41話:超級への昇格試験
爺さんが死んだ後でも問題なく、商会は運営し続け、ジン達は忙しい日々を送っている。
「こっちの書類は終わったから、次お願い」
「はい、こちらです」
決済、報告、決定事項の書類に判と署名をしていき、順調に書類と仕事を処理しておく。
午前はこうやって仕事をこなしていき、午後からは兵士の訓練に付き合ったりする。そんな中で、ジンに一通の手紙が冒険者ギルドから届いた。その内容は超級への昇格のお誘いだった。ジンは一応、色々な実績を上げているのでこういうのが形式に届いたのかと思ったが、ちゃんと理由が載せられていた。
「『貴殿は特級迷宮を三つ攻略した実績もあるとの事で今回、昇格試験の案内を送らせてもらいました。ぜひ、ご参加の程をよろしくお願いいたします』………分かってたんだな」
「そんなに攻略してたんですか?」
「ああ、偶には実戦慣れしておきたくて休日に入ってた」
「休日の意味………」
ユリネは働きまくっている年下上司を呆れて顔で見る。
「とはいえ、どうするんです?」
「うーん、正直、まだ箔不足なのは否めないんだよな」
「まぁ、実績上げているとはいえ、リョウ様はまだ12歳………、本当に12歳ですか?」
「年齢は12歳だよ」
「そうですか。で、どうされます、これ? 受けます、拒みます?」
「受けるよ。なるべく国の影響から離れられる立場になりたい」
「最年少で最速の超級任命になりますかね」
「そうなると良いね」
ジンは笑って流し、了承の印を押して返事を冒険者ギルドの本部に送った。
* * *
数日後、ジンは冒険者ギルドの本部に来ていた。超級迷宮はこれからギルド本部のギルド長に会って内容を聞くことになっている。今傍にはアスタルテしかいない。しかも、大分待たされている。
「ギルド長ってどんな人だっけ?」
「最近、変わったという話ですよ。なんでも、少し怪しい人物なのだとか」
「どっから聞いたの?」
「その辺のメイドや冒険者からヒソヒソと」
「相変わらず、そういう所は抜け目ない」
ギルド長の人柄について話していると、この前の赤ん坊についての話に移る。
「赤ん坊、アサミの記憶はどうだったの?」
「ありませんでしたよ。根こそぎ抜き取られていました」
「そうか。………良かったと、考えるべきだね」
「記憶が戻って人類皆殺しとか始められても困るしなー」
そんな雑談を続けていると、ギルド長からの入室の許可が入った。
「どうも、ガンジ獣王国特級冒険者、リョウです」
「付き添いの三級冒険者のアスタルテです」
中にいるのはニタニタと笑う太った男――、ギルド長のコードル=フリードマンだと思われる。
「いやー、よく来てくれた」
「………」
ジンは返礼の代わりに拳銃を突き付ける。失礼を通り越した行為だったが、アスタルテも止めず白けた目でギルド長を見ている。
「それは、一体何の真似だい?」
「こっちのセリフだ。不愉快な幻術を止めろ、姿がブレて見える」
「なるほど、一応は経験の浅い子供らしいね。じゃ、止めよ」
ギルド長が指を振ると太った姿が変わり、細身の好青年らしき姿に変わった。その耳がとがっていることから、エルフだというのも分かる。これがコードル=フリードマンの真の姿だろう。
「じゃあ、自己紹介するね。僕の名前はコードル=フリードマン。全冒険者ギルドの運営をまかせてもらっている者さ。今回は超級への昇格の件で呼び出させてもらった」
「よろしくお願いします」
「まぁまぁ、そこにかけてくれ。話はそれからだ」
ジン達は勧められたソファに腰を掛けてコードルと向かい合う。そうすると間の机の上に数枚の紙が並べられる。
「これが昇格試験を行うにあたって、受けて欲しい依頼だ」
「全部受けるんですか?」
「まぁ、そうだね。特級に類する魔物の単独での三体討伐と特級迷宮の攻略。これが昇格の条件。しかも期間は一年以内」
「特級迷宮の攻略なら何回かやっているけど、特級の魔物は数回くらいしか戦ったことがないな」
「特級迷宮を周回とはどんな冗談だよ」
「まぁ、さっきまでの話を要約すると、超級冒険者への昇格の条件として、賞金首になっている特級の魔物をどうにかしてくれと?」
「まぁ、そうだね。という訳で、選んでくれない?」
「そうですねぇ………」
机の紙には色々な賞金首が揃っている。
『ガイネア王国南東の廃街:不死の王ギャンター』
『インバシア帝国北西の鉱山:鉱石喰らい』
『セイムント聖王国北中央の森林:呪老賢樹』
『ガロリド皇国南部沿海地域:灯りの怪魚』
『セイムント聖王国北部沖合:狂水竜』
『ガンジ獣王国北部沿岸地域:悪水大鬼』
と言った感じだ。少ないのは良い事だろう。多すぎたら逆に荒れていることになる。この位で丁度良いのかもしれない。
「聖王国はやっぱり荒れてるんですかね」
「立場ある者として言いにくいが、聖王国は中央と辺境で格差が酷いからな差別も酷いし、辺境地域だとこうして問題が残ってるのが多い」
「やっぱ問題しかないんだよなあの国」
「否定はしないがね、僕の就任にも一悶着あったし」
「予想は出来ますよ。それで、三体で良いんですよね」
「ああ、どれをとってもらっても構わない。どれにする?」
「じゃあ、距離的に近いこの三つで」
ジンが選んだのは聖王国の依頼二つと獣王国の依頼一つを選ぶ。
「で、これで達成すれば依頼達成か?」
「そうだね。早めにいかないと獣王国の特級冒険者が頑張るかもしれないからさっさと行きな」
「………そうすっね」
ジンは聖王国の方は頑張らないのかと考えたが、頑張らないなと考えなおし、先ずは獣王国の依頼を片付けに行く。




