53話:雷の勇者は送り出される
まだちょっとこの話は変えていくつもりです。
ガイネア王国の王城では各地で起きている現象と同じように黄色の光が立ち上っていた。
そんな光景を誰もが呆然としながら見つめている。神々しい現象に言葉を失い、中には涙を流すものまでいる。そんな現象は数十秒で収まった。
* * *
ガイネア王国、王城宝物庫、そこには同じ制服を着た五人の少年少女、軍服の様な服装をした青年、白い蛇が部屋に現れていた。
「ここは?」
「お、おー、お宝が沢山ある」
「何があったのやら………」
「………坊ちゃま?」
「へ?」
「坊ちゃまぁぁぁぁ!」
召喚された軍服の青年は制服の少年の一人に抱き着く。青年はイケメンの部類で
「良かった、良かった、生きて下さっていた………」
「え? ちょっと、あの、落ち着いてくれます?」
「あ、はい、申し訳ございません」
軍服の青年は少し引いて、咳払いの後いったん落ち着く。
「そうですね、私も詳しい事情は分かりませんが、一先ず言える事は皆さんは異世界に連れてこられた、という感じですね」
「異世界………」
「言われてみれば」
「で、私は転生者ですね。生前は野本直助でした」
「ノモさん………?」
「そうです」
「いやぁー、若返ったねぇー」
坊ちゃまの少年は軽い感想を漏らす。状況が飲み込み切れないのだろう。
「貴様ら、何者だ?」
扉の先からは金髪の美青年が入ってきた。しかし、室内のノモル以外から見たら時代錯誤の服装をしている。まるで中世貴族の様な服装をしているのだ。美青年は相当険しい表情をしていて、少年たちを睨み付けている。ノモルは少年たちを後ろの隠して守ってやる。
「こちらの方が勇者様となっています。国王様にお目通りを願えますか、王剣、ラインハルト=アレクシス様」
交渉を有利にするためにノモルは坊ちゃまと呼ばれた少年を手で指す。ラインハルトと呼ばれた青年はは訝しそうに睨むが、ノモルは笑みを崩さずに自然体でいる。
「ラインハルト様!!」
後からラインハルトと同じ服装の人が何人もやってきた。すると、宝物庫に人間が入っていることに気付くとラインハルトの前に出る。
「貴様ら、何者だ!」
「先程、ラインハルト様にお伝えしました」
「はぁ?」
今やってきた人間全員がラインハルトの方へ振り向く。ラインハルトが無言で頷くと、振り向き直し素手で構える。
「物騒な人達ですね。一応こちらは話を聞いて頂けるのなら無抵抗なんですが」
「問答無用!」
「あっおい!」
ラインハルトが制止しようとしたがそれでも止められず、数人の騎士はノモルへ突撃していく。
ノモルは特に武器を構える様子はない。騎士たちは宝物庫内の不審者を無力化する為に、少年たちを抑え込もうとする。しかし騎士達は少年達に辿り着くことなく、ノモルが腕を振っただけで騎士全員が吹っ飛んだ。騎士たちはそのまま気絶してしまった。ラインハルトはそれを見届けると、宝物庫内にあった眼鏡をかけて全員の事を鑑定してみると、何となく状況を察した。その眼鏡を懐に納めて、話を始める。
「分かった。君たちの要求を受理しよう。案内するから付いて来てくれ」
ラインハルトは一歩下がって、ノモルと向き合う。ノモルも「承知致しました」と告げて少年たちを立たせ引率するように先導しながら歩かせる。少年たちは現状を理解して飲み込み大人しくノモルに付いて行く。
「それで君たちは何者なんだ?」
「我々は神から勇者を守護するよう言われた者です」
「……そうか。守護する者は勇者のみか?」
「言われたのは勇者のみですが、我々は勇者のやることは積極的に支援するつもりです。度が過ぎるようでしたらお止めするつもりですが」
「なるほど。今のところこちらに敵対するつもりはないか?」
「我々の事はそう思ってくださってくださって構いません」
引っ掛かる所はあるものの一応は敵対しないことを名言してきたノモル。数分歩くと一つの部屋にたどり着いた。ラインハルトがそこの扉を開けるとそこには質の良さそうなソファと机が設置されていた。
