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勇者の守護者〜誰かのために出来る事〜  作者: Dr.醤油煎餅
第二章 守護者達の旅行記
31/151

25話:魔族との決闘

「ほほほ、もう、バレてしまったか。残念じゃのう」


 たいして、動揺した様子もなく、気楽に笑っている地竜王ドルムアース、と思われる老人。


「まぁ、あんまり貴方の情報は見えなかったんだけど、話の内容からある程度察せた」

「ほう、何とも察しの良い小僧よのう。まぁ、もう隠す意味もないからの、ちょっと待てよ」


 そう言って、周りにいた魔族を端に寄せ、自分から離すと一歩前に出る。すると、老人の体は段々と肥大化していく。肌は硬質化していき、体は巨大化、背中からは蝙蝠の様な羽、長さ十数メートルはある巨大な尻尾。最終的には、高さ五メートルくらいのオレンジ色の竜になった。


「ぐふふ、改めて自己紹介といこうかな。儂は地竜王ドルムアースじゃ。よろしゅう頼むぞ、小さき小僧共よ」


 巨竜化したドルムアースは低く太く、貫禄のある声を出す。

 余りの大きさにトウガは口をあんぐりと開けて、呆けている。ジンも多少は驚いたようだが、平然としてドルムアースを見つめ返している。


「ふふふ、やはり驚くか。久しく驚くものも少なかったのでの、そういう反応は新鮮で、嬉しいのぉ」


 ドルムアースは子供のようにおかしそうに笑っている。ジンは頭を掻きながら、話を元に戻す。


「で、さっき言っていた事だが、あんたは認めてくれるのか?」

「うむ、面白そうであるからの、儂は認めてやるぞい。だがのぉ、この事は簡単ではない。それも理解し、突き進もうとしている愚かな若造を隠れてみているのは面白そうであるからの」


 ジンは少し顔を綻ばせている、だがその後のドルムアースの言葉を聞いて思案顔になる。


「だが、この場にいる魔族たちが納得するかは、また別の問題だな。だから、儂の力を貸してほしいのであれば、ここに住む魔族たちを納得させるほどの力を示して見せよ。そうすれば、儂の力を貸す。いや、後ろの小僧に与えてやってもええぞ」


 フフっと笑い、後ろに立っているドルムアースと同じくらいに巨大化したムーを指差す。

 ジンはどうしようかと首を捻って考える。ムーもトウガも、周りにいる他の魔族も難しそうに首を捻って考える。そこでドルムアースは愉快そうに笑って、提案する。


「まぁ、いきなりやれと言うのも難しいか。で、提案じゃ」

「?」

「どうせ、お前たち魔族は簡単には認めないのであろう。お前たちは、お前たちの望むように勝負を仕掛けてみるとええ。ヌシ達も別に構わんのだろう」

「俺達は別に構わないですけどね。何をするのかにもよるんですけど」


 そう言って、ほぼ空気になっていた魔族たちの目を向ける。


「い、今、本物の長老たちに話を伝えてくる。取りあえず、一旦ついてこい。地竜王様ここら辺で失礼します」


 そう言って、ジン達を先導し魔族の村へ案内する。


*  *  *


 十数分歩いて、魔族の村へたどり着く。(ちなみにムーはぬいぐるみサイズになりジンの頭にのっている。ドルムアースはどことなく少年の姿になってジン達の横で歩いている)

 村は大木の中に住居を作り、過ごしやすく改造している。自然を生かした素朴な造りで出来ていて、住みやすそうではある。

 ジン達は一番大きい大木に入っていく。大木の中を上っていくと、そこは大きな部屋が作られていて、そこには優し気な顔をしたお婆さんが奥に座り、数人が机を囲んで席に着いていた、どの人物もお年寄りである。長老会といったところであろうか。


