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勇者の守護者〜誰かのために出来る事〜  作者: Dr.醤油煎餅
第二章 守護者達の旅行記
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20話:皇都ガーロンド

 あの後は、アスタルテに隠れて、ひたすらメリアに弄られた。

 別に弄られても、特に気にすることは無い。それぐらいの覚悟は持っていることが、アスタルテに伝われば、それでいい。

 ひたすら弄られるのが辛かったが、メリアを食べ物で吊って黙らせた。


 その後はアスタルテを抱えて宿に戻る。宿の娘に少しだけアスタルテの事を心配されたが、気にしないで、と伝えてアスタルテを部屋に置いてから、二人だけでカウンターに座って夕食を取る。

 今日は鳥の蒸し焼きだった。味付けにはこだわっているのか、しっかりと味が染み込んでいる。それを無言で二人して食べる。和やかな時間が静かに過ぎていく。が、ジンとメリアの目立つ二人が、平穏に食事できるわけもなく、後ろにいた冒険者に絡まれる。


「よう、兄ちゃん。俺たちを、無視して食事とはいい度胸じゃねぇか」

「おい、姉ちゃんも。そんなしけたガキはほっといて、俺達と上でしっぽりやろうぜ。優しくするぞ」


 そんな事言われたが、全部無視して食事を続ける。冒険者達は不機嫌そうな顔になるが、その前に宿の娘に止められる。


「ちょっと、リョウ君たちは、まだ新人なんだから。そんなにいじめないの」

「いやいや、ミリノちゃん。これは先輩としての、指導だ。いじめじゃないぜ」


 冒険者達は白々しく答える。ジン達は全部無視して、食事を続ける。その態度も気に食わないのか、不機嫌そうに顔を顰めて、ズカズカと近づく。


「おい、小僧も姉ちゃんも、先輩にあんま舐めた態度取るもんじゃないぞ」

「村かなんかで、一番とかだったのかもしれねぇが。上には上がいるんだぞ、今ここで教えてやろうか?」


 高圧的にジン達に突っかかる。そのまま、肩に手を回して顔を近づける。口の中から酒臭い息がかかり、ジン達の方も顔を顰める。メリアは不躾に体を触られていて、それにも顔を顰める。


「くせぇ、顔を近づけんな」

「あ?舐めてんのか」


 冒険者は不愉快そうにしながら、少しだけジン達から距離を取る。


「先輩舐めてると痛い目見るぞ。謝るなら今の内だ」

「………」


 淡々とした言葉でジン達に脅しをかける。別にジン達に動揺している様子はない。が、少しだけ嘲笑を浮べている。冒険者たちの顔に青筋が浮かぶ。体を震わせ拳を握って、ジンに殴り掛かる。


「きゃっ!」


 ミリノはそれに驚いて声を上げ、目を瞑る。

 ジンはミリノに視認されてない事を確認して、相手の拳に自分の拳を合わせて打ち込む。すると冒険者の拳が砕け、壁まで吹き飛ぶ。


「がっはぁ!」

「え?」


 ミリノは予想と違う光景に目を疑う。他の冒険者もミリノと同じように自分達の目を疑う。

 ジンは力を調整して、冒険者を吹き飛ばしたので物が散乱した様子はない。ジンは拳を納めて口を開く。


「別に、あんたらから学ぶことは無い。指導したいなら、これ以上になってみろ」


 そう言ってジンは懐から、自分の冒険者カードを出す。するとジン達に絡んでいた冒険者たちの顔が強張る。ジンの冒険者カードは赤橙色をして、磨かれように輝いている。

 だが、さっきまで見下していた相手に下に出るのは、プライドが許せないのか、全員が一斉に殴り掛かる。

 ジンはミリノの目を片手で防いで、メリアにもう片方の手で指示を出す。メリアはそれに従って、手を振って指先から魔力から糸を出して、全員を拘束する。

 冒険者は悔しそうな顔を浮べるが、全員身動き一つとれない。ジンはミリノを裏へ押し込め、念動で絡んできた冒険者全員、外へ締め出す。

 そのまま食事を腹に流し込んで、自分たちの部屋へ戻る。


*  *  *


 そのまま朝になって、今日こそはルーカスから出発となった。一応お世話になった人達にちゃんと挨拶をしておく。まぁ、関わった人達が少ないので、朝のうちに出発することになった。