「陛下に話を通しに行く。一先ずはここで待機しておいてくれ。部屋のものは自由にしてくれて構わない。楽にしててくれ」
「感謝します」
ノモルが礼を告げると少年たちも続いて「ありがとうございます」と頭を下げる。ラインハルトは気にするなと告げてからそのまま部屋を出ていく。
そうして少年たちはソファに腰をかけるとようやく一息つけた。ノモルは用意されていた茶器を使用して紅茶を淹れていく。その手捌きは非常に洗練されていて一朝一夕で身につくものではないことが分かる。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「いえ、お気になさらず。私の役目でもありますので。こちらにお菓子の方もご用意しておきましたので良かったらご自由にどうぞ」
「色々と感謝します」
少年たちはノモルに深く頭を下げる。そしてノモルが話を始める。
「まずは自己紹介から始めましょうか。先ずは私から、今の名前はノモルと言います。前世同様、ノモさんと呼んでいただけたら嬉しいです」
「じゃあ、次は私から、東雲あすな。文芸部の部長でした。じゃあ、こっからは時計回りでお願い」
「私は宇佐美美雪です。同じく文芸部です」
「僕は神立信壱です。文芸部です」
「式鳴幸次です。文芸部でした」
「俺は村上左助です。文芸部の副部長でした」
「成程、文芸部の人達ですか。坊ちゃまのご学友の事は聞いておりました。皆さまも行方不明になってしまい手掛かりがつかめずにいたのですが、まさかこんな所にいらっしゃるとは。ノモは感激であります!」
ノモルは目元を抑えていて泣いているように見える。わざとらしい仕草ではあったが様になっていた。
「それで色々とお話をお願いできますか? 状況が分からなくて、これからどうすれば良いのかも知りたいのです」
「はい、承りました。先ずはこの国の情勢から話し始めましょうか」
そう言ってノモルは現在の王家の情報と実態を正確に話していく。簡潔に要点だけをまとめて話していくので文芸部の子たちの頭の中には正確な状況が頭の中に入っていく。数分話しをしたら一先ずの説明は終わる。
「ーー、とまあ、ここまでがおおまかな情勢になります。質問には答えられるもののみお答えするつもりです」
「…………もしかしなくても今の王家は状況が悪いんですか?」
「ええ。しかし、王家というよりは王国の存続のほうが厳しい状況かと」
「ああ。そうか、内乱が終わってもどっちかの国の影響力は残るんですよね」
「ご明察のとおりかと。そうなって来ても、皇国はともかく帝国側のこちらが勝利すると戦争の時代が始まる可能性は高いですね」
「そうか。クーデターを起こしたのは軍部の人間だし、ベント公爵は軍の実権を半分握ってるから兵達の不満を解消する為に簡単に戦争に踏み切っていく可能性はある」
「それもありますが、帝国は好戦的な国です。今回の件で恩義になっている状態では帝国の言いなりになって戦争に突入しますね」
「いや、そんな軽い感じに言わないでくださいよ。そんなやばい状況の泥船に乗るしかないなんて、どうしてこうなったんだ」
信壱は頭を抱えて俯く。ノモルはそんな信壱を慰めようとするが、一瞬、考えて結局やめる。この場合は悩ませていた方がいいと考えた。
「どうするかは後回しにするべきです。今やらないと、明日もありませんから」
「そうですね。先ずは何をやるべきだと思いますか?」
「これから王様との謁見がありますね。なので一先ずは聞かれた事には素直にそれ以外に関しては私の方でフォローしますので」
「分かりました。頑張ります」
ノモルの言葉にアスナは代表者として頷く。他の人間も大体の事はあすなとノモルに任せるようだった。ノモルもあすなを代表としてどうやって話をしていこうかと考えていく。
「ノモルさん、その蛇は何なんです?」
「勇者の為の神獣、まぁ、ペットですね。敵意を見せなければ襲わないと思うのでよかったらどうぞ」
「わ、わぁー」
すると、扉をノックする音が聞こえる。
「どうぞ」
「すまない、失礼する」
入って来たのはラインハルトだった。ラインハルトは律義に謝罪し入ってくる。