「ふぇ、ふぇ、ふぇ、お前さん方が、地竜王様に認められていたという小僧さん方かのぉ。儂はここにいる魔族を束ねる、最長老のアルデモと申す。まぁ、よろしゅうのぉ」

「はい、リョウです。宜しくお願いいたします」


 ぺこりと、一礼してジンは自己紹介する。本名よりもこれから使う名前の方がいいと判断したので、そっちで挨拶した。


「それにしても、竜を乗せるか。何ともまぁ、不思議で面白い光景じゃな。こりゃ、傑作!」


 アルデモはケタケタと愉快そうに笑っている。が、直ぐに話を戻し、本題に入っていく。


「で、我らに自分たちを認めさせる為に、我らが課す試練を受けるというものだったの。本当にお主たちは我らの提案を全て飲むというのか?」

「ある程度は飲むつもり、でも生死にかかわる物はやめて欲しい。少なくとも、そっちに死者は出してはいないんだから」

「ま、それくらいだったらええか。勝負で死ぬのは別に構わんのか?」

「それ位は覚悟の上。どんとこい」


 ジンは胸を叩いて、心配無用という様に胸を張る。


「ふぇ、ふぇ、そいつは頼もしいのぉ。では、そちらは三人、こちらは六人出し合って、一対二で決闘と言うのはどうじゃ?」

「具体的なルールは?」

「そうじゃの、お主たちは三戦全勝で勝ち、こちらは一勝でも拾えたら勝ち。場外はあり、先に相手が戦闘不能になるか、『参った』と言った方の負け。魔法もなんでも自由に使ってもよいが、原則殺すのはなし。そんな所かのぉ」


 随分とジン達に不利なルールではあるが、それでもいいと言ったのはジン達である。なので此処は素直に了承する。


「はい、承知しました」


 少し懸念もあるが、そこに尋ねようとはしなかった。だが、アルデモがそこをつくように話す。


「我らは、戦いでの約束を反故にしようとは思わん。ここまで有利な条件を突き付けて、勝てなかったのだとしたらそれは本当にわれらの所為でもある。お主たちが勝利したら、約束は果たそう。それはこの紙に署名し、誓わせてもらおう」


 そう言って、アルデモは【誓約の紙片】を懐から出す。今回のは罰則を決めてそれを履行させる類のものだった。なので、ジン達は罰則と約束を決めて、その日は解散となった。


*  *  *


 今日はもう遅いと言うので、部屋を貸してもらいそこに泊まることとなった。で、厨房で料理して、食事をとり明日の事について、トウガとジン、そしてムーと話し合う。


「で、どうすんだ?かなり不利な、条件突き付けられたけど」

「どうも、こうも、真正面からやっていくしかないだろ。流石に、魔法まで禁止されると辛かっただろうけど使えるのならどうとでもなる」

「むー、そういうもんか?」

「相手の実力が見えないが、そこら辺はやってみなくちゃ分からない。いざとなったら、いくつか奥の手もあるし、そこまで心配する事はねぇよ。それよりお前は自分の心配をするべきだな」

「おう、そうだな」

「グゥゥゥ」

「ああ、そうだな。お前の心配もしなくちゃな」


 トウガとばかり喋っているジンに、ヤキモチを焼くように唸るムーをそっと撫でてやるジン。何となく気が抜ける光景にトウガはやれやれという様に溜息をつき、椅子から立ち上がってベッドで寝ることにした。

 ジンもムーを自分の中に戻し、ベッドで寝ることにした。


*  *  *


 翌日、充分な睡眠をとって、目覚めの良い朝を迎え、朝食を取って、暫く待つと魔族からの迎えが来た。

 迎えに来た魔族の案内に従っていくと、でかい切り株のリングのようなところに着いた。大体縦横の長さが二十メートルはある。この切り株は普通の物ではなく『建樹』と呼ばれる特殊な樹らしい。魔力を籠め、成長後の形を想像しながら種を植えると一瞬でその通りに成長するらしい。硬度は鉄を超える程頑丈で、ある程度火にも強い。魔族たちの住居もこれで作られている。

 向かいには魔族の精鋭と思わしき六人が佇み、敵意をたぎらせた瞳で、こちらの事を睨んでくる。昨日の隊長らしき魔族の女性もいた。周りには、大勢の魔族たちが遠巻きにこちらを見ている。どうやら観客のようだ。

 するとリングの中心にアルデモが出てきた。


「さぁ、今回も命知らずのバカ共がきたぞぉ!」

『『『『『うおおおおぉぉぉ!』』』』』


 アルデモの掛け声に観客が沸き上がる。昨日の態度とは違う、アルデモの姿にジン達は瞠目して、驚きを表している。


「今回の挑戦者は、竜王に認められた子供、リョウ、トウガ、そしてムーじゃぁぁぁぁ!」

『『『『『わぁぁぁぁぁ!』』』』』


 ハイテンションなアルデモの声が響き、それに観客が沸く。プロレスの試合のようである。


「相対するは、我ら魔族の精鋭六人!デリブラ、ドミナス、デザルナ、ドルムン、ドミニ、デミス! 愚かな挑戦者たちに、現実をしらしめてくれぇぇ!」

『『『『『おぉぉぉ!』』』』』


 なんというか、圧倒的なアウェー感がある試合をすることになったなと感じる。トウガの方は若干顔が引き攣っている。


「なんか、キャラ変わりすぎじゃね」

「鬱憤とか溜まってんだよ。管理職ってさ、そういうの多いっていうじゃん」

「憂さ晴らしも兼ねてるって事なのかねぇ」


 どこか呆れた様子のトウガが冷めた様子で、ノリノリの実況をしているアルデモを見る。短い前置きが終わり、早速決闘に移ることになった。

 アルデモが第一回戦の対戦者を発表する。ちなみに出る順は昨日のうちに通達済みである。


「第一回戦は、ドルムン、ドミニのコンビ、対、ムー!」


 一回戦は、ムーと魔人族の巨漢の男のコンビ。それぞれ、レベル90台戦うにしては中々に強敵だ。

 ドルムンとドミニはそれぞれが自信満々な顔つきで、切り株のリングに出てくる。ムーもジンの中から出てきて二足歩行で身長三メートル程になりリングに降り立った。


「さあ、第一回戦、開始!」


 何故か、カーンというゴングの音と共に、第一回戦の火ぶたが切って落とされた。


*  *  *


「ウォォォォ!」


 ドルムンと言う男は身長二メートル位の巨漢で、常人なら両手で持つであろう大槌を片手で振るいムーに叩きつけようとするが、ムーがバックステップで軽く躱す。そこにドミニと呼ばれるドルムンと同じ位の巨漢が、突撃槍(ランス)を持って突っ込んでくる。ムーは下手に受けずに、回避に専念する。その後は似たような攻防が続いていく。

 図体はムーが一番大きいが、一番軽やかに動いているのもムーだった。ムーは相手の動きを読み、余裕を持って躱し続ける。対するドルムンとドミニのペアは、中々当たらない自分たちの攻撃に段々と苛立ってきて、振りや動きに粗さが出てくる。

 ここで、ようやくムーが攻勢に出る。ドルムンの大振りを引きつけ、それをギリギリで躱し。振りきったところでドルムンの懐に入り、拳を握ってドルムンの腹に【衝】を打ち込む。


「ぎゃっ!」


 それを喰らって、ドルムンの体には衝撃が駆け巡り、気絶してそのまま倒れ込んでしまった。

 溜めの隙がある【衝】を使ったことによりムーに隙が出来る。ドミニはそれを見逃さず、ムーの脇腹辺りに突撃槍を打ち込むが。


「か、固ぁ!」


 ムーの頑強な皮膚に止められる。そのままムーは、止めたドミニの突撃槍を片手で掴み、そのまま握りつぶす。そして片手で突撃槍をドミニごと引き寄せ、そのまま、もう片方の腕の大振りでドミニを場外まで吹き飛ばす。

 会場は静まり返ったが、やがてアルデモの声が響く。


「勝者、ムー!」

「グォォォォォ!」


 アルデモの声に応えるようにムーが咆哮を出し、第一回戦が終了した。


*  *  *


「おい、お前の精霊、何時の間にお前の技が使えるようになったんだ?」

「知らねぇよ、睡眠学習みたいなものじゃないの?」


 ジンだって、教えてもいない継戦二心流の技をムーが使えるようになっていることに驚いてるのだ。今の状況をすんなり飲み込める程、心の準備は出来ていなかった。


「まぁ、そこら辺は後での検証だ。次はお前だろ、早くいってこい」

「しょうがない、後で色々聞かせろよな!」


 そう言うとムーと入れ替わりで、トウガが切り株リングに入っていく。

 ジンは戻ってきたムーを抱きしめてやり。


「よく頑張ったな」


 そう言って、一言、労いの言葉をかけてやり、正面のリングに目を向ける。


*  *  *


「それでは続いて、第二回戦。対戦者は、ドミナスとデザルナのコンビ、対、トウガ!」


 アルデモが紹介すると、再び歓声が沸き起こり、対戦者たちがリングに入ってくる。

 トウガの対戦相手は、さっきと違って小柄な女の子達だった。トウガの悪役(ヒール)ぶりが際立つ。だが、見た目に反して隙の無い技量を持っている。レベルは110台の凄腕、さっきよりも強敵である。


「さぁ。早速、第二回戦、開始!」


 またも、ゴングの音と共に第二回戦が始まった。


*  *  *


「はっはぁー!」


 そう気合を入れながら、トウガが二人に向かって突っ込んでいく。得物はないが全身に闘気を纏って、素手で突っ込んでいく。少女達は広く間合いを取って避ける。

 トウガは一人に狙いを絞って狩りに行く。狙われたのは、ドミナスと呼ばれる長髪三つ編みの少女。トウガは一直線にドミナスに殴り掛かる。ドミナスは長剣を正眼に構えて迎え撃つ。

 トウガは拳を握り込み、ドミナスの剣を破壊しようと剣を殴りつける。金属音が鳴り響き、火花を散らし合う。トウガの拳と殴り合っても刃こぼれしない剣もすごいが、それを操る彼女の技量もすごい。ほぼ懐に入られているのに、技量で捌いて有効打を与えない様にしている。

 だがそれでも、何発か入っている。有効打にはならないにしても、ダメージは蓄積していっている。立てなくなるのは時間の問題だ。

 だが、トウガの体に二本の小剣が突き立てられる。


「うぉ?」


 間の抜けた声を上げながら、少し驚くトウガ。本来なら突き刺さるであろう小剣は肌を傷つけることなく、服を切り裂く事もなく止まる。だが、小剣で攻撃した少女――、デザルナはそれで止まることなく、トウガを縦横無尽に斬り付ける。


「あー、痛い」


 トウガは、たいして痛そうにもせず、防ぐこともなく、ただただ、斬られている。トウガの標的は変わることは無い。

 デザルナには見向きもせずにドミナスに襲い掛かり、殴りつけ続ける。無視されているデザルナと、狙いを付けられたドミナスは、それぞれ魔法を発動させる。ドミナスは水、デザルナは風を、それぞれの剣に纏わせる。

 ドミナスは水が渦潮のように回転し、トウガが攻撃を加えるたびにその激流に飲まれ肌が少しずつ傷つく。ドミナスが少しだけ顔を綻ばせる。デザルナは背後からトウガを斬り付け続ける。だが、ブラックホーンのレザーコートを傷つけるには及ばない。が、打撃としては機能している。一応、ダメージは与えられている様だった。


「よっと!」

「ひゃ!」


 トウガは流石に鬱陶しくなり、デザルナの手首を掴む。そのまま場外に投げ飛ばす。

 が、風魔法を上手く使って場外落ちを免れる。真正面でドミナスと戦闘しているトウガを睨むが、腹部に衝撃を感じ、目の前が暗くなってゆく。

 デザルナの足元には、リングの下から鉱石の円柱が飛び出して腹を殴りつけていた。

 デザルナに気を配っていたとしても、ドミナスへの警戒は怠ってない。仕切り直しという様に、トウガはドミナスから距離を取って構えなおす。

 距離を取ったら、ドミナスの方が切り掛かる。足裏から水流を放出して、突進してくる。一直線にしか進めないが、その速度はさっきのムーより早い。流石にトウガは驚き、集中を乱す。受けそびれて、ドミナスの剣を直撃させてしまう。


「ぐぅお!」

「やった! 届いた!」


 トウガに攻撃を直撃させたことを、素直に喜ぶドミナス。

 が、トウガは魔法を纏わせた剣を掴み、精一杯握りしめる。少し剣にヒビが入る。トウガは凶暴な笑みを浮かべ、ドミナスの鳩尾に拳を一発入れる。その衝撃だけで、ドミナスが場外まで吹き飛ぶ。

 トウガが片腕を上に掲げると、


「第二回戦、勝者はトウガ!」


 アルデモから、トウガの勝利宣言がされた。


*  *  *


「お疲れぇ~」

「お疲れじゃねぇよ。にしても、なかなかやるな、あいつ等」


 そんな事を言いながら、倒れて運ばれているドミナスとデザルナをニヤッと笑いながら見ている。


「あ~あ、災難だな、あいつら」


 呆れたような声を出して、笑いながらジンが立ち上がる。


「頑張れよ」


 トウガはもう勝敗は分かっているのか、あんまり興味の無いように試合が行われるリングを見る。そこにはリングに飛び乗ったジンと、ジンの対戦相手としてリングに上ってきた二人の女性。片方は昨日の気の強そうな美人さんと、もう片方も系統的に同じような美人さんだった。得物はそれぞれ大剣と弓。レベルはそれぞれが120台後半。油断できる相手ではないことが分かる。


「さぁ、最終戦!対戦者はデリブラとデミスのコンビ対リョウ!」


 最終戦のカードが発表された。泣いても笑ってもこの対戦で決着が着く、両者には自然と気合が入ってくる。

 少し距離を取り、お互いにしっかりと構える。それをアルデモが見届け、片手を上げる。


「それでは、最終戦!用意――、」


 アルデモの気合の入った声が、周りに響く。


「開始!」


 アルデモの手が振り下ろされ、最終戦が始められた。


*  *  *


 大剣を手にしたデリブラが一気に距離を詰め、大振りにジンに向かって振り抜く。


「何!」


 デリブラの剣はジンに届くことは無く、ジンの刀に受け止められる。一撃で終わらせるつもりだったのだろう、それが失敗に終わり顔に困惑が浮かぶ。

 それでも止まることが無かったのは流石か、連撃を続ける。だが、ジンも負けてはない、刀で捌き攻撃を受け流し続ける。すると突然、横から魔力で作られた矢が何本もジンを貫こうと迫る。が、これもジンが撃ち落とす。

 矢を撃ったデミスは苦々しく顔を歪めながらも、矢を撃ち続ける。ジンはその矢を軽やかに避けていく、一応避けられないのは何本か撃ち落とすが、それでも一本も当たることなく避け続ける。


「あぁーーー!」


 矢の連射の間を、縫う様に進んできて大剣を構えジンの方へ突き進む。デミスはそれをサポートするように矢を放ってジンを追い詰めていく。そうしてタイミングを合わせてジンを横薙ぎに振り抜く。


「もう一回!」


 ジンは横薙ぎを上に飛んで避ける。

 仕方がないので、デザルナが合図してもう一回、デミスに援護を頼む。デミスもそれに応え、さっきの数倍の連射でジンを狙う。その密度も半端ではないうえに、何本も、曲がったり、分裂したり、発光したり、と変わり種の矢も交じっている。が対処は変わらない、何本か避けにくい物だけ切り落としながら、その他の矢はほぼ避けていく。

が、避けたはずのものは、ホーミングしてジンに迫る。仕方がないので、ジンは全部斬り付けて、撃ち落とす。

撃ち落とし続けていると、ジンの背後からデリブラが気配を消して切り掛かる。振りかぶっているのはただの剣ではない。闘気でコーティングされた剛剣だ。斬られたら怪我では済まないだろう。

 タイミングはバッチリ。ジンが避けられるはずがない、殺すつもりはないが闘気術の上から直撃させて戦闘不能だ。そう思って全力で振り抜く。


ボフンッ!


 煙と共にジンの姿が消える。


「なっ!」


 驚きの声を出すがそれで動きが止まることは無い、油断なく周辺を警戒する。するとーー、


「デミス! 後ろ!」


 そう言い終えた時にはもう遅い。ジンが後ろにいて、上から振りかぶって斬り付ける。闘気を纏わせているものの、首元を峰打ちで打つ。デミスは目の前が白くなっていく、だが最後の力で上空に矢を何十発と放つ。それを最後にデミスは気を失ってしまった。


 デミスが放った矢は、上空で爆散し降り注いでくる。敵も味方も関係なく矢が降り注いでくるので、ジンもデリブラも、回避に専念する。デミスの事をほおってはおけないので、矢が降り注いでくるギリギリを狙ってデミスの事を蹴り飛ばし、当たらない範囲に追い出す。

 デリブラは大剣から土魔法を発動させ、台風のように砂嵐を自分の周りに発動させることで降り注ぐ矢を防ぎきる。ジンの方も風魔法で同じように身を守る。

 だが、身を守ってその場でとどまるデリブラと違って、ジンはデリブラへ剣を構えて突っ込んでくる。デリブラは砂嵐で身を守っているため、視界が通らない。だが、気配は感じているのかジンの突撃に反応して、石礫が形成されてジンに向かって放たれる。

 それをジンの刀が石を切って叩き落す。接近は難しい。

 なので、こっちも遠距離にすることにする。アサルトライフルを、照準付けて連射し始める。だが、一丁だけではデリブラの防御を崩すことは出来ない。

 だから何十丁も銃を呼び出して、背中からの手で構えて撃ち始める。デリブラの砂嵐の防御が崩れ始める。銃弾を何千発と喰らわせているのだ、そう簡単に立て直せない。

 デリブラは奥の手を使うことを決める。

 丁度良く矢の雨も止み、土壁を作って銃弾の防ぎ方を変える。土壁を連続で作り続けながら、同時に体内で大技の魔法を発動させるための魔力を練る。

 ジンも膨大な魔力が練られ収束されていくのを感じ、自分の両手での銃撃をやめる。背中からの銃撃はそのまま継続しつつも。銃から刀に持ち替え、魔力を浸透させてデリブラと同じように練り込んでいく。

 デリブラの大剣にも、ジンの刀にも、あり得ない程の魔力が収束していく、周りの空気が軋み始め。空気が揺れて、影響が出始める。

 やがて、溜まりきり。両者が同時に魔法を発動させる。

 デリブラは大剣から、土壁を巻き込みながら、何千、何万という大剣が生成されて放出される。直線的に飛んできたり、回転しながら迫ってきたりしている。ミキサーのようにジンを防御ごと削りきろうとする。

 ジンの方からは、刀から収束された竜巻が放出される。こっちもミキサーのように回転しながら、大剣を破壊し突き進んでいく。

 両者の勢いがぶつかり合って拮抗する。だが、そんな拮抗も長くは続かない。ジンの竜巻はデリラブの大剣を砕きなりながら、それを飲み込み大型の竜巻を砂嵐に変え攻撃力をさらに上げて、直線状にリングを削り続けてデリブラを飲み込もうと迫ってくる。


「このぉ!」


 デリブラは自分の全魔力を込めて魔法の威力を倍加させて放つが、ジンにはもう通じない。生み出された大剣を全て破壊し飲み込み、デリブラすらも飲み込もうと竜巻は迫る。


「え?」


 すぐ近くまで迫っていた竜巻が消え、デリブラが呆けた声を出す。

 が、その間にジンが接近を済ませ、拳を握りしめ、デリブラの鳩尾を全力で殴り付けそのまま場外まで吹き飛ばす。


「か、はぁ!」


 そのままデリブラは気を失い、場外に飛んでいく。

 ジンはそれを見下ろし、堂々とした態度で仁王立ちする。それを見届けアルデモが勝敗を告げる。


「勝者、リョウ! 今回の決闘、勝者はリョウが率いる挑戦者たち!」

『『『『『うぉぉぉぉ!』』』』』


 驚きはあるものの、全員が歓声を上げて、勝者たちであるリョウたちを祝福する。魔族の精鋭たちは、悔しそうに顔を俯かせてしまう。

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