31話:ジンさんの国責め記(後編)
今日の朝と昼前に国が二つ滅びた。片方は大量の人間の体が腐り落ちて国を堕とされ、片方は多数の人間の頭が逝ってしまい国が滅んだ。
そんな昼頃、三つ目の国に小さな戦略兵器が迫っていた。
* * *
ジンは三つ目の国、ガスター王国に来ていた。
そうしてガスター王国の国境付近の街道に立ちそこに立つ砦を無感情な瞳で見つめていた。傍らには最高指揮官が縛られた状態で引き摺られていた。
「さて三つ目だ。という訳でこいつかな」
ジンは右の腰から暗い橙色の刀――“竜雲の大剣・改”を抜く。それと同時に大量の魔力を込めて振う、すると鋼鉄以上の硬度を持つ雲が発生する。その雲は指向性をもって広がっていき門を破壊し、砦を守っていた兵士たちを雲が覆って封じ込めていく。最終的に完全に固まって、絶望の表情を張り付けてある趣味の悪い彫像が出来上がった。
ジンは破壊した門から砦に入り目的の物がある部屋に入っていく。そして遠隔通信魔道具を起動させて他の二ヶ国と同様に警告の言葉を送ってやる。昼を過ぎたが警告がこっちまで伝わっていることは無いだろう。
同じように五分後、全兵力を王都へ送りこむ。ジンは溜息を吐いて、王都へ転移する。前と同じように警告の音声を送る。すると、今度は緩慢な動作ではなく中々に練度の高い動きで守りを固めていく。
「よし、では頑張ってくれ」
ジンは無情な言葉で途轍もない魔力を込めた刀を振って硬度を持った雲を発生させて、槍の形を作り、刀を構えて突き出し、音速以上の速度で雲が突撃していく。バリスタの様な雲が大砲レベルで飛んで行くと門をぶち破りそのまま門の前に会った広場に突き刺さる。
「珍しい街づくりだな。ま、実用的ではあるけど。………面倒だな」
ジンは民間人には攻撃しない様にしているので盾にするように民家を構えられるのは面倒であった。しかし、理にはかなっているので、責める気はあまりない。
面倒だと言っても、打つ手がない訳では無い。しかも、今回の刀は鋼鉄の雲を操る、足場はいくらでも作り出せる。ジンは魔力を込めて足元に雲を発生させそこに乗って、まるで孫悟空のように王城へ向かう。王城の城門前に来ると、とんでもない質量の雲を生成すると入道雲のように伸びていき、城壁を破壊するように倒れていく。堀も掘られていたが、倒れた雲が橋となって渡れるようになっていた。その上を通って城の中に侵入する。流石に兵士たちは腰が引けて掛かってくることは無い。
騎士が出てくると、強化魔法が発動されて体表から淡い光を放っている。
しかし、ジンは刀を水平に振って騎士を上下に分断する。その後は刀から出た雲が、鞭のようにしなって迫りくる騎士たちを分断していく。
「あっちだな」
ジンは通路に沿っていくのが面倒になったので、雲を使って壁をぶち抜き王がいるとマップに出ている寝室へ入る。
そんなジンにとんでもない光景が目に入ってくる。丸々と太った男が女性に覆いかぶさるようにベッドにいて、事を起こそうとしていた。女性の方は顔には見覚えが無かったが、その服装には見覚えがあった。ジンが衣装係と一緒に考えたオリジナルの衣装である。つまり、ニホン商会の職員を男は襲っていることになる。
その光景を目に入れると抑えが効かなくなり、雲を操り槍の様に形を変えると肥えた腹を突き刺し、体を壁に叩きつける。
「げはぁ!」
普通なら絶命するところであろうが、中々に耐えている。
「ちっ、しぶとい」
「ぐはっ! あっ! ぐうっ!」
「とっとと死ね、うるせえぞ」
「いあっ! ぐあぁ!」
雲の槍を連射して、四肢を切断する。短く上げる悲鳴が苛立たしい、今はその音が煩わしく聞こえてしょうがない。心は熱くなっているが、頭は至って冷静だ。次にやる事は決まっている。
「じゃあ、死ね」
