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勇者の守護者〜誰かのために出来る事〜  作者: Dr.醤油煎餅
第三章 勇者の準備
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30話:ジンさんの国責め記(前編)

 トウガの大橋上の戦闘があった次の日。

 ジンは牢屋にいた侵攻軍の最高指揮官たちを荷車に詰める。予定ではムーに牽かせて各国を巡るつもりだ。


「じゃあ、行ってくるね」

「「行ってらっしゃいませ」」


 アスタルテとユリネから早朝だというのに見送りに来てくれた。他の奴等はまだ眠っているのだろう。ムーは空を駆けだし、ジンや捕虜の乗る馬車も空を飛んで国を壊しに向かうのだった。


*  *  *


 まだ空も暗いうち。

 トウキョウへの襲撃を行った四ヶ国の内地理的に一番トウキョウから離れているサイゼリン王国、王国の西端の国境付近にある砦。そこには、日も出ていない内から街道を歩いてくる小柄の人影が近づいてくる。影は何か荷物を背負っているが遠目にはよく見えない。そんな小さい影を砦の兵士は確認していた。


「おい、なんか近づいてくるぞ。なんだ、あれ?」


 いち早く気付いた兵士は周りに声を掛ける。周りにいた兵士もその声に先導されて影に目を向ける。全員の視線が集まり、目を凝らしてみるとその姿が見えてくる。


「こ、子供だ! 子供が人を担いでるぞ!」

「何? もしかしたら途中で魔物に襲われたのかもしれない。直ぐに回収して事情聴取をしろ」


 はい、と兵士たちは敬礼して砦の門を開く。

 すると少年は大分手前で、立ち止まって右側の腰から変わった剣を抜く。刀身は緑色をしていて艶やかに煌き、形は片刃で一般に出回っている剣とは形状が異なる。

 兵士たちは訝しそうに近づいていこうとする。その間に少年は刀身に魔力を溜めているのか鈍く光りはじめる。それを遠くから見ている兵士は警戒心を掻き立てる。その警戒心に駆り立てられる様に兵士は取り押さえようと準備していく。

 けれど、そんな行動を嘲笑うように少年は緑の剣を振う。同時に刀身から緑色の煙が吐き出される。


*  *  *


 ジンは“毒霧の腕・改”の能力を発動させて大規模な毒ガスの霧を発生させる。ジンの身長を遥かに超えた霧は砦を包み込んでいく。何も見えないが恐らくは砦中の人間は毒ガスにやられている事だろう。可哀そうだとは思わない。結果的に何事もなかったとはいえ、自分の都市を襲撃されて黙っているわけはなくこれも必要なモノだと割り切る。見せしめは必要なモノなのだから。


 マップを見ると自分と連れてきた捕虜以外の生存を確認できなくなると。“毒霧の腕”の能力を解除して、毒霧を空気に溶かし込み消す。その後の砦はいつもと変わらない姿しているが人の気が無く物寂しい雰囲気がする。


「……な、何が起こった?」

「全員殺した」


 淡々と事実を告げて、砦の人間の全員を殺したことを告げる。それだけ言うとジンは砦の中に入っていく。砦の扉は開いていたので中に入っていく。中に入ると異常な腐臭が鼻を刺激してくる。風の魔法で換気をしつつ中に入っていく。

 中に入ると遠隔地連絡用の魔道具のある部屋を見つける。連絡用の魔道具は直径二十センチの水晶の形をしている。この魔道具は効果範囲内にある魔道具すべてに情報を伝える。その性質の為、簡単に通信を傍受でき同じ魔道具を持っていれば簡単に盗聴が出来る。

 それはさておき、ジンはこれを使っての盗聴、ではなく放送を開始する。魔道具に手を翳し魔力を注入して限界領域まで放送範囲を拡大して放送を開始する。


「あー、あー、あー、聞かせますよー」


 気の抜けるような放送のあいさつと共にジンの放送が始まる。


「私はニホン商会の商会長だ。今からこの国を堕とす。次の攻撃目標は王都だ。繰り返す、今から五分後にこの国を堕とす。降伏するなら命までは取る気はない」


 冷たい声色の音声が通信魔道具から伝わる。大半の人間は冗談だと思うだろうが一応形式的に宣戦布告はしておかないと後から何言われるのかもわからない。

 息を吐いて思考を変える。五分経つまでにすべての準備を済ませておくことにする。

 五分後、何がある訳ではないが酷く憂鬱な気分になりながら、手を地面についてスキル【転移】をマップ頼りに発動させる。

 