 ニホン商会の所に挨拶したら、皇都のガロリド皇国本部の方へ、手紙を届けてきてくれる様に頼まれた。

 冒険者ギルドでは、お礼参りだ、と何人か突っかかってきたが全員返り討ちにして黙らせ、アニーに世話になったとだけ伝えて冒険者ギルドはそのまま出ていった。アイルダには何も言わなかったが、まぁ大丈夫だろうと軽く考える。

 一応通すべき筋は、通したと思うので、ムーを繋げた馬車で都市の入り口を出ていく。昨日のうちに都市の門兵とは、話を付けていたので特に問題なく都市を出ていく。ルーカスから出たらムーの姿を馬に変える。


「で、ここの文は、さっきの文の補助的な意味を持っていて。魔法の威力を強化するのには、魔力の量と、それを外界でも顕現できる明確なイメージが必要なの。で、その例が書かれている。ま、必要はあんまりないんだけど参考程度にって感じ」

「なるほど」


 皇都に行くまではジンとアスタルテで御者台に座って一時間ごとに交代で操作している。メリアは御者台に座らない代わりに、ジンとアスタルテに古代の魔法を教えてあげている。

 そんなのんびりとした旅路が一週間ぐらい続いてく。

 そうして、やっと外壁で囲われた、皇都の都市が見える。その中心には前に会ったことのある、サテラという王族の少女も住んでいる城が見えている。遠目から見るだけで、荘厳華美という訳ではないが洗練されたデザインで建てられているのが分かる。非常時には要塞にもなるのだろう、実用的な造りだった。


「着いた~」


 そんなのんびりとした声を上げながら、大きく伸びをして体をほぐすジン。


「何があるか、楽しみだね」

「はい、いろいろ買いたい物もありますし。お風呂にも入りたいです」


 皇都で何をしようかという話に、花を咲かせるメリアとアスタルテ。ジンはその間に、マップで変なものがないか検索して確認する。問題のあるモノが引っ掛かり、顔が引き攣る。

 普通なら馬車で三週間はかかる距離を、わずか一週間で踏破して見せたのだから。竜というだけあって、健脚ぶりがうかがえる。

 今日はアメリダからの依頼とニホン商会の届け物だけ済ませて、明日には獣王国に向かうつもりだったが。遠目からうかがうだけでも、居心地のよさそうな都市の造りに、何日か続けて滞在してしまいそうだなと感じる。

 一先ず宿を取ろうと外壁の門をくぐろうとすると、


「止まれ」


 検閲のためか止められた。

 御者台に、黒髪で冒険者のような服装の少年、御者台の背もたれから顔を出すのは白衣を着た爆乳美人にメイド服を着た美少女。ムーの姿は馬になっているからそこら辺は問題ないだろう。


「貴様らは何者だ、ここへ何しに来た?」


 門兵さんは上から目線で質問してくる。

 ジンは慌てることなく余裕を持って御者台を下りて門兵に近づく。


「申し訳ございません。私たちは冒険者で届け物の仕事を仕事を受けてきました」


 そう言って、ジンは懐から自分の冒険者カードと公爵家のメダルを出して見せる。


「ひぃぃぃ、こ、公爵家の、関係者でしたか。ど、どうぞ、お通り下さい!」


 機敏な行動でジン達に道を譲る。

 公爵家は国の中枢に最も近い家だ。その関係者に、無礼な態度を取れば、首が飛ぶ可能性もある。

 ジンは悪いことしたと思いつつも、ありがたく御者台に戻ってそのまま進む。恐らく、城に今回の事が伝わるだろうが、公爵家のメダルも見せた事からそっちにも確認を取らないといけない。