そのまま心臓を貫き静かにさせる。遺体は確認するまでもなく国王であった。ジンは国王の死体を雲で覆って彫像にして、襲われていた職員に近づく。ジンはインベントリから、大きめの清潔な布を取り出して被せてやり、インベントリの中にあった数点の武器を取り出す。
「地下にいる奴等も開放してやれ、これはやる。他の兵士が抵抗してくるなら、殺して構わん」
「はい、申し訳ございません。それと、ありがとうございます」
「じゃ、行ってこい」
「はい」
ニホン商会の職員は、急いで着替え足早に武器を持って部屋を出て行く。地下牢までの行き方は連れてこられるまでで覚えたのだろう、特に迷う様子はなく向かっているようだった。しっかり地下牢にまで付くのを見届けるとジンは、一声だけ掛けるとそのまま次の襲撃場所へと向かう。
* * *
ガスター王国はかなり早く終わった。慣れてきたのもあるが、簡単だったこともあるだろう。王都が襲撃されているのに情事に入ろうとする等、国王がやる事とは思えない。しかも、捕虜にしている人間に手を出すなど、色んな意味で救われない国である。
「くそったれな国だったな。いや、国王か。次は面倒くさくないと………、いや無理か」
とうとう最後はニホン商会の襲撃を企てた元凶の国である、ジョナウス王国だ。捕虜からの尋問で分かった。
前回と同じように国境付近にある砦へ行くと、右の腰に差してあった刀を抜く。
「じゃ、今回は暴れるか、今日でもう終わりそうだな」
時間的には夕暮れが近づいてきた頃。これで最後の侵攻である。後処理は他に任せるので、これが終わればようやく休める。
あー、休みたい。休んで、畑耕したり内職をしたりしたい。あれ? 結局働いている? そんな下らない事を思いながら。
休みの予定は置いておき、行動を始める。今回使うのは“黒鳥王の剣・改”だ。今までは刀の能力を引き出して殲滅していたが、今回は技量で勝負してみることにする。
流石に遠距離でやるわけでは無いので、指揮官は背中合わせになるように両腕ごと巻き込んでミイラ巻きにする。白い刀身の刀をもって突っ込んでいく。その姿を見て、砦の人間は大騒ぎを始める。そうして砦の大門前に辿り着くと思いっ切り振り抜く。大門はそのまま一刀両断されて崩れる。
「ギャアアア!」
「な、何だ!?」
「た、助けてくれぇ!?」
砦の兵士たちは悲鳴を上げながら現状に驚愕する。普通じゃほぼ無敵である鋼鉄で強化されている大門を簡単に破壊された事を信じられないようだ。
それを見届けるとジンは魔法で拡声させ警告を発する。
「死にたくなければ全員消え失せろ!」
とんでもない音量が砦中に響き渡る。その声で大半の兵士が倒れた。しかしまだ、砦の中には何人か残って立っている。しかし、立っている兵士はもう戦意は残っていないようだ。全員が膝を付いてしまっている。
「ここだな」
ジンは砦内の通信魔道具を乗っ取り、国土全域に向けて放送を行う。
そして、腹を括って語りだす。
「警告する。我はニホン商会の商会長だ。今回の我らの本拠地襲撃に関して貴国が主導したものだと情報を掴んだ。その事に関しては責めるつもりはないが、貴国および他の三ヶ国に関しては責任を取ってもらう。だが、無実の民を不必要に辱めるつもりはない。民間人は家に入り鍵を閉めていろ、家に押し入るような真似はしない。兵士たちは武器を捨て投降するのなら、無暗に殺すような真似はしない。今から五分後、王都を襲撃させてもらう。それまでに戦闘準備を整えて置け」
ジンは通信を切る。そのまま、ミイラ巻きにした最高指揮官を地面に放り投げ。近くにあった椅子に腰かける。そうして声を掛けてやる。
「お前の祖国を滅ぼそうと思うんだ。どう思う?」
「――!――――!」
猿轡を噛ませているので声は出せない、だが抵抗して何かを叫んでいる様だ。
「なにを驚いているんだ? お前らは俺達を滅ぼそうとしている。いや、していた。その仕返しとして国が滅ばされる何もおかしい事はないだろう」
「――!――!―!」