「じゃあ、行くぞ」


 ジンは捕虜に取っていた侵攻軍の最高指揮官の襟首を掴み、【偽る魔術師】を使って空間を繋げる。そのまま穴を通って、ムーと共にサイゼリン王国の王都に着く。


*  *  *


 サイゼリン王国の王都内は大騒ぎになっていた、突然大勢の兵士が出現したのだ。王都は突然の出来事に完全なパニックに陥っていた。だが、それもすぐに終わる。

 緑色の煙が問答無用で城門を腐食させこじ開ける。煙は扉をこじ開け霧散する、空気中に分解されて跡形もなく消えた。その後には一人の少年――、ジンが大きな荷物を持って立っていた。手元には形の変わった剣を持ってこじ開けられた城門に向かっている。


「誰か来るぞ! 総員迎撃態勢!」


 城壁の上から見張りの兵士が声を掛ける、この声に王都中の兵士は城門方を向く。大量の兵士が一斉に同じ方向を向くのは中々壮観な光景である。

 そんな光景を白けた目で見るジン。取りあえず、風億世の魔法を使って声を拡散させることにする。


「サイゼリン王国の王都にいる王国軍全軍に告ぐ! 今からこの国を堕とす! 歯向かう意思のある者はかかってくるがいい! 投降するなら追撃はしない、抵抗するなら容赦はない!」


 ジンの大声が王都中に拡散された事だろう、兵士は困惑を隠せないようだが、次の瞬間には全軍に緊張が走る。

 ジンが刀を掲げると緑色の煙が爆発的に生産される。煙は入道雲のように大きくなり、掲げていた刀を勢いよく振り下ろすと煙もそれに倣うように下に降りてくる。兵士たちは一気に恐怖したこのままでは確実に死ぬ、何の抵抗もできていないただの犬死だ、何人かは諦めずに一斉に突撃を始める。しかし、目の前の恐怖から逃げようと、大半の兵士が横道にそれる。突撃していった兵士は全員ジンめがけて怒気を高めて殺さんと迫る。

 刀が振り下ろされると緑の煙が城まで続く大通りを突き進み、大通りを埋め尽くす。よく見ると、一般市民は巻き込まれずに緑の煙は避けている。被害を受けているのはジンに抵抗してきた兵士だけである。

 数秒もすると、煙は消え、残されたのは毒に侵された兵士で、体を高温と激痛に苛まれ苦しんでいる様子が分かりやすく見て取れる。ジンは腐食して破壊した後の城門を歩いていく死に絶えの兵士たちの上を歩いていく、踏まれた兵士は苦しそうに悲鳴を上げて呻き声を漏らす。

 周りで怯える目を向けてくる市民や兵士は無視して、王城に向かって歩いて進む。道は腐り落ちていて、石畳は溶けていて最早原型は無かった。王城までは何事もなく辿り着いたが王城には流石にそこを守護する近衛騎士がいた。こちらは、流石に逃げる訳にはいかないのか気力を奮い立たせて何とか防ごうと城門前に立ち塞がり、大声を張り上げる。


「止まれ! ここからは国王の居城だ! 貴様の様な下郎が立ち入るような場所ではない!」

「そうはいかない。国王は確実に殺す、邪魔立てするならそいつらも殺していく。……一度だけ言うぞ、そこをどけ」


 底冷えするような声色で、刀を構えるジン。近衛騎士もそれに対応して剣を構えるが。


「ぐぅ!うう、ぐうぁあああ!」


 すると一番前にいた近衛騎士がいきなり喉を抑えて苦しみ始める、他の近衛騎士も困惑し始めるが、最初と同様に喉を抑え始める。そのままジンは近衛騎士の中を突き進んでいく。近衛騎士全員はそのまま地面に倒れ込み、完全に静かになるまで苦しみ続けた。


*  *  *


 王城の中に入ると、かなり絢爛豪華な内装だった。一つ一つが無駄に豪華で権力を誇示するように、煌びやかな内装をしている。正直見ていてかなり鬱陶しく、ジンの趣味には会わない。辟易した表情でそのまま進む。侍従や文官たちはそそくさと逃げていくが、ジンは別に追ったりしない。襲いかかってくる兵士だけに反撃して止めを刺している。

