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勇者の守護者〜誰かのために出来る事〜  作者: Dr.醤油煎餅
第二章 守護者達の旅行記
22/151

18話:戦利品を得た後に

 迷宮ボスのアラを倒したことなのか、どうなのかアラのいた部屋を隔離していた見えない壁が消えていて部屋の中に入れるようになっている。


「な、何とかはがせたぁ~」

「大変でしたね」


 気絶したように眠りについたジンがメリアに抱き着いて剥がすのに苦労していた。剥がした後は、アスタルテが背中に背負ってボス部屋内部に入っていた。

 部屋の中にあったアラの死体は、何故かすでに消えていた。その代わりなのか宝箱が現れていた。しかし二人は、宝箱はジンと共に開けようと決めて、ボス部屋で休憩することを決めた。シートや調理器具を出して食事と休憩の準備に入る。アスタルテは準備をして、メリアは壁際に寄ってジンに膝枕をして休ませている。

そして、数十分後。気絶していたジンが目を覚ます。


「……ん? う~ん、う~」


 ジンは小さく伸びをして体を整える。が、今までメリアの膝上で休んでいた事に気付いていたのか、そのままポスン、っと寝て倒れ込み、そのまま休憩を続行する。


「うふふ、甘えん坊さんだぁ」


 メリアはそれを受け入れてジンの頭を軽く撫でる、アスタルテはジン達を見る目が厳しくなるが目線を外し調理に集中する。それから数分すると、完成した料理を持ってやってきた。今回の料理はカルボナーラだった。モチモチのパスタにアスタルテ特製のホワイトソースを絡めている。そこに二センチぐらいに切った厚切りのベーコン、くたくたになるまで煮込んだキャベツを混ぜ込んである。そのキャベツの煮込み汁にコンソメを溶かし込んで、玉ネギを加えて同じように、煮込んだスープ。

 ジンはまだ体が上手く動かないのか、メリアの膝の上で寝っ転がっている。フォークを掴もうにも上手く握れず落としてしまう。


「おう……」

「まだ、本調子じゃなさそうですね。しょうがありません。はい、あーん」


 アスタルテはジンの様子を見て、悪戯っぽい笑みを浮かべ、スープを掬ってそれをジンの口元にあてがってやる。ジンにはそれに逆らう気もなかったので、素直に受け入れて小さな口からクピクピとスープを飲む。それを二人はニヤリと笑って甘やかすように色々な世話を焼く。

 傍から見れば美女と美少女に献身的に奉仕されていて、他の男がこの光景を見ればとても羨ましがるのは間違いないだろう。まぁ、ジンに気にした様子もなく、なすが儘にされている。

 そうして十分に休息を取って、ジンの体も段々と動くようになってきた。ジンが起き上がるとメリアはもっと堪能したいという様に後ろからジンに縋りつく。ジンは別にそれを止めなかった。


「じゃあ、宝箱開けるか」

「少々お待ちを、その前にアレの説明をお願いします」


 宝箱を開けようとするジンを止めて、アスタルテがある所に指をさす。指の先にはだいぶ小型の竜がゆっくりと地に伏せて眠っていた。いまの所は何もする気がなく眠っているようだが、何時動き出して暴れ出すのかは分からない。ここにいるものであれと関係がありそうな人物といえばジンしかいないのだ、なら彼に聞くのは当然である。

 だがジンにも心当たりがない。でも、自分を手助けしてくれたことを考えると別に悪い奴ではない気がする。それに、思い返してみるとジンの中から出てきたような気がするから、少なくとも自分に関係するものなのだろう。と、ここまで考えると心当たりが出てきた。


「精霊、かな?」

「精霊?」


 アスタルテは首を傾げる、彼女は精霊を見たことはないから、精霊かどうかはまだ分からない。しかも、彼女の知識にある中では、精霊は人や小動物を模して現れると言われている。どうやって見ても目の前の竜は小動物や人とは言えない。


「精霊が出たのですか?」

「やっと出てきてくれたみたいだよ。少なくとも今は俺達を害する気はないんじゃない」

「まぁ、それなら安心できますね。取りあえずこの話はここまでにしますか。宝箱を開けましょう」

「よっしゃ!俺は武器があったらとりあえず欲しいな」

「私は魔道具があったらとりあえず調べてみたい!」

「もう、そうなったら私の物がなくなるじゃないですか」


 アスタルテが話を切って、宝箱を開けようと促す。ジンとメリアの二人もそれに続いて自分の欲しい物を言う。アスタルテは呆れたように溜め息をつくが、普段よりも少しだけワクワクしたような雰囲気が隠せてない。