「準備が整った、来てくれ」
「了解しました。皆さん、付いて来てください」
ノモルは立ち上がって先導を始める。ラインハルトはそんなノモルの前に立って案内を始める。数分歩くと大きく豪華な装飾がされた扉の前に着いた。ラインハルトが扉に触れるとそのまま両開きに扉が開いていく。中には豪華な服を着た人間が多数とその最奥には玉座に座る王様らしき人が居た。
「よく来た、異世界からの客人達、それとそれを守護する者たち」
厳かな雰囲気の中でガイネア王国国王、ラムード=ファン=ガイネアがノモル達に告げる。その横には王妃シェリー、その娘第一王女、ラティーナがいた。そんな王族一家を見て信壱たちは見惚れている様だった。すると、横の集団から小太りの男が出てきた。
「ラムード様、一つ発言をよろしいですか?」
「カールルスプか。よい、許す。申してみよ」
「はっ! では、近衛騎士団長に尋ねます。召喚された勇者様、それとそのご友人達ここまではイイでしょう。しかし、勇者の守護者と自称するそこの二人は一体何なのでしょう。そんな素性の知れない人間の言葉を信じ、ここに連れてくるのはいかがなものですかな。我々に納得のいく説明をお願いします」
「既に【眼神の眼鏡】で確認済みです。陛下、今一度、確認を」
「よかろう」
ラインハルトが懐から眼鏡をラムードに渡すと、ラムードはそれをかけて鑑定で確認すると、正常に能力が発動され勇者である事と勇者の守護者を名乗る人物の異常な能力を確認する。
「確認できた。信用しよう」
「陛下、その決断は尚早だと判断します。そこの小僧がその魔道具に細工をした可能性も否定できません」
「どうやってだ?」
「えっ……」
「こいつは超級に数えられる魔道具。そんなものを不用意に弄れば使えなくなるのが筋だ。事実、我が国の昔の知識人は解体して弄ろうとして幾つか使えなくなったものもある。それを踏まえて、お主はこの小僧にコレを弄れると判断できるのか?」
「それは………」
「それにコレは宝物庫に保管されていたものだ。宝物庫前は近衛騎士団が警護を担当していたが、そこまでの通路はお主が指揮する兵士が警護を担当していただろう。細工をしていたというのなら、何故に侵入を許した?」
「相手の非を指摘しようとしたら、逆に自分の不備が明らかになった形ですねー」
「なっ! 黙れ! 私は公爵だぞ!」
「で?」
「ひゅっ」
苦情を言ってきた小太りの男ーー、カールルスプ=ベントは抗議してきたがノモルは銃を突きつけ黙らせる。ベント公爵は言葉に詰まり何も言えなくなった、そして助けを求める様にラインハルトの方を見るが、肩を竦めて諦めたような視線を向ける。
ノモルは何のためらいもなく銃の引き金を引く。
「ひぃあ!」
銃口から破裂音が響き、ベント公爵は情けない声を上げて尻餅をつく。ノモルの持っていたのは空砲だったようである。すると、彼はマガジンを交換して再度突きつける。
「意味のない殺しはしない様にしてるんです。今度は本物ですよ、試してみます?」
「っ! や、やってみろ! この国に居場所が残ると思うなよ!」
「三流のセリフですね。こういう死地こそ笑って流しておいた方が格が出てきますよ」
ノモルの無慈悲なアドバイスにベント公爵が何も言えず黙っているとラムードから声が掛かった。
「やめよ」
「はい」
「…………随分と素直に動くのだな」
「逆らう理由もないモノで」
ノモルは素直に頷いて銃を懐に納め、ベント公爵も命の危機を感じそそくさと元の場所へ戻っていく。一旦場が静まるとラムードが話しを始めた。
「で、そこの君が勇者で良いのか?」
「はい、その様です」
「では、現時点を持って、ガイネア王国国王ラムード=ファン=ガイネアがそなたを勇者として認定する」
「は、はい、光栄です」
信壱は緊張したように返事をしているが、少し場慣れしている様子であった。ラムードは少し息を吐いて話を進めていく。
「そうか。では、別の話をしよう。大事なのは今後何が起きるかだ。勇者殿、何か今後の事について聖神様達から聞いてる事とかは無いか?」