 少なくとも三日から一週間はかかるだろう、すぐに出ていけば何かに呼び止められることは少ないだろう。自分たちの用事もすぐ済む為、さほど問題にもならない、そう考えを切り替え宿へ向かう。

 宿に着くと色々驚かれたが、馬車だけ止めさせてくれればいいと伝えて。馬車を置いて、ムーをメリアが抱え、まずはアメリダの依頼を済ませることにする。


 送り先は皇都の冒険者ギルドのギルド長。送る物は手紙とお酒。割らない様にと念を押された。

 皇都の冒険者ギルドに着いた、面倒そうな人物が中に大量にいる、中には避けて、通れない人物たちもいた。が、幸運なことに、一塊になってくれている。ギルド長との話が終わってもいたら、声を掛けに行くことを決める。


 が、そんな希望は虚しく消える。

 ギルドの中に入ると、そのまま玄関ドアへジンに向かって突撃してくる人物が来た。ジンはその勢いに押されて、向かいの建物の中まで吹き飛んでいく。そうしてようやく吹き飛ばした犯人を観察する。

 犯人は、獣人の少女で。頭にあるケモ耳と、腰のあたりから生えているフサフサした尻尾から、狼族だという事は分かる。そうして何を気に入ったのか、初対面だというのに犬のように、ジンの顔をぺろぺろ舐めている。


「お、お客様。そういったことは、宿の個室なんかでしてください!」


 店の奥から来ていた定員はジン達が逢引きにしに来たとでも思ったのか声をかけてきた。ジンはここは速攻で弁償代を置いて出て行くのが吉だと考えた。


「ああ、すみません。今ちょっと、戻るんで気にしないで下さい。はい、これ。弁償代です。この人の部分も払うので、ここは納めて下さい」


 懐から、二十枚位の銀貨が入った小袋を出して投げ渡す。ジンは素早く獣人の少女を抱えてギルドの建物に戻った。

 ギルドに戻ると五人の人間にそのままギルド内の食事スペースに連れていかれる。入口近くで、立っていたメリアとアスタルテの二人はその集団に付いて行き、同じ机に椅子を持ってきて席に着く。周りの人物たちはそれを当然のように受け入れる。で、席に着いて、ジンが一言。


「何すんだ、コラ」


 ジンは呆れたような声で、席に着いていた全員を見渡す。席に着いている全員、何となくバツの悪そうな顔をしている。それに溜息をついて、周りが騒がしいのでそれに耳を傾けてみる。


「おい、あの小僧の周りの奴ら、二級や、一級の中でも二つ名がある奴等じゃね?」

「マジだ、『牙姫(がき)』に『毒婦』、『豪壁』、『銀声』。皇国や獣王国でも有名な奴らじゃん」

「よく見てみれば、他も二つ名持ちじゃん」

「え?例えば?」

「ええっと、左の二人が『癒しの羽』と『砂塊の主』だったかな? まだ、名前が付いたばかりだが実力者なのは確かだ」

「じゃあ、あの小僧も強いのか?」

「わかんねぇ。けど、実力者なのは確かだ」


 ジンは周りの人間のヒソヒソ声を聴いて、少しだけ情報を収集していく。あんまりためになるような事は聞こえてこないが、少ないながらも周りの奴らの情報が分かってきた。どうやら冒険者として有名らしい。


「えへへ。隊長が近くに来たんですから、つい。やっぱり早く会いたいと思ってたんッス!」

「何時来たんです?」

「というか、生き返ってんだな。流石はビックリ人間」


 周りの奴等は、全員、元自分の部下だった奴等だと分かっていても、流石に自分よりも体格が大きい、知らない奴らに囲われたら警戒はする。ジンは取りあえず、失礼なことを言ったやつの顔面に拳を叩き込み、話し始める。