 そうして三人で宝箱に近づき。


「いっせいの~、せっ!」


 全員で一斉に開ける。パーン、っという音ともに宝箱が弾けた。


「おお!」

「これは、凄いですね!」

「凄い、凄い!私も初めて見たものがある!」


 破裂と同時に出てきた宝箱の中身を見て、全員が目を輝かせた。

 宝箱に入っていたのは、直径五十センチくらいの大きな丸い白い魔石、白い宝石が目立ちそれを目立たせるような質素な装飾の腕輪、白と黒の鳥の翼が装飾された金属製の全身(フルプレート)(メイル)、黒い背景に白い剣が交差されその周りに白い縁取りの黒い羽が周りにある模様の入った頑強そうな(タワー)(シールド)、全長二メートル位の白い刀身に黒い宝石が柄に嵌まった長剣。

 苦労したかいはあったのだろう、かなり豪華そうな報酬である。それにジンが失ったしまった武器がすぐに手に入った嬉しい。

 一先ずジンは他の二人に説明するために物の表示を出す。


◇ ◇ ◇


迷宮の魔石 等級:二級


 迷宮を踏破した者に渡される報酬。込められた魔力が高く、価値も高い。


◇ ◇ ◇


癒しの腕輪 等級:二級


 HPを周囲の魔力を吸収して回復できる。回復は体内から治していくので、切り傷よりも骨折の方が治りやすい。回復中は防御力が上昇する。壊れたら魔力を与えて再生可能。


◇ ◇ ◇


光翼の重鎧 等級:二級


 魔力を使って光の翼を創造しての飛行、羽を撃ち出して攻撃が可能。受けた魔法のダメージの半分を魔力に変換して翼を作成できる。全部を付ける必要はなく、一個でもつけていれば能力は問題なく使用可能。サイズは装着者に合わせて変化する。鎧自体は破壊されたら、しばらく経てば再生する。


◇ ◇ ◇


白い城塞 等級:二級


 魔力を籠めれば強度が増加する。魔法は繰り出された事象を吸収、物理攻撃は衝撃を吸収する。吸収された物は魔力として蓄えられ、任意のタイミングで一気に放出することが可能。また、『雪原』という数メートル四方の特殊な空間を用意できる。この空間は装備者以外のありとあらゆる物理現象が減衰し、空間内はどれだけ熱を与えようと零度以下を上回ることはない。盾自体は破壊されたら、しばらく経てば再生する。


◇ ◇ ◇


黒鳥王の剣 等級:二級


 魔力を籠めれば強度が増加する。魔法を纏わせれば魔法の威力が倍増される、刀身からの射出時も同様。装備者に適した形に変形する。身に付ければ黒色がある鳥なら何でも使役可能。また、『黒鳥の涙』という液体を生成可能。周りを侵食してゆき、そこからなら魔力が尽きない限り無限に黒い鳥の形をした使い魔を生み出し使役可能。剣自体は破壊されても、魔力を籠めればすぐに再生する。


◇ ◇ ◇


 苦労したかいはあったのか。品質が、頭どころか胸のあたりまで突き出しているような気がする。けれど、ありがたく貰っておく。そうして一通りの表示を見てメリアが一言。


「チート級の掘り出しものだね。鎧は各部位をそれぞれに分けて、残りも他に回せるけど。他はどう分けよう?」

「俺は、大剣貰えたら後は何でもいいよ。後は好きに分けな」

「私は別に大楯使わないからな~。アルテちゃんもそうだよね」

「そうですね。でも、私は腕輪の方が欲しいですね。回避主体の前衛なので回復手段は多い方がいいので」

「そうか~。まぁ、大楯なら私が使うんじゃなくてゾンビに持たせればいいのか」


 それぞれが簡単に報酬を山分けしていく。結果的にジンが大剣、アスタルテが腕輪、メリアが大楯になった。後は鎧のパーツを部分防具のように装備する部位を選んでいく。ジンとアスタルテでどっちが籠手を装備するかでもめたが、最終的にアスタルテが装備することになった。ジンはどうしようか考えたが、腰周りが無難だと思ってそこを装備する事にした。メリアは足の部位だけ取って、自分が着ていたスーツに突き刺すーーいや、吸収させ始めた。

