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勇者の守護者〜誰かのために出来る事〜  作者: Dr.醤油煎餅
第二章 守護者達の旅行記
28/151

22話:禁足地までの道中

 ルーカスを出て一か月は経った頃。

 ジン達一行は、


「あ~、だりぃ~」

「まだなのかぁ~、つかねぇ~よ~」

「ひぃ~まぁ~だ~」


 何人かだれていた。

 何日も、同じような光景の中で、たまに出てくる魔物なり盗賊を一撃で退治しながら、道中を進んでいく。流石に同じような状況が続き、暇になってきている。


「お!ようやく見えた。あれが皇国の最東端の都市だ。あそこから、二キロ先が禁足地になってるし、二キロ間も油断できない環境になってる。準備は整えて挑んでいくぞ」

「は~い」


 ジンの号令に、馬車に乗る全員が返事を返す。


*  *  *


 この街にも、冒険者ギルドがあるが全員何もせずに、そのまま自分たちの用事を済ませる。

 全員装備品の準備を済ませ。一旦、集まり、買い出しの役割を決める。

 食料班はジン、アスタルテ、メリア、キイ、リノア、ナタリー。キャンプ用品班はライズ、その嫁ミリア、アミア、ガルス、その嫁リルの二班に班を分け、目的の買い出しを済ませに行く。ちなみに竜王へのお土産は事前準備済み。

 食料買い出し班は、アスタルテに目利きさせ、メリアとナタリーを近くに立たせ値切りの交渉、ジンが荷物持ちで進め、残りの二人は売店近くで遊んでいる。買い物の途中、ジンがリノアとキイに質問する。


「なぁ、今思ったんだが、何で全員、皇都に集まってたんだ?それぞれ、他の国に居たりしたんだろ」

「ん~? 正直、運が良かったっていうのがあるかもね。ほぼほぼ、キイちゃんのスキルの力だよ」

「匂いを嗅いで鑑定が出来るんだっけ?」

「普段は情報が入ってき過ぎるから、異世界人に関しての情報以外は入らない様にしている」

「お前も大変なんだな」

「話を戻すけど、獣王国で私とナタリーとキイで組んでて、仕事の都合でこっちに来たらライズガルス、アミア達にあったって感じだね」

「そんなうまくいくのかね」


 何らかの作為的な流れを感じつつもジン達は雑談しながら通りを進み、アスタルテはナタリーとメリアのお色気で交渉を進めていく。まぁ、何とも便利な二人だった。


*  *  *


 一方、キャンプ用品班は、


「あ、ちょっと待って下さい!そっちはもう行きましたから!良いんですよ!ああ、ちょっと、いかないで!」


 アミアが、大変なことになっていた。

 ガルスが自由に動き回りすぎて、それを止めるアミアが大変に苦労していた。だが、その中でもライズ、ミリア、リルの三人は目的の物を買いだしていく。

 アミアとガルスが路上で、目立つように立ちまわっている。()()()()()()()にとっては、好都合であった。


「きゃっ!」


 可愛らしい悲鳴を上げて、アミアが袋に入れられ大柄な白いローブを羽織った二人に連れていかれる。ガルス達は予定通りに、街中に散開しアミアを攫った者達を追跡する。


「ガハハハ、待て、待て!」


 ガルスは、アミアを攫った者達を直線で追っていく。道中にある物は、全部破壊しながら突き進む。その表情は随分と、楽しそうである。

 しかし、追跡されている人間も並ではない、アミアを背負っているというのにも関らず、ガルスと同等の速度で走り続ける。だが、ガルスは相手がどんな経路を通ろうとも、直線で障害物をブッ壊しながら突き進む。追いつかれるのは時間の問題だった。