「お前らが元第四なのは疑いはしないが、少しは色々隠す努力をしろ」

「は~い」

「と言うか、何で俺が来たって分かったんだ?」

「ハイハイ! 私! 私が感知しました!」

「もうちょい、小声で喋ってくれ」


 ジンの叱責は全く響いていないようで、全員が軽く受け流す。今はジンが風魔法で防音壁を張ってるから大丈夫だが不用心すぎる。

 ジンは溜息をついてから、言葉を続ける。


「先ずは、自己紹介からか。俺から行くぞ。知ってるだろうけど、前世は東郷(とうごう)(りょう)。今世の名前はジンだが、訳あって今はリョウで通してるから、そっちで呼んでくれ。くれぐれも隊長って呼ぶなよ」


 ジンのお手本のような自己紹介が終わると、今度は紺色の毛色の狼獣人の少女が手を上げて話し始める。


「はい!次は自分ッス。前世は犬塚(いぬづか)恵美(えみ)で、今の名前はキイって言うッス!自分には特に事情は無いので好きに呼んで欲しいッス!どうもよろしくお願いするッス!」


 ニパッと効果音が付くような笑みを浮かべて自己紹介するキイ。今度はアスタルテが手を上げて、自己紹介を始める。


「次は私で。前世は羽山(はやま)礼子(れいこ)、今はアスタルテ=レンブラントです。好きに読んでください」


 アスタルテの淡泊な短い自己紹介が終わる。アスタルテの次はメリアが手を上げる。


「んじゃ、次私ね。前世は木原(きはら)結子(ゆいこ)で今世はメリア。自慢のスリーサイズが、上から100、58、98、です。隊長以外とは、夜はよろしくしないんで、そこのとこはお願いね」


 メリアは自分の自慢の胸を、寄せ上げてそれを自慢しながら自己紹介する。すると向かいのブロンドヘアの爆乳美人が胸を寄せて対抗するように自己紹介を始める。


「ふむ。………前世は桐野(きりの)(あや)、今世はナタリーって呼ばれてる。スリーサイズは、上から80、54、79。私も夜は同じ感じで、今後はよろしくね」


 ジンの反応に困るような言葉を続けて紹介され、頭を抱える。けど他の人間はソレを無視して自己紹介を続ける。今度はまだ若いが渋い雰囲気がある男性だった。


「ええと、俺の前世は飯島(いいじま)春隆(はるたか)、今世はライズっていう名前。一応、既婚者だから。そういうの、俺はなしで」


 常識を感じる自己紹介に安堵を感じるのは流石にまずいのだろう。目線で他の人間に続きを促す。今度は身長がアスタルテと同じくらいの赤茶色の髪を持つ少女が自己紹介を始める。


「じゃあ、次は私ね。前世は護城(ごじょう)(かおる)。今世はリノアって名前。もう成長はしないだろうけどよろしく」


 話の流れが、少し戻る。頭がいたくなるがまだ自己紹介は終わっていない、続きの人もちゃんと聞く。今度は黒茶髪の地味目な少女が始める。


「ええっと、私の前世は水島(みずしま)(さく)です。今世はの名前はアミアです。ええっと、そういうのは、まだできません」


 もう、何にも言わない。向けられる視線は無視して、最後の人物に視線を向ける。最後は茶髪のガテン系のガチムチのおっさん。


「ガハハハ、モテモテだな、隊長!あ、俺は穴塚(あなづか)浩成(こうせい)な。今はガルスだ。俺も既婚者だから、そういうのは勘弁!」


 男性陣二人の奥さんは少しだけ興味が湧くが、(かぶり)を振って頭を切り替える。軽く咳払いしてからジンは本題に入る。


「んで、ここにいるのは一応神様に生き返らせてもらった奴らは、わけなんだけど。あの神様から言われたことは、覚えーー、いや理解できてる?」


 聞いていて、嫌になってくる。こういった説明をする時は、過半数はちゃんと理解が出来ているんだが、その半数はワザと分かんないフリして聞いてくる。全体の少数の方は本当に話の内容を理解できてない。一応、軍の隊長という立場上、こういう説明事は任されていたが本当にこういう所は苦労した。経験から察するに、多分全員がそういう所は治していない。なので、覚える、覚えてない以前に、話をされたその時に理解できているのかは問題である。

