する。


「痛い〜」

「ちべたい」

「大丈夫?」


 子供の声に交じってオウカの心配そうな声が聞こえてくる。彼女が手を横に振うだけで周囲の温度は元に戻る。


「お~、暖かくなった~」

「少し、移動しよう。話がしたいし」

「ウキィ!」

「じゃあ、貴方も行こう」


 オウカは懐から小さい結晶を取り出して床に叩き付けると砕け散り、魔方陣が広がると召喚されてきた奴等は全員その場から消え去った。


*  *  *


 異世界から来た人たちからしてみれば、瞬きする間に場所が変わった。そうとしか思えない現象であった。異世界人の内一番年上の少女――、姫奈が呆然と呟く。


「ま、ほう?」

「せいかーい」


 オウカは抑揚のない声で姫奈の予想を正解と告げてやる。そのまま姫奈を抱き寄せ胸元に埋める。


「ぐぅう! ちょっ! くるぅし!」


 姫奈は胸元に埋められだいぶ苦しそうにもがいている。オウカは気にすることは無く姫奈に抱き着き続ける。だが、


「隊長、流石に苦しそうです。離してあげなさい」

「…………分かった」


 何時の間にか近づいて来ていた女性に言われ、オウカは残念そうに姫奈を離してやる。

 その後には女性がオウカを三人から離して距離を取らせ、説明を始める。


「初めまして、私はミルカと申します。この方の補佐として活動しています。先ずは、落ち着いてもらいたいとの事ですので越智らへ向かいましょう」

「…………」


 ミルカは三人の手を取って自分達の家へ招待する。家の外観は洋風の屋敷で普通の民家の倍くらいの大きさはあった。見た事のない家の外観に弟妹は目を輝かせていた。


「わぁー! 入っていい! 中見てみたい!」

「見たーい!」

「いいよ。私が案内する」

「え? はい、お願いします」

「では、貴方は私と少しお話ししましょう」

「はい」


 すぼんだ声で姫奈はミルカに返事をする。オウカはその間に弟妹達の手を取って、屋敷の中へ連れていく。二人は慣れたようで、楽しそうにオウカに連れられて行く。


「楽しそうですね」

「え、ええ、本当に」


 慣れるのが早すぎる弟妹に若干呆れの溜息を吐き、先導するミルカに付いて行く。


「ミルカさん。私達って今一体何がどうなっているんですか?」

「そうですね。私が言えることは貴方が勇者としてこの世に召喚された事ですね」

「私が勇者、ですか………」

「混乱が取れたら言ってください。答えられる範囲で質問には解答します」

「…………」


 ミルカは姫奈の混乱が収まるまで取りあえず黙っておくことにする。数分して姫奈は取りあえず頭の中で考えを纏める。


「私が勇者だとして、何かしなくてはいけない事とかあるんですか?」

「特に何もない筈です。今の世は平和ですし、特にやってもらうこともないんですよ」

「え? なんで私は呼ばれたんです?」

「さぁ?」

「さぁ、って。じゃあなんで私は呼ばれたんですか!」

「それもわかりません。貴方が召喚された場所に行ってみたら、貴方達がいたっていう感じですし。すごかったですよ。藍色の光の柱が立ち上っていて。すごく目立っていましたよ」

「そんな。…………私たちが戻る方法はありますか?」


 姫奈は縋るような声で質問する。そんな姫奈の問いにミルカはハッキリと告げる。


「現状、確認されておりません」

「…………」


 ミルカは溜める事もなく、しっかりと言い切る。予想していた事実だが、言い切られると来るものがある。姫奈は頭をかかえて悩み始める。


「どうも~」

「こんにちは~」


 オウカと弟妹達がいきなり入ってきた。泣いている様に頭を抱えて悩んでいる姫奈を見て、オウカの顔は不機嫌そうになる。その顔を見てミルカは言い訳を始めた。


「何もしてません。現状の事実を述べただけですし、私たち、彼女らにも出来ない事なのです、早々に諦めさせ前を向かせるべきです」

「…………分かった、ごめん」


 オウカはちょっと不満そうな顔をしているが、状況は分かっているのか頑張って飲み込んだ。すると、弟妹達に慰められたのかちょっと持ち直したようで姫奈がしゃべり始める。


「貴方達がこっちに連れてきた訳じゃないんですよね」

「はい、そうです」

「何か、仕事を頂けませんか? 可能であるなら、弟妹には手を出してもらいたくないんで、私だけで済む様な仕事を下さい」

「姉ちゃんがするなら、僕も!」

「私も!」


 オウカとミルカは苦笑いして姉妹達の家族愛に苦笑いしている。


「現状、こちらから頼むことはございませんが、仕事をして頂けるのなら上に頼んで生活は保障させましょう。人体実験とかはありませんのでそこはご安心を」

「ないし、()()()()


 笑いだすようにミルカは答え、オウカは最後の言葉にだいぶ力を込めて守ると告げた。

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