意地の悪い笑みを浮かべて指揮官を見返してやる。さらに抵抗して指揮官は騒いでいるが、抜け出せない様に縛り上げているので暫く暴れていたが無意味だと思ったのか五分経ったら動かなくなった。
ジンは時間の経過を確認してスキル【転移】を発動させ全兵力を王都へ集結させる。その後、自分にも発動させ運ぶ。
* * *
ジョナウス王国王都へと続く街道。ジンは背中にミイラ巻きにした人間を背負って拡声用暴風魔法を発動する。
「ソーテルダムダ王国国民諸君! 私はニホン商会の会頭である! 今から君たちの国王を仕留めに行く、守りたければ守れ、邪魔をするなら全員殺す、逃げるんだったら追いはしない。今から侵攻する。どうするかはご自由に」
内容は物騒なのに、言い回しは少し優しかった。
警告の声が終わると、ジンは立ち上がって“黒鳥王の剣・改”を抜いて、姿勢を低く構える。そのまま闘気を足に注入して足元を蹴る。ジンは一瞬で王都外壁の城門に近づき刀を振う。王都の城門は砦と同じ鋼鉄で補強された壁である。だがジンが放った太刀筋に沿って、その鋼鉄製の城門はバラバラになる。長く守ってきたんだろう、信頼していた門を簡単に破られて民衆の大半は腰を抜かしているように感じる。
しかし、ジンが鋼鉄の壁をバラバラにしてしまった事により、ジンの上に鋼鉄の塊が降ってくる。ジンはそれを予測していたのか刀の峰を使って投石機のように投げつける。投げつけた鋼鉄を巻き込んで何個も鋼鉄の塊が飛んで行く。そのまま何個も兵士たちに激突していく。結果、大半の兵士は大怪我を負って動けなくなっている。
「王城へ向かっているぞ! 追え!」
兵士の一人が大声で声を掛けた時にはもう遅い。ジンは屋根の上を飛んで、なるべく会敵しない様に進んでいく誰一人としてジンには追いつけない。だが、目的地は分かっているので大勢の兵士は王城を守るために王城へ向かう。ジンがたどり着いたころには王城の前には兵士だけではなく冒険者も守るために構えていた。ジンはそれに怒るという訳ではなく、冷めた眼差しで王城前の広場に降り立つ。大勢の人間は降りてきたのが少年だったことに驚愕しているが兵士長らしき人間が指示を出し、兵士と冒険者が一斉に突撃してくる。ジンも刀を構えて迎撃する。
まず初めにジンの一撃が集団に直撃する。ジンが横に一閃すると前衛にいたほとんどの人間が吹き飛ばされ、五割は削れる。もう一撃打ち込もうと刀を構えなおし、そのままもう一度振う。結果はさっきと同じこれで王城正面を守る人間はいない。
しかし、王城の跳ね橋は上がり通れなくなっている。まあ、ジンには関係はない。遠距離で立てこもる気ならこじ開けるだけだ。ジンは刀を構えて、暴風魔法を使い斬撃を飛ばして城を塞いでいた跳ね橋を粉々にする。そのまま跳躍して城の堀を飛び越え、城の中を守っていた人間を掌底で頭を撃ち抜き、怯んだところを刀で斬り付け数十人を一度に切り捨てる。マップで城を確認して王の居場所を突き止める。
「ええと、あっちか」
ジンは右上を見上げる王城の中心にある謁見の間ではなく、多分王の私室。周りには妙齢の女性、称号にはニホン商会の職員が多数。何をしているのか大体察したので気分が悪くなってくる。
とっとと済ませる為、魔法を纏わせて斬撃を飛ばす。王はともかく商会の従業員は巻き込まない様に当てない様に調整する。ジンが放った攻撃は斬撃と言うより、ドリルのように壁を削り直通の通路を完成させる。ジンがその通路を通って部屋に入ると胸糞悪い光景が目に映る。
まず、最初に床に倒れている女性たち全員が裸で全員が虚ろで目に光を感じない、薬品の匂いがするので恐らくは媚薬の類だろう。服が周囲に散乱していて、股下から血が出ていた、よく見ると白っぽいものも垂れている。そしてもれなく虚ろな目をしているが、その目は涙を流している。