 すると、キイが勢いよく手を上げる。


「分からなかったッス!女神さんの話は難しくて、自分には理解できませんでした!やっぱり、隊長の方が分かりやすいッス」

「ガハハハ、俺もわからんかった。何を倒せばいいのだ?」


 分からない組が正直に告げる。潔さはかってやるが、泣きたくなる。これでよく生きてこれたなと、心配になってきた。残りの大半に目を向けると。


「ま、ふざけるところでもないから、正直に言うけど。ちゃんとわかってるよ。けど、どうするのかはいまいちわからない。まだ、居ない勇者を守れるわけがない」

「それについては、俺も同感だな。もっと具体性が欲しい」

「具体性になるかは分からないですが、王城とかには召喚石っていう魔道具があって、伝承ではそこから勇者が出てくるらしいですよ」

「おお、それ知ってる。おとぎ話で有名だよね」

「そうなの?」

「え、知らないの?」

「私は八歳まで、迷宮暮らしだったから」

「ほ~ん、今何歳?」

「八歳」

「え?」


 話が脱線してくる。それをジンは修正しようと口を開く。


「そこら辺は後で話してやる。今は他の事を話そう」

「勇者をどうするか、って事ですね」


 ライズが合いの手を入れ、話をちゃんと誘導する。やっぱり勇者の事はちゃんと聞いておかないといけない。ジンにとっては何か関係があるらしいが、他の奴等には特に関係はない筈だ。無関係な人間を自分の都合で巻き込むのはどうなのか。それを考える。

 そのことは伝わっているのか、いないのか他の皆は話を続ける。


「勇者って、どんな奴なんだ?」

「それは分かりません。どんな人間が来るかは情報が無いのです。というか、他の人達なら知ってるかと思ったんですが、あの女神から何か知らされてないんですか?」

「………」


 他の人たちは、反応は示さなかったが、ジンは少しだけビクッ、とする。それを見逃さなかったのか、アスタルテが見抜き、それを指摘する。


「リョウ様。何か知ってるんですか?」


 全員の視線がジンに集まる。ジンは隠す事でもないので、話を始める。


「あの神様から言われたのは、召喚される勇者は俺との関わりが深いって事だけ。どんな奴が来るかは具体的には知らない。けど、一応心当たりがある」

「妹さん、ですか?」

「美波になんかあったの?」

「その、実は……」

「いや、やっぱいい」


 妹の話は気になるが、今聞くことは無いので、ジンは嘆息して勇者についての話を戻す。


「勇者についての心当たりとしては、第一候補が俺の幼馴染だ」

「隊長の幼馴染って、何年か前に失踪したんだよな。そんな奴が出てくるのか?」

「失踪したからこそ、出てくるんだろ」

「ああ、そうか。で、どうするんだ?」

「俺は何とかしてやりたいが。お前らがどうしたいかは知らん、何をしたいかは勝手に決めろ」

「適当ですね。俺達が別行動するのも自由って事ですか?」

「おう。まぁ、俺についてくるなら、ちゃんとやれるだけの面倒は見るよ」


 ガルスがデリケートな話題に土足で入っていき、ライズが突っ込む。

 ジンにとっては彼らが協力してくれるかどうかは、分からない。協力してくれるならやれるだけの面倒を見るつもりだ。他人の力を借りるのなら、自分も同等位の面倒は見るのがジンと亮の信条だ。