 王城の中を数分歩けば、目的の場所に着く。大きな両開きの扉で一際豪華な装飾を施されている。ココがジンの目指していた場所、王城の謁見の間である。ジンが手を置いてそのまま破壊し無理矢理に扉を開ける。


「ぶ、無礼な! 我を誰と心得る!」


 多分、この国の国王である人物が喚めいている。ジンには興味が無いので国王であるのならやる事を済ませる事にする。


「国王で合ってるな?」

「くっ、それがどうした。貴様の様な下郎には我自ら天誅を下してやる!」


 そう言って、国王のような奴は大型の杖を取り出した。白く豪華な装飾のされた趣味の悪い杖だった。

 国王が杖に魔力を籠めると、杖先から炎が渦巻いて熱波の竜巻がジンの方へ向かっていく。ジンは鬱陶しそうに顔を顰めると、手を突き出して億劫そうに振り払う。すると熱波は霧散して掻き消える。


「取りあえず、ぶん殴っておくか」

「……ひっ!」


 ジンは瞬間的に距離を詰めて国王の顔面に拳をぶち込む。国王は勢いに乗ってそのまま壁に吹き飛ぶ。轟音と共に壁が崩れる。生身で受けたのなら普通の人間には耐えきれない威力だったはずだ。王のレベルは二十、偽装されてなければ今ので、仕留められている。

 しかし、崩れた壁から出てきたのは無傷の国王。無駄に不敵な笑みを浮かべている。呆れるほどの頑丈さに溜息を吐く、何かのスキルかと表示を出してみるが特におかしなところはない。ジンは不思議そうに首を捻る。

 すると、国王は表情からそれを読み取ったのか自慢げに説明しだす。


「はははははは、残念だったなぁ~! 国の王にはそれぞれ【王たる威厳】と言うスキルがある。このスキルは自分が支配する国土の領域内であれば、国民の数だけ自身を強化できる! もう貴様には勝ち目などない! あきらめるのだ!」

「……ほ~ん」


 ジンは興味のなさそうな声で軽く相槌を打っておく。初見のスキルだったが、さっきの感触から大体の能力の上昇値は読めている、加えて、ある程度この国については調べてある。人口は大体十万人、枯れた小国なのでこれでも人数は多い方である。このままいけばいずれ潰れる事になっていただろうから、ニホン商会の財産を狙ってきたのだろう。


「ウチを乗っ取ったところで、お前の国が建て治る事などないぞ」

「黙れ! お前らが溜め込んでいる財産さえあれば、我の国はいくらでも立て直せる。だからとっとと死ね!」


 王は杖を持ち直しジンに向ける。ジンは刀を構えなおし、後ろを振り向きと同時に刀を振り抜いて、気配を消して近づいていた騎士達に毒を注入する。


「ぐああああああ!」

「あああ、あ、あ、ああああ!」

「いぐぁ! あああ、あ、あ!」

「ひぃぃぃ!」


 騎士たちは切られたところが腐食を始め体が溶け出していく。呻き声をあげ体が無くなっていく感覚を味わっていく。五人がいた騎士が一瞥もされずに体を溶かされるのを見て、王は腰を抜かす。威厳も何もあったものではない。


「早く終わらせるか、鬱陶しいし」


 疲れたような声で呟くジン。その言葉に怯えを隠せない国王、自分の方が能力値は高いというのに目の前の人間が出す覇気に耐える事が出来ない。

 ジンは刀に魔力を込める。すると、とてつもなく毒々しい煙が刀から発生する。


「や、やめろぉ! 炎よ! 炎よ! 炎よ!」


 慌てふためく国王が叫びながら、長さが二メートルはある炎の矢が十本射出される。矢は着弾すると同時に爆発する。普通の人間ならばまず粉々に吹き飛ぶだろうが、残念なことに相手は普通ではない。

 爆炎の中から無傷のジンが出てきた。いや、爆炎がジンを避けるようになっている。いや、ジンの周りの風が渦巻き、炎を散らしているのだ。


「ああ、あああ!」


 手札を潰されて、崩れ落ちる国王。ジンはゆっくりと近づいていく、焦る様子は無い。刀からは絶えず煙が生産され続け、謁見の間を埋め尽くしていく。

 数十秒したら謁見の間から少年が出てきて。その後は謁見の間から声が聞こえることは無かった。


*  *  *


 ジンは地下牢に捕らわれていたニホン商会関係者、全員を解放してやる。その後は半分くらいを城に残し、残りは街に戻り店の復旧に向かう。

 そしてジンは城から出いく、辺りを見渡せば恐ろしい物を見るような目で民衆が見返してくる。まだ昼前であるが腹が空いているので、お昼としてハンバーガーもどきをインベントリから取り出し、昼飯として腹に納めて置く。大勢の人間から見られるという孤独な昼飯を済ませると、転移してその場から離れた。