 ジンとアスタルテはその光景に驚くが、メリアから「心配無用だよ」っと告げられ一先ず見守ることにした。やがて防具の吸収が終わると、ジンが声をかけた。


「なぁ、何が起こったんだ?」

「私の防具はスライムスーツって言ってね。防具を吸収してその分だけ防御力を上げる。しかも、吸収した防具はいつでも取り出せる上に、防具の能力も吸収した状態なら使用可能の素敵仕様」


 自慢気に胸を張って自分の着ている服を見せつける。ジンはその反動で揺れる胸に目を奪われる。すると横にいたアスタルテに頬を思いっきり引っ張られる


「いふぁい、やめふぇ」

「ふん」


 アスタルテは手を離して、プィ、っとそっぽ向いてしまう。ジンは困ったような顔をする。そしてすぐに自分の精霊であろう黒竜に近づいて語りかけてみる。黒竜の方もジンの接近に気付いたようで目を開けてジンを正面から見つめる。


「なぁ」

「………」

「君に名前はあるのか?」

「グゥゥゥ………」


 ジンが名前を問いかけると、黒竜は寂しそうに喉を鳴らして首を横に振る。そして少し期待するような眼差しを向ける。


「……名前が欲しいのか?」

「グゥァァ」


 頷くように少しだけ上機嫌になりながら鳴き声を出す黒竜。それと何で動かないのか不思議そうに見てみると、黒竜の体が大きく、この部屋で動き回るには不自由しているようだった。


「……えっと、小さく成ったりできる?」

「グゥァァ」


 黒竜は一声鳴くと、体がどんどんと小さくなって最終的に高さが三十センチ位のヌイグルミの様な大きさになった。その状態でも、問題なく飛んだり跳ねたりは出来るようだった。抱いてみると温かく、どういう原理なのか皮や鱗もプニプニしていた。そのまま黒竜の表示を出してみる。


◇ ◇ ◇


**** 種族:高位精霊 性別:♂ 年齢:4歳


レベル:1

HP :3000

MP :3000

STR:3000

DEF:3000

RES:3000

AGI:3000

INT:3000


称号:神様の贈り物 ジンの精霊 高位の精霊 お寝坊 甘えん坊


コモンスキル


・戦闘スキル

体術     (Lv1)

噛み付き   (Lv1)

噛み砕き   (Lv1)

魔法耐性   (Lv10)

火耐性    (Lv5)

水耐性    (Lv5)

土耐性    (Lv5)

風耐性    (Lv5)

雷耐性    (Lv5)

氷耐性    (Lv5)

衝撃耐性   (Lv8)

斬撃耐性   (Lv8)

毒物耐性   (Lv8)

痛覚耐性   (Lv8)


・魔法スキル

暴風魔法   (Lv5)

聖術     (Lv8)

光魔法    (Lv2)

魔力精密操作 (Lv10)

魔力解放   (Lv2)

魔力感知   (Lv10)

魔力視認   (Lv5)

魔力同調   (Lv5)

魔力譲渡   (Lv7)


・生活スキル

飛翔     (Lv5)


・創作スキル

なし


固有スキル

スキル共有

竜のブレス  (Lv2)

竜魔法    (Lv1)


ギフト

風神の加護


・装備

武器 :なし

防具 :なし

装飾品:なし


◇ ◇ ◇


 ジンでも反則的に思うようなステータスであった。やはり竜だからこそ、生まれながらの強者という事なのだろう。竜魔法が魔法のスキル欄ではなく固有スキルにある事も疑問に思ったがそこは後で考えようと思った。


「キュー、キュー」

「ああ、ごめん」


 気付かぬうちに強く抱きしめすぎていたのか、苦しそうに声を出したので離してやる。するとそのまま上に飛翔してジンの頭の上に乗る。背中にある飛膜が五センチ位しかないのによく飛べているなと感心する。そしてそのまま眠りにつく。頭にのっているが思ったよりは重くなく、それほど不自由は感じない。