「面倒を見るって、どんな感じなの?」


 ナタリーが、ジンの面倒が何かを聞いてみる。


「そうだなぁ、先ず、金は歩合で払う。装備品は俺が用意できる物の中で最高の物をできるだけ用意しよう。家族や既婚者がいるなら、そいつらへの仕事もやろう。お前らに何かあっても、自立して生活できるぞ。まぁ、今思いつくのはこれ位だが、他にあったら後で伝えるが………」


 一応、現時点でジンが提示できる利益を提示する。その言葉に、全員が目を見開く。それなりにではあるが好条件だ。国であっても、ここまでの好条件で冒険者を雇う事もない。


「そんな条件を、サラっと出せるなんて。隊長って、今も、昔も、何者なの?」

「ある商会の会頭と、二級の冒険者をやってる」

「マジかよ……」


 二級冒険者は、一定以上の役職があるギルド長からの推薦があってこそなれるものである。そういったギルド長は、人を見る観察眼がとても優れている。この場にいる全員が二級、一級の冒険者である。抱からこそシビアな人選でもある理解はある。

 しかし、それよりジンが商会の会頭だったことに驚く。規模が大きければお金や設備の心配をしなくても良い。

 それを知っているからか女性陣は目を輝かせてジンを見る。ジンはその視線を堂々と受け止め、もう一度口を開く。


「で、どうする?」


 机に座る全員に視線を向け、ジンはゆっくりと尋ねる。

 他の奴等は声をそろえて、


「「「「「「「「お世話になります!」」」」」」」」


 全員が一斉に頭を下げた。


*  *  *


 その後、周りで見ていた他の冒険者たちに騒がれていたが。全部無視して、窓口へ向かう。

 元第四部隊のメンバーたちは、アスタルテに宿への案内を頼んで、そのまま宿へ連れて行ってやる。後で話を聞くために、ジンの権力でニホン商会の宿の大部屋に宿泊先を変えてもらうことにする。

 窓口で、用件を伝えれば、直ぐに二階の部屋へと通された。皇都のギルドマスターはガルスと同じくらいの筋肉ムキムキのマッチョだった。しかも高身長なので、ジンは見下ろされる形になる。その威圧感は半端ではない。


「アイルダからの依頼だったな。入れ、小僧」


 そう言って、ギルド長室へジンを入れる。


「俺がここのギルド長のブライトだ。で、早速だがアイルダからの届け物を渡してもらえるか?」

「はい、これです」


 そう言って、ジンは何処からかお酒の瓶と手紙を渡す。


「ほう、ジェノミーノ産のワインか。上物だな。で、手紙の方は」


 そう言って、ブライトはジンを向かいに座らせたまま手紙を読み始める。(ちなみにジェノミーノはガロリド皇国内のワインの名産地の事である)

 ジンは室内の物を見ながら、ブライトが手紙を読み終わるまで暇をつぶす。

 ブライトの執務室は、質素で武骨な造りをしている。アイルダとは違って、特に装飾らしい、装飾はされていない。面子には気を使わない、武人としての在り方が伺える。

 キョロキョロ室内を見まわしていると、ブライトに咳払いされ、視線を前に向ける。


「ああ、リョウといったか。先ずはご苦労。返事に関してはココから別の冒険者を派遣して向かわせる。アイルダからは他に何か言ってたか?」

「特になにもないです」

「そうか。これが依頼達成の証明書な。受付で報酬を貰っておいてくれ」

「はい。では、失礼します」


 そう言ってジンは、一礼をしてから外に出る。


*  *  *


 後に一人残された、ブライトは座ってた椅子にもたれかかり。


「あ~、半端じゃねぇな、あのガキ。気が抜けなかったわ」


 気を抜いて独り言を言う。そのまま、部屋の隅に視線を向ける。するとそこには一人の男が現れている。男の真っ黒な服装は、暗殺者を思わす服装だった。


「なぁ、お前を見つけてたと思うか?」

「奴なら、ここに入った時から俺の事を見つけてたさ」

「な!……本当か?」

「ああ、居ることは分かっていただろうけど、特に指摘もしなかったし。黙ってみてるだけなら害はないと判断したんだろうぜ。事実、部屋を見まわしている時に何度か目が合った」