室内で立っている女性は屈辱的な恰好をさせられて並べられている。表情は唇を引き搾り何かをこらえているようだった。
ベッドには太った男が覆いかぶさるようにしている、覆いかぶさっている女性は服をひん剥かれている。とてつもなく嫌そうな顔をして、顔を背けている。
数秒時間が止まったように部屋の中の全員は固まる。ジンはその数秒で状況を把握して、太った男を壁にまで吹き飛ばす。取りあえず処置が必要そうな人間に聖法で処置を始める。後で全員に処置はしておくがまずは数人である。その間に太った男は体勢を立て直し、室内に立てかけてあった剣を取る。ジンは睨んで男の動きを止める。その間にも聖法の処置を進める。大分消耗は回復して白っぽいのも綺麗に取れてきている。
「さて、どうするか」
処置はほぼ終わった。後は国王をやった後に仕上げを終わらせるだけだろう。
ただ、少し考え、丁度良い機会だと。インベントリから無数の武器と魔方陣を埋め込んだ魔石を取りだし魔力を通して効果を発動させる。
「な、何をした」
「何だろうな」
驚き怯える国王の質問にジンははぐらかして返す。ジンは足の腱を切って国王を動けない様にする。
「後は好きにすると良い。今はこれ以上、何もする気は俺にはない」
ニヤリと笑って外への扉を顎で指す。その言葉に国王は希望を見出したのか全力で扉へ向かおうとするが足が上手く動かない。
加えて、上から押さえつけられる。あと一歩で出られそうだった為にかなり悔しそうにしている。押さえつけているのは先程まで犯されていた女性達の一人。ジンがインベントリから取り出した大量の武器を手に持っている。
「とどめは俺がさすから生かしておいてくれ、牢屋の方に行くから何かあったら其処にな」
「分かりました」
「じゃ、行ってくる」
ジンが部屋を出ると、丁度騎士が何人かこっちに来ていた。その顔は大分険しく殺気立ってジンを睨み付けている。対処しない訳にもいかないので、刀を構えなおし横に一閃それだけで壁は断たれ、騎士の胴体も泣き別れする。そのまま通り過ぎると地下牢に狙いを定めて風の魔法を下に放つ、竜巻は床を撃ち抜いて地下牢までの直通路を開き、ジンはそこを落ちて行く。下まで行くとそこには牢屋に入れられた人間が多数。自分の商会の人間なので特に何もやっていないのに捕まった人達だろう。ジンは自分の冒険者カードを見せる。
「えーと、俺は特級冒険者だ。商会の紹介で助けに来ました」
「え、えーと、はい、ありがとうございます?」
「じゃあ、今開けますね」
はい、と商会員は少し牢屋の扉から離れる。ジンは刀を使うと思いきや。懐に手を入れ針金を出す。それを見て拍子抜けしたように商会員は安堵する。鍵穴に針金を入れガチャガチャと弄ってやる。数秒しても解ける気配はない。
「まぁ、いいや」
ジンは嘆息して刀を握り直し、鉄格子を切り裂く。鉄柵はバラバラになって崩れ落ちる。商会員は、ええ、と何か言いたい表情をしていた。気を取り直すと全員牢屋から出て、他の牢屋の人間の救出に向かった。
一応犯歴が無いかを調べてから解放するようである。ジンはそれを見送ると縦穴から上の方へ戻っていった。
ジンが上に戻ると、女性達は国王の手足を切り刻み、股間を切り刻み顔面を焼いていた。
「うぉ、エグい」
思わず声を出してしまった、国王の状態は同じ性別の人間からしてみればどこか同情してしまう。
「ああ、おかえりなさい。では、どうぞ」
「あ、ああ」
ジンは男――、王様に向かって歩いていく。王様はもう何も見えていないのか、呻いて芋虫のように跳ねている。こんな状況でもまだ生きようとしているらしい。耳は潰されていなさそうなので聞こえはするのだろう。
「さて、俺は別に心を読めるわけでは無いが、言葉を離せないだろうから遺言は心の中で思うと良い。では、さようなら」
ジンは刀を振り上げ、いっそ優しいと思うように一撃で殺してやる。王様は頭から縦に割られて絶命した。