「上手く手懐けてるようですね。頭は大丈夫なんですか?」

「どういう意味だよ」

「もう一方でも聞いておきたいですが。今は、頭は重くないのかという所を心配しています」

「………大丈夫だよ。あんまり重くはないからな」


 アスタルテの嫌味に少しだけ嘆息して、頭の方は大丈夫だと言っておく。事実何かしらの不具合がある訳じゃない。


「名前は何にするか決めたんですか?」

「あ~、今考えてるとこ。何にしようかな?」

「まぁ、あんまり待たせてあげるのもかわいそうですから、サッサっと考えてあげることをお勧めしておきますよ」

「そうだなぁ」


 ジンは生返事を返し、一先ずどうやって帰ろうか考える。部屋の中にあるのは、迷宮ボスのアラが付けていただろう装飾品と鎧が床に落ちているだけで、帰れるような場所はない。

 すると、突然部屋の中心が光り出す。ジン達は新手かと身構える。やがて、光はヒト型をかたどっていき段々と集中して集まっていく。

 そうして集まった光は天使へと変わっていた。


「は?」


 ジンが間抜けな声を出すが、生み出された天使は無表情で何を考えているかはいまいちわからない。地面に着地するとヒタヒタと裸足のままジンの方へ歩いていく。外見は先程まで戦っていたアラにそっくりであったのでジンは動揺を隠せずにいた。頭には天使の輪なのか、光の輪っかが浮いていた。先程よりもジンが思いつく中で、忠実に天使の再現が出来ていると思う。

 天使はジンに近づくと何の前触れもなくジンに抱き着く。


「なぁぁ!」

「お?」


 ジンはもう突然に抱き着かれるのは慣れたのか、驚くことはなくゆっくりと受け止めてあげた。他の二人はそうでもなく、アスタルテは言葉を失って驚いていた。メリアは面白そうに口元を歪めつつも、もっとやれという風に見ていた。


「もう!何してるんですか!」


 ジンを抱きしめていた天使をアスタルテが、背中からの手でポイっと離してしまう。そしてジンの前に立って犬が主人を守るように立ちはだかる。

 ジンからはがされた天使は、受け身を取ってすぐに立ち上がる。眠そうな瞳でジッとジンの事を見つめて逸らさない。その眼差しにジンの方が少したじろぐ。だが怯み切る前に口を開いて問いかける。


「……君は、何者?」

「………さぁ?」


 アラのような天使は小首を傾げ、さっきよりも流暢に言葉を喋って聞き返す。ジンは一旦深呼吸して冷静になり、改めて目の前の天使を見て他二人にも見える様に表示を写す。


◇ ◇ ◇


**** 種族:天魔 性別:♀ 年齢:0歳


レベル:1

HP :500

MP :500

STR:500

DEF:500

RES:500

AGI:500

INT:500


称号:迷宮攻略特典 元迷宮ボス 元人間 元アンデット ジンの従魔 初めての従魔 甘えん坊 槍の天使 


コモンスキル


・戦闘スキル

槍戦     (Lv5)

体戦     (Lv4)

危機感知   (Lv7)

気配感知   (Lv8)

魔法耐性   (Lv10)

聖耐性    (Lv7)

火耐性    (Lv10)

雷耐性    (Lv7)

氷耐性    (Lv5)

気迫     (Lv5)


・魔法スキル

魔術     (Lv8)

火魔法    (Lv1)

地魔法    (Lv2)

魔力精密操作 (Lv5)

魔力感知   (Lv8)


・生活スキル

読み書き   (Lv8)

礼儀作法   (Lv8)

計算     (Lv8)

共通語    (Lv8)

鑑定     (Lv5)

鑑定遮断   (Lv7)


・創作スキル

なし


固有スキル

(こう)(しん)     (Lv10)

光撃(こうげき)     (Lv10)

光砲(こうほう)     (Lv10)

光刃(こうじん)     (Lv10)

超再生    (Lv4)


ギフト

従魔契約:ジン


装備

武器 :なし

防具 :絹の服

装飾品:なし


◇ ◇ ◇


 ジンに新しい下僕が増えた。


* * *


「従魔契約って、契約した覚えはないんだけど」

「契約してないなら何で、従魔契約ってでてるんですか?」

「知らないよ。分からない内にされてるんだもん。精霊契約と一緒だよ」

「まぁいいじゃない。別に害のあるものじゃないんだし」


 メリアは呑気な声で呑気な事を言う。従魔契約について知識があるのは彼女だけである。ジンは取りあえずそのことについて聞いてみた。


「そもそも、従魔契約ってなんなんだ?」

「う~ん、色々個人によって定義が違うんだけど。私個人としては魔物なんかに自身を表す刻印を彫って、そこから魔力を流したりすることでその魔力を馴染ませる。その魔力が、魔物の全身にいきわたると契約完了。効果としては、契約した魔物に自由な命令を出せる。魔物から自由に魔力を抽出できる。契約した魔物は意識的でも、無意識的でも、主人を害する行動は出来ない」