「聖神様、ですか。申し訳ございませんが、その神様については何も聞かされていませんし、存じ上げません」
「そうか。それは変な事を聞いたな。多分お主らとの縁は深い。調べておいて損はないだろう」
「貴重な情報を下さり感謝します」
「よい。一先ずこの場は解散としよう、ラインハルトと宰相、それと異世界人とその守護者以外は下がれ」
ベント公爵は不満そうな顔をしているが、ノモルににらまれるとそそくさと部屋から出て行った。
部屋から全ての貴族が出て行くと、ラムードは話を始めた。
「これで気が抜けるな。お主らも自由にしていいぞ」
ラムードは玉座に深く座り込み、背中を預ける。だいぶ気を抜いている様だった。
「さて、話を変えよう。君たちの今後についてだ」
「今後、ですか」
「そのままの意味だ。これからどうするのかを聞きたいのだ」
「ちなみに、どういった進路があるのでしょう?」
アスナが代表としてラムードに尋ねる。ラムードは宰相の方を見ると、宰相は顎に手を当て考え始める。少し考えたあとに話し始める。
「そうですね。個人的に良いと感じるのは、全員をこの国とは関係ないということにして別の場所に移す案ですかね」
「なるほど。問題になりそうだな」
「そうなるでしょう。ですので、2つ目の案です。皆様には学院に通ってもらいます」
「学院ですか?」
アスナは首を傾げて宰相に聞き直す。宰相は小さく頷くと話しを続ける。
「ええ。一先ずはこっちでの一般常識について学んでもらいましょう」
「だが、ここの学院に通わせれば貴族の毒牙にかかるぞ」
「そこはしょうがないでしょう。いずれにせよ勇者が入ってくる時点で疎まれるのは確定です。気にするところではありません」
宰相の言葉にいや気にしてくれと信壱たちは心の中で突っ込む。
「ですので、我々の影響力が届かない場所へ彼らを送り、そこで学を付けさせるべきかと。それはさておき貴方はニホン商会の関係者ですね」
「はい、そうですね」
「最近ニホン商会では学園施設を新設したと聞いています。皆さまをそこに編入させることは可能ですか?」
「可能かと」
「でしたら、勇者様方の身柄は預けます。この世界に慣れさせるように努めて下さい。その後はこちらに戻ってきていただければと」
「そう言うことでしたら喜んで務めさせてもらいます」
宰相の言葉にノモルは綺麗に一礼をして答える。国王も満足そうに頷き。勇者たちに命令をする。
「それでは信壱殿、並びにその友人達よ。ニホン商会の拠点、トウキョウにある学び舎でこの世界の事を学びなさい」
『はい、分かりました』
信壱達は緊張しながら返事をする。
「ノモルよ、勇者の事を任せる。育成方法は自由にしてよい」
「ありがたき幸せ」
ノモルは場慣れした様子で一礼する。ラムードはこの場の解散を宣言し、ラインハルトにノモル達を城の外へ出すように命じる。命じられるとラインハルトも動きだし、全員を外へ案内する。
ラムードは玉座に座りなおし、背中を預ける。
「これでベント公爵派が勢いづくことは無いだろうな」
「ええ、ニホン商会なら必ず守ってくれるでしょう。それに、他国からの勧誘も弾いてくれるでしょう」
「問題はどういう機関になるかだな。あまりおかしな状況に放り込むのは気が引けるのだがな」
「随分と彼らを守ろうとするのですね」
「つまらんことで勇者との協力がしにくくなるのと、爆弾みたいな奴らをいつまでも腹の中に抱えておく趣味はない」
「勇者の守護者ですか。彼らは一体何者なんでしょうね」
「さてな、少なくとも分かっているのは。ラインハルト並みに強く、ヤツ以上に使い難い存在ということだ」
ラムードは横に座っていた、ラティーナに声をかける。
「ラティーナよ。お前も彼らについて行ってこい。入学に関してはこっちで何とかしておく」
「分かりました、お父様」
「取り入る必要はない。行動を見張り問題があるなら報告しろ」
「了解しました」
ラムードはノモルから感じた得体のしれない恐怖を胸のうちにしまい、王家の復興への策を考え始めるのであった。
* * *
ノモル達はラインハルトの後ろを歩いていく。すれ違う人は見慣れぬ信壱たちを好奇の視線で見るが、ラインハルトが一睨みするだけでそそくさと逃げていく。