「ガハハ、つぅ~かぁ~まぁ~えぇ~たぁ~」


 アミアを連れてった二人組の首根っこを掴む。その顔は満面の笑みを浮かべている。見る者が見れば狂気に満ちている事だろう。

 だが白装束の二人はいたって冷静に対処した。自身の足に仕込んでいたナイフを出して、ガルスの手に突き立てる。


「痛っ!」


 ガルスは痛みで手を離してしまい、白装束二人は地に落ち、そのままアミアを落とさずに、駆けだす。


「くそぉ! いったい何だってんだ、あの男は!」

「いいから走れ! あの男以外にも、これの仲間はいたはずだ。勘付かれる前に早く!」


 白装束の二人は悪態をつきながら、路地裏を走り回っている。何故かガルスは追って来ないので、それに乗じて全速力でガルスを巻いて路地裏に身を潜める。

 何故かアミアは身じろぎせずに、大人しく捕まっている。一応猿轡を噛ませて、手足を縛って自由を奪っておくが、どうにも不安がぬぐえない。

 前に、アミアを捕獲しようと動いた時は、彼女の抵抗は激しく死者が出ることは無かったが、それでも重傷者が多く出て逃げられてしまった。なのに今回は、抵抗の素振りはない何かするわけでもなく、ジッとして自分たちの事を冷めた目で見ている。まるで、自分たちがやっていることはすべて無駄だというかのように冷めた瞳である。

 そんな路地裏で休憩中の二人は、再び動き出そうとすると、足が吹き飛ぶ。


「あがぅ!」

「ど、どうした!?」

「お、俺の足ぃ、な、なんだ? どうしたんだ?」


 どうしたではない、いきなり足が無くなったのだ、困惑するのも無理はない。アミアは何か知っているようだが、特に反応することは無い。困惑する白装束の二人を嘲笑する。それに気づいた足は無事な方が、アミアに平手打ちしようと、手を振り上げる。


「この! ぐぅあ!」


 手を上げた瞬間、掌に小さい風穴があく。それを抑えて、白装束は蹲る。


「くそぉ! 一体、何だってんだ! おい、何処だ!どこに居んだ?」


 男達は、怒号を上げながら、周りに誰かいないか索敵し始める。が、何処にもいない、分かるのは攻撃が飛んできたであろう方角には民家の壁がある事だ。

すると突然、白装束が増える。その数、五人。その数その姿を見ると、さっきまでアミアを連れていた男達は少し微笑んだ気がする。


「は、は、はっ!俺とこいつはもうだめだ、さっさと処分して、あれを連れてけ」

「ご苦労」


 新しく来た白装束は手早く、怪我した白装束に火を放って処分した。そうして踵を返し、アミアを抱えようと近づくが、そのままアミアの前に倒れ込んでしまう。その頭には小さい穴が開いていて、他に傷はない。

 他の白装束も近づこうとするが、一人を残していきなり全員倒れる。倒れた奴らにも頭に小さい穴が開いている。

 残された一人は、強く困惑している。そして、そのまま仲間の死体を残して、都市の外へ出ていった。


*  *  *


 白装束は都市の近くの雑木林に身を潜めている。路地裏で仲間を殺された後は特に襲撃されることなく、ここまでたどり着いた。そして木に手をつきながら、息を荒く吐く。頭の中は困惑に満たされている。


(な、何なんだ。何が起こったんだ?敵の影も形も見えなかった。ガルスという冒険者の仕業か? だが、あいつの戦い方は、防御からのカウンターが得意だと聞いている。死角からの不意打ちといえば、あれの近くにいた『銀声』が得意とする戦い方。だが、あそこには射線が通るような空間はなかったはずだ)


 考えれば、考える程、分からなくなってくる。弓や魔法なら壁を通ったとしたら必ず大きな破壊の跡があったりするはずだ。何の痕跡もなくて、大きな音も聞こえない、一体どんな方法で自分たちの事を狙ったのか。