 「そんなところかなぁ~」っと話を締めくくりジンを見る。ジンには何故そんなことになっているのか心当たりのある称号があった。


「迷宮攻略特典って事は、これも攻略報酬って事なのか」

「誰にでも与えられる、ってわけじゃないんだね。迷宮ボスを倒したからもらえるってことなのかな?」

「でも、そんな話聞いたことありません。迷宮って簡単なら一週間に一度は攻略されてるんですよ。そのたびに従魔なるものが増えていたら、その方法も、もっと普及しているはずです」

「じゃあ、ここの迷宮が特別なのかもね。……そういえば刻印ってどこに彫られてるの?」


 体に彫られていると言うが、一見、天魔の少女のどこにも何か彫られているようには見えない。一応気になったので、質問してみる。するとーー、


シュル、シュル。


 ジン達の目の前で、着ていたワンピースの肩ひもを外す。ストンっと少女の着ていたワンピースが床に落ち、綺麗な裸体があらわになる。突然な彼女の奇行に全員が目を点にして数瞬停止する。数瞬後、元凶以外のそれぞれが一斉に動き出す。


「ぶへぇ!」

「おぅ」


 アスタルテの背中から出た手にフルスイングでジンの目に向けて振られ、壁まで吹っ飛ばされる。メリアは堪らないという様に天魔の少女へ飛び掛かり、その胸を揉みしだき始める。少女は少しびっくりしたようだが、特に気にしている様子はない。一瞬でかなりカオスな状況になった。

 ジンは暫くビクビクと跳ねていたが、目を擦りながら立ち上がる。ジンが悶えていた間にアスタルテが少女の服装を整える。その時に確認したところ右の脇腹にそれらしい模様がタトゥーのように彫られていた。

 立ち上がったジンは、メリアに気になった事を聞いてみた。


「なぁ、個人を表す刻印っていうけど。どうやって決めるんだ?」

「『無地の魔方陣』っていう魔方陣に魔力を通すと、その人にあった模様に変化するんだ。その刻印を魔物に彫るっていうより、魔力でその模様をかたどってシールのように貼り付ける感じかな。魔力を浸透させれば、そのシールが肌に張り付くんだよ」

「そうか。………一先ずお前らの名前を決めるか。うーん」


 そう言って、ジンの頭の上にいるミニ黒竜と天魔の少女に目を向ける。そしてジンは頭の中で彼らの名前を考え始める。

 そうやって、十数分考え込み始める。「高速情報処理」を持っているのにここまで考えこむからには、やはりジンが自己申告した通りネーミングセンスはないようだ。ああでもない、こうでもない、と考えこみまた十数分かけてやっと答えを出す。


「黒竜はムーで、天魔はセフィラなんてどうだ?」

「………」

「………」


 名前を言った瞬間、名付けられた一人と一匹の体が、淡く光って体に吸い込まれるように消えた。どうやら、名前として認識してくれたらしい。

 するとアスタルテとメリアが近づいてきて、口を開いてこう尋ねる。


「リョウ様、セフィラは何となくわかるんですが、ムーってなんですか?」

「………、バハムートっているだろうそこから使えそうなのを取って、ムーにした」

「え?でも、あれって魚の幻獣じゃなかったけ?」

「そうなの?」

「どうだろう、私もあんまりよく覚えてないし。まぁ、本人達が気に入ってるんだったらいいんじゃない」


 メリアは適当になったのか、興味が尽きたのか話を切り上げ、セフィラの羽を弄り始める。セフィラはこそばゆそうにして身を捩っても特に抵抗する気配はない。ジンはもう一度二人の表示を確認してみるが、名前がしっかりと登録されていたので、安堵の息を漏らす。