「次はデーミヤズ王国。じゃあ、こいつか」


 ジンは左の腰から灰色の刀を取り出す。この刀は『幻霧の腕・改』である。その次にムーの馬車の中から、デーミヤズ王国の最高指揮官を取り出す。

 ジンは砦が見える街道上に立って、砦に向かって刀を振り上げる。魔力を刀身に溜めてそれを一気に開放して砦を覆うように灰色の煙が向かっていく、砦は困惑の真っただ中にあった。灰色の煙は砦の中に侵入し、それが吸収されていく。


「ああ、忠告は、……しなくていいか」


 煙を放ったは良いが警告はしていなかったことを思いだしたが、シューユルム王国の砦でも忠告はしなかった。特に問題はないだろうと思い直し、能力を更に深く発動させる。このままでもよかったのだが、こうする事でより効率的に幻影で相手の頭を破壊できる。


「どうだ? 前回の奴には聞き忘れたが、今の気持ちを説明してみてくれないか?」


 灰色の煙の向こうからは、困惑や悲鳴が聞こえていたが数分もすると、奇声や笑い声が聞こえ始める。最高指揮官だった者は、顔を青ざめさせている。そんな指揮官に底意地が悪そうに問いかけてみる。彼は青ざめた顔で、口をパクパク開く。どうやら答えられないらしい。


「まぁ、いいや。入るか」


 そう言って、砦の中に侵入する。内部はシューユルム王国とはまた違ったように地獄絵図になっていた。煙はジンと最高指揮官を避けていく。そんな中で目的の部屋に辿り着く。


「あった、あった」


 遠隔通信魔道具のある部屋に着いた。という訳で前回と同じように警告を発し、五分後に王都へ続く街道の上に転移する。

 続けて同じように、魔法で拡声して警告を告げる。そのまま、刀を振り上げる。サイゼリン王国で使った魔力は既に回復してある。したがって刀には膨大な魔力を籠めている、それを上段から振り下ろす。腰を落として振う。


「門ヲ開ケ! 開門シロ~!」


 門を守るであろう人間の声が聞こえてくる、その声は普通の人間よりもぎこちない。ジンは開かれた大門に入っていく、今回は止められる人間などいない。皆、半狂乱になって騒ぎまくっている。中々、こんな人数の人間の頭がおかしくなるなんて見れない光景である。

 王城までは大通りが続いている。だが、大門から入ってきたジンを止めるような人間は居なかった。声も出せず、腰を抜かしているが何とか逃げようとしている。


「傷つくなぁ」


 ジンは少し残念そうに呟いてその足で大通りを歩いていく。王城の門にも煙を注入して門兵たちの精神を壊して門を開けさせる。城の内装はシューユルム王国の王城と似たり寄ったりの絢爛豪華で嫌味のある内装だった。ま、そんな内装を横目に見ながら城の中を歩いていく。マップを見て目的の人物がいる部屋に着く。

 今回は謁見の間ではなく、王様の私室のようだった。


「やぁ、王様」


 なるべく優し気な声色で声を掛けるジンだったが、王は腰を抜かして後ずさっていく。そんな姿は気にしない様にズカズカと王の私室へ入っていく。完全に無礼な行いだったが、これから滅びる国の元首に敬意を示せというのも無理な話だ。


「さて、どうするんだ? 抵抗するか、それとも投降して終わらせるか?」

「投降した場合は?」

「目的はお前だけだし、不必要に辱めるつもりはない」

「成程。じゃあ、殺せ。それと、国民の事を任せる」


 ジンは潔い王の態度に敬意を示し、記憶にも残さない様に終わらせてやる。刀の能力で薄く能力を発動させ、ゆっくりと頭の中を犯していく。そうやって安楽死させるようにゆっくりと殺していく。

 そうして静かに殺した後、部屋に会ったソファに寝かせる。最高指揮官は部屋の中に入れて食料と水分を用意してやる。逃げ出す様子はないようだったので拘束することは無かった。その後は地下牢に捉えられていた人間を出して、前と同じように後を任せる。


 そうして城を出て行き、次の目的地へ向かうのだった。

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