 あの小娘を、今、狙うのは明らかにリスクが高い。せめて、国にそのことを伝えようと、自分の国の方角へ体を向ける。がーー、


「あ………?」


 体を向けた方向にあった光景に目を疑う。さっきまで殺されていた仲間の遺体が立ち並んでいたのだから。死体が立たされているというような感じではない、立ち姿はしっかりと二本の足が自力で立っている。顔つきは虚ろだが、少しだけ生気を感じる。白装束は腰から短剣を抜いて構える。油断なく仲間だったと思われる存在に刃を向ける。


「別にそんな驚くなよ、諜報員だろ。セイムント聖王国の諜報員さん」


 まだ幼い声色の少年の声が響く。その声に白装束の男――、セイムント聖王国の諜報員は体を震わせる。その後、顔を顰めながら周囲を索敵して声の主を探るが、自分の正面に一瞬で現れて驚愕する。

 目の前にいた存在の代わりに、黒い服装の少年が現れていた。目の前の少年のような何かからは、あり得ないほどの威圧感や、圧迫感を感じ、少なくともカタギの少年ではないことが伺える。その隣には、メイド服を着ている少女が佇んでいる。


「どこで、分かった?」

「………お前らが生まれた時からか?」


 ぼかしているような、本気なような、怪しい回答だった。小首を傾げ、自分でも不思議がっているような雰囲気で、何を答えるのが正解なのかは、分かっていない不思議な回答。

 黒衣の少年――、ジンは、片手を上げて諜報員の男に向ける。その手のひらには、小さな光の玉が出てきていた。諜報員はその小さな光球に引き込まれるように見入ってしまう。瞬間、その光球が消える。


「ぐぅあ!」


 消えた瞬間、諜報員の手首から先が消える。その傷からは血が出ることは無かった、攻撃と同時に止血もされている。

 ジンはそのまま近づき相手の股間に蹴りを喰らわせる。股間が潰れ、白い服に血が滲み、それが広がっていく。諜報員はそのまま地に体を伏せる。ジンは次に、相手の片足に自分の片足を乗せ、力をかけて一撃で押しつぶす。そのまま片腕を手に取って力を込めて握りつぶす。


「は? あ? な、なんだ?」


 諜報員の顔には困惑が浮かんでいる。彼のレベルは、50もある。諜報員として生きてきたなら、十分に一流といえるようなレベルだろう。それに見合うだけの防御力はもっていた。少なくても目の前の少年の年齢での平均的なレベルで言えば、握りつぶされるような、柔な体ではない。だが、少年は何の苦もなく握りつぶしている。その表情には特に揺らぎは感じられない。淡々と、作業するように諜報員の体を拷問し始める。

 数分すれば、見るのも躊躇うような姿になって諜報員が転がっていた。

 ジンはそんな諜報員の髪を掴んで持ち上げる。そして何処からか小綺麗な便箋と封筒を取り出す。ジンが手に力を籠めると、その便箋には焼印の様な文字が刻まれていき、それを諜報員の胸元に入れる。


「それをお前のご主人に届けろ。届けたら死ね」


 そう言って、ジンが手を離し、何かを首にかけると、代わりにアスタルテがその両頬に手を添える。瞬間、諜報員が顔に苦悶の表情を浮かべ苦しそうにのたうち回る。十秒立てば、生気が抜けた人形のようになっていた。

 諜報員は立ち上がって、おぼつかない足取りで何処かを目指すように歩いていく。それを見送る者は何処にもいなかった。


*  *  *


 ジン達が止まっているニホン商会の宿屋にて、ジンとアミアそして何故かいるアスタルテの三人で、今日の出来事について話していた。位置関係としては、ジンとアミアで互いにソファに座って、ジンの斜め後ろにアスタルテがいる構図である。