* * *


 取りあえず、終わらせることは終わったので、そろそろここから出ようと、辺りを見回す。部屋には他に何もなかったが、いつの間にか壁に扉が出来ていた。

 全員でそこの扉をくぐると、外に出ていた。


「おっ?」


 抜けた声を出すが、まぁ外に出られたのならいいと当たりを見渡す。そこはジン達が入ってきた迷宮の入り口で、まだ出店の時間ではないようで薄暗い雰囲気が出ていた。辺りに人はいないので、これ幸いにと、ジンはセフィラを自分の影に入れて、ムーは自身の中に入れる。

(従魔は主人の影に、精霊は契約者の霊体の中に入ることが出来て、そこで眠るのだそう)

 そして、メリアの目立つ髪色と体つきを隠すために、少し大きめのローブを被せる。ジンもそうだが、メリアの髪色は目立つのでなるべく人前には露出させない様にする。

 そこからまずは休もうと、ルーカスへ向かった。ルーカスへ着いた時もまだ薄暗くとも、活気ある喧騒が聞こえてきた。

 門番はまだ起きているようだが、迷宮に入っていて、今、帰ってきたところだと言って、冒険者カードを見せると快く通してくれた、メリアは身分証を作ってもらい銀貨二枚払って都市の中に入れてもらった。今の時間帯は夕方の終わり近くになったところだと聞いて、門番にお礼を言って宿に向かう。

 が、ジン達がとっていた宿は現在満室だったので、別の宿屋を取ろうと適当な宿屋に入る。

 地元に古くからある宿屋なのだろう。味があってジンは嫌いじゃない。メリアは初めて見る外の世界の光景なので、見るものすべてを興味深く観察している。アスタルテは疲れを前面に出して早くベッドで休みたいようだった。

 女将から部屋のカギを受け取って三人部屋へ向かう。そうして目的の部屋へ着くと、ベットに飛び込んで休む。少し休んだ後にジンはこうつぶやいた。


「………これから俺とメリアで、冒険者ギルドで登録しようと思うんだけど」

「良いんじゃないですか」

「私は………、あと少し休んでからがいい」

「いつ窓口が閉まるか分からないんだし、早くいこ」


 渋るメリアを無理矢理立たせて、ジンは引き摺り気味にメリアを連れていく。

 少女の案内してくれた宿屋と、冒険者は意外に近くてそう時間を掛けずについた。ジンは自分たちを登録してくれたアニーの窓口へ向かう。


「あら、リョウ君。そちらの女性は?」


 三日ほど姿を見せなかったジンの姿を見れて、安堵の表情をしながらも近くにいるメリアに視線を向けて誰なのか尋ねる。


「ああ、俺の知り合いですよ。まだ冒険者登録がまだでしたし、登録させようと連れてきたんですが。ここまでの道中でだいぶ疲れてしまったみたいで、連れてくるのに苦労しましたが。冒険者登録お願いできますか?」

「ああ、はい。いいですよ、では身分証を渡してもらえますか?」

「ん~、あ、あった。はい」


 メリアは自分のポーチから身分証を取り出して、アニーに手渡す。アニーは窓口から奥に引っ込んでいって奥にある魔道具に身分証を入れる、暫くガチャガチャという音と共に待っていると、チーンという音で魔道具からカードを取り出してそれをメリアへ手渡す。


「お~、これが冒険者カード。かっこいい」

「うふふ、ありがとうございます。説明は必要ですか?」

「いいや別にいいよ、そういうのはリョウちゃんから聞くし。リョウちゃんは何かある?」

「ん~、ああ。売りに出したいものがあるんですが、いいですか?」

「ええ、いいですよ。何を売りたいんですか?」

「ええっと、これです」


 そう言ってジンは迷宮の魔石と天翼の重鎧の(ヘルム)を取り出す。


「へぇぇぇえ!?ちょ、ちょっと待ってね!」


 そう言って、アニーは魔石だけ持って驚きながら裏へ引っ込んでいく。言われた通りにジン達は待つことにして数分待つと、アニーが魔石を抱えながらもどってきた。


「あの、お時間はございますか?できれば今からギルド長とお話をしてもらいたいんですが」

「ええ、大丈夫ですよ。案内をお願いできますか?」

「はい!どうぞこちらです!」


 緊張していますというような、ぎこちない所作でアニーはジン達を先導していく。二階へ上がると少しだけ装飾の施された扉をアニーがノックする。


「ギルド長、例の冒険者をお連れしました。中へ入ってもよろしいでしょうか?」


 中から声は聞こえなかったが、ガチャリと音が鳴る。どうやら鍵が開いたようだ。アニーが扉を開けてジン達を手で先導する。

 部屋の中は、綺麗に整頓されていて質のいいソファや調度品があった。華美過ぎない程に、そこそこの造りでシックな内装になっていた。趣味的にはジンは自分にあってると感じていた。