「そう言えば、そちらの上司はどんな方なのだ?」
「そんな事を言われましてもね。……一言で言うと変わった人ですよ」
「変わった人か。なら、楽しみだな」
何が楽しみなのか信壱たちは首を傾げる。しかし、聞くに聞けずにそのまま城の外へと案内される。全員外に出て行くと、ラインハルトの方が声を掛けてきた。
「それじゃあ、またね。会えるのを楽しみにしているよ」
「ええ、お世話になりました」
ノモル達は全員で頭を下げるとノモルを先頭に王都のそとへ向かう。その後ろ姿を見てラインハルトは、
「多分直ぐに会えると思うけど、また会う日まで強くなっておきな」
ほくそ笑むように呟いた。
* * *
王都の外へ出た勇者一行は王都が遠目に出るくらいまで歩いて出ると、ノモルが付いてきた全員に向き直り話を始める。
「一先ずは自由を得ました。落ち着いて話をしたいので我々の拠点へ案内いたします」
そう言うとノモルは目線で指示を出し。リカがそれに答えてスキルを発動させる。すると全員の視界がブレたかと思うと全く違う景色が飛び込んできた。
田んぼの中にある大きな日本家屋で、家自体は黒を基調とした素材で構成されていて、木製の柵で囲われている。主人の割には何というか、
「普通の家ですね」
そんな感想が誰かからこぼれた。
ノモルはそんな感想に苦笑いしながら家の奥へ案内していく。
「どうぞ、中へ。ごゆるりとお寛ぎ下さ、っ!」
ノモルが家の戸を開けて中に入ろうとすると、中から何かが飛び出してきた。飛びだしてきたのは人だった。軽く受け身を取った後にすぐに立ち上がり、大分険しい顔をして屋敷の中に入っていく。
「てめぇ、今日は殺す! 絶対にぃ殺す!」
確かな殺意の声が聞こえると家の中から雷鳴が聞こえてくる。
それを聞いたと同時にノモルが扉を閉め、にこやかな顔で語りかける。
「少々、汚れがあったようなので掃除をしてまいりますね。皆さまはここで暫しお待ちください」
迫力のある笑みを浮かべた後に中に入っていくノモル。ノモルが入っていって数秒すると中から壮絶な悲鳴が聞こえてくる。その悲鳴も数秒すると収まった。悲鳴が収まると直ぐにノモルが出てきた。入ったときと変わらないにこやかな表情を浮かべながら。家へ入るよう促す。
「さぁ、手狭ではありますが我が家へどうぞお入りください」
ノモルは戸を開け全員を中へ促す。リカが先頭で入っていき、その後を恐る恐ると言う様に信壱たちが入っていく。最期にノモルが入り戸を閉める。先にリカが案内をしていて信壱たちは居間へ通される。
「それでは、邪魔が来ない内に話を進めましょう。先ず、貴方がたに足りないのはこの世界の常識です」
全員はそうなのかとリカの方を見ると彼女は頷く。
「そうなると色々と騙されたり流されたりして、他人にいいように利用されたりしてしまうでしょう。それを防ぐ為にもやはり学びは重要になっていきます。国王は貴族たちに邪魔されずに貴方がたに学をつけさせるために此処の地域に新設させる学院に全員を入れるよう我々に命令をしてきました。なので、貴方がたが何を言おうと学校に通ってもらうことになります」
「いえ、我々に足りない所に埋めてくれるならこれ以上に喜ばしいことは無いです。それに残っていれば何をされていたか」
「そこまで、酷い事されるような事はなかったと思いますよ。勇者以外は保証できませんが」
ノモルは諦観の笑みを浮かべる。貴族に嫌な思い出でもあったのか、諦めの表情はだいぶ深い。そんなきれいな表情を見ていると信壱たちは身震いが止まらなかった。なぜだか分からないが胸の中のざわつきが大きくなっていく。
「まぁ、学校はまだ始まりませんし、今日は疲れてしまったでしょう、部屋は沢山ありますのでご自由にお寛ぎください」
そう言って後ろの戸を手で指して移動を促す。そして自分で茶を用意すると湯呑に注ぎ一息つき、ゆっくりと気を抜く。
「さてさて、商会長にはなんて報告しましょうかね」
次に始める報告について、ノモルは頭を抱え始めるのだった。