「うわ、お前を探し出せる奴って事は、何らかのスキルって事か?」

「だろうな、久々のアイルダ嬢のお気に入りだ。ま、あれが皇王様の目に留まることを祈ろう」

「だな」


 その後は、黒衣の男は窓から出て皇都の街並みの中に消えていく。ブライトはそれを見送って、苦手な書類仕事に取り掛かり始める。


*  *  *


 ジンは冒険者ギルドの受付で報酬を貰う。そのままジンが宿の自室に帰ると、そこでもまだやることがあった。


「なぁ、部屋に嵐でも通ったのか?」


 そうとしか言えないような部屋の状態になっている。壁には机や椅子が突き刺さっていたり、カーペットが所々(やぶ)れていたりする。部屋の備品も花瓶や絵画は、見る影もなくボロボロなものになっている。

 すると、部屋の中にいた人物たちはバツが悪そうな顔をして、全員が顔を逸らす。


「おい、正座」

「え?」

「正座」

「はい」


 ジンは全員に正座を要求し、部屋の中の人間は迫力に押され素直に床に全員で正座する。そのままジンからの説教が始まる。そこから一時間は説教を続け、やっとの事で全員解放される。が、正座は続けさせられ、ジンは部屋の掃除と修復をし始める


「で?お前らは、俺に協力してくれるのでいいのか?」

「まぁ、さっきまでに、ある程度は話と意思は合わせて置いたので。まぁ、今世もお世話になります、という事でよろしくお願いします」

「ハイハイ、お世話しますよ」


 ジンは頭を掻いて、全員の意思を合わせたアスタルテの言葉にこたえる。面倒臭そうだったが、その声色はだいぶ優しかった。


「んで、隊長、これから何すんだ?」

「あ~、暫くここに滞在するつもりだったけど、少ししたらこの国から東に向かうつもり」


 ガルスがジンに今後の事を尋ねてみる。ジンは一応アイルダからの依頼達成を報告しに一度ルーカスへ向かわないといけないが、そこからはガロリド皇国の東にある禁足地に向かおうと思っている。

 そのことに気付いたアミアはジンに続けて質問する。


「あの隊長。この国の東って言うと、禁足地なんですが、竜王にでも会いに行く気ですか?」

「………喧嘩を売りに行くわけじゃないけど、会いに行く気はあるよ。見た感じ竜王の巣がある場所は、禁足地のだいぶ中心にある。俺達はこの国の国境に沿う感じで、禁足地を開拓して大型の拠点を作る。まぁ、奴の縄張りがどこまでなのかは知らないし、そこの確認含めて手土産持って挨拶する予定」

「に、人間が考える事じゃない」


 普通の人ならまず考え付かない、頭がイカれているというような方法を取ろうとしている。現状にアミアは付いて行くことを後悔し始める。他の面々も多少驚いたようだが、少し気になった点があり、ナタリーが率先して聞いてみる。


「ねぇ、隊長。竜王の巣が分かった、って聞いたけど。どうやって知ったの?」

「ああ。アスタルテ、お前何処まで話したの?」

「まだ、そこまでは。皆さん、全く話を聞かずに宴会をし始めるんですから」

「だから、こんな荒れてんのか?いや、どんな騒ぎ方したら、こんなになるんだよ!」

「みせましょうか!」

「いいわ、ボケ」


 元気いっぱいに、惨劇を見せようかというキイの言葉を、彼女の頭を殴って止める。話が脱線したのでジンは眉間を抑えて話を元に戻す。


「ええっと、俺が竜王の巣を突き止められた理由か。まぁ、説明も兼ねて全員の能力を見てみるか」

「おお?どうやってなんですか?」

「それは、今からみせるよ」


 手を空中に翳して、壁に張り付ける様に表示を映す。するとそこに全員の表示が表れる。

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