 そんな部屋の住人は、奥の執務机で両手を合わせて、その上に顎を乗せて、にこやかな笑顔でジン達の事を見つめる。ジンは別に驚くことはなかったが、隣にいるメリアは目を見開いて驚いていた。

 ギルド長はジンと同じぐらいの年頃の少女だった。大きくてくりくりとした目に、燃える様に赤く長い髪、外見はとても可愛らしい。

 メリアは自分の想像の中で勝手にギルド長は、もっと筋骨隆々のおっさんかと思っていたのだが、その予想が見事に裏切られた。ジンはギルド長の表示が見えていたので、特に驚いている様子はない。


◇ ◇ ◇


アイルダ 種族:エルダードワーフ 性別:♀ 年齢:58歳


職業:大槌戦士 剛力闘士


レベル:213

HP :2380

MP :2180

STR:2380

DEF:2380

RES:2180

AGI:2180

INT:2180



称号:特級冒険者 ルーカスギルドのギルド長 ロリBBA 鍛冶嫌い 達人 極めた者  限界突破者 甘いもの好き 迷宮攻略者 おねだり上手 子供の味方 判断する人 セクハラ好き 恐れられる者 槌の名手 魔物の天敵 盗賊の天敵 見守る者 率いる者


コモンスキル


・戦闘スキル

槌戦     (Lv8)

体戦     (Lv5)

投擲     (Lv3)

斧闘     (Lv9)

闘気術    (Lv5)

気配感知   (Lv10)

危機感知   (Lv10)

罠感知    (Lv10)

魔法耐性   (Lv10)

土耐性    (Lv6)

火耐性    (Lv5)

雷耐性    (Lv3)

氷耐性    (Lv3)

水耐性    (Lv3)

風耐性    (Lv1)

衝撃耐性   (Lv8)

斬撃耐性   (Lv8)

痛覚耐性   (Lv5)

暗闇耐性   (Lv4)

毒物感知   (Lv6)

覇気     (Lv10)

気配感知   (Lv10)

索敵     (Lv8)

戦術構想   (Lv4)


・魔法スキル

魔術     (Lv10)

猛火魔法   (Lv3)

大地魔法   (Lv2)

魔力精密操作 (Lv10)

魔力感知   (Lv8)

魔力視認   (Lv7)


・生活スキル

読み書き   (Lv10)

礼儀作法   (Lv8)

計算     (Lv10)

共通語    (Lv8)

鑑定     (Lv5)

鑑定遮断   (Lv7)


・創作スキル

鍛冶     (Lv1)


固有スキル

武人の境地  (Lv4)

槌の極み   (Lv3)


ギフト

なし


装備

武器 :ミスリルハンマー パワーアックス

防具 :ハードウールのドレス ミスリルの胸当て

装飾品:防御のイヤリング 剛腕の腕輪×2 そよ風のネックレス


◇ ◇ ◇


 迷宮で強敵との戦闘があったので、ジンとメリアは、もちろん本調子は出ない。戦うとなったら厳しい相手だった。本調子でも戦うのは厳しいだろうが。と言っても真似置いておいて即戦闘にはならないとジンは考えた。


「こんばんは、夜分遅くにお招きいただきありがとうございます。リョウと申します、それで今夜はどういったご用件でしょうか?」


 ジンは慇懃な態度を心がけて、腰を折ってギルド長――、アイルダに挨拶する。その所作はアイルダに驚かれるくらいには整っていて様になっていた。アイルダは興味深そうにジンの事を眺めながら、口を開く。


「やぁやぁ、よく来てくれたね。噂通り、肝の座った子だ。取りあえず……、初めまして、僕はここのギルド長をやっているアイルダというものだ。宜しく頼むよ。まぁ、ソコにかけてくれたまえ」


 アイルダは柔和な笑みを浮かべ、椅子を勧める。ジン達は勧められるままにソファに腰かける。アイルダもその向かいに座る。アニーはアイルダの隣にお淑やかに腰かける。

 そうしてジンとアイルダが向かい