「災難だったな」


 ジンは平然とした声で、アミアをいたわる。


「あはは、特にこれは、今に始まった事ではないので。別にいいんですよ」

「そうもいかない。だから、後始末までしたんだ」


 頬を掻きながら、さらに何か告げようとするアミアを、片手で制し黙らせる。


「別に、お前の為だけじゃない。ああいう奴らに後を追われると、俺も迷惑なんでね」

「………ふふ、そういう事にしておきますね」

「そういう事も何も、そうとしか言ってないんだけど」


 意味ありげに微笑むアミアと、呆れたように溜息をつくジン。


「で、今後はやはり禁足地へ行くつもりなんですか?」

「当たり前だ。あの立地なら俺の理想に一番合うし、お前たちの安全も高まる。逃げ場にもなるし、大規模な拠点を作るなら十分な立地だ」

「ははは、怖い物とかないのかねぇ、この人は」


 もう、怖いもの知らずの自分の上司を苦笑いする。

 ジンの行動が命知らずなのは誰もが思う事だろう。過去に何度も禁足地に色んな国が軍を派遣し、竜王の怒りで派遣された軍隊は全滅させられた。

 竜王という存在はこの世界で最強の印の一つと考えられている。この世界で生きる生物の中で純粋に能力が一番強い。全ステータスも保有する固有能力も、優秀なのばかりだからである。その中でも王ともいえる竜が竜王である。その力は人の手で対抗できるものではない事は明らかであろう。


「言っただろ、別に考えなしな訳じゃないって」

「考えがある人が、十人しかお供を連れないで、禁足地を目指すわけないじゃないですか。明日には自分たちが死んでいるんじゃないかと思うと、不安でしょうがないですよ」


 わざとらしく自分の体を抱えて、その体をくねらせる。呆れたような目を向けジンが口を開く


「今にも死を怖がるような奴が、こんな呆れた集団にいる筈もないだろう」

「何か考えがあるとでもいうんですか?」

「考えという訳じゃないけど、今までの遠征軍の情報を見てきた。で、それを解析してどうすればいいのかを考えてきた」

「というと、例えば?」

「………遠征軍たちの目的は、禁足地にある資源の略奪だ。だから、環境破壊とかは考えずにその場にあるものすべてを奪い去っていった。それはもう、色んなものをな。小動物、森林、先住民族、そして幼い竜、とかな。上手く竜王と共生していた先住民族の怒りにも触れて、囲われて遠征軍は全滅させられた。ま、大筋はこんなモンか?」

「………吐き気がしますね」

「人間の汚い所だからな」

「………」


 アミアとアスタルテの深い溜息が室内に響く。


「で、俺の考えというのが、友好関係を結ぼうという案だ」

「上手く、中に取り入って禁足地の中を使わせてもらおうって訳ですか」

「その通り。上手くいったら、竜王たちにちょっかい掛けるようなバカも少なくなるだろ」


 お互いに良い事尽くめだと言ってる様だが、割とジンの方に利益が偏っている。そこには、アスタルテもアミアも気付いていたが、特に何か言う事もなかった。

 その日は、全員で就寝し、明日に備える事にした。


*  *  *


 日課を済ませてジン達は朝のうちに、禁足地の中に向かう事にした。

 その前に、都市の門で奇妙な噂を聞いた。

 朝、禁足地側の門から都市を出ようとしたとき、都市の門番に声を掛けられて。


「よぉ、坊主たち。お前ら、今から禁足地に行くのか?」

「何だ?別に行くのは勝手だろ」

「ああ、別に止めるために声をかけたわけじゃない。ただな、行くなら確認してきてもらいたいことがあるんだ」

「何だ、それ?」

「ああ、二週間ほど前からか、禁足地と此処までの間で仕事をしている冒険者たちが何かに襲われて身ぐるみはがされてから、逃げ帰ってきたりしてるんだよ。で、その大半が起こった出来事について口をつぐんでいる。だけど、そんな事が起こっているというからには、ここの代官様も無視はできないからな。あっちに向かう人間には何か情報があれば、戻ってきたときに聞くように無差別に依頼しているってわけ」

「ふ~ん、まぁ、知れたら答えるよ」

「ああ、じゃあ、それでいいよ。引き留めて悪かったな行っても良いぞ」


 そう言って門番は進んでいくジン達に手を振って見送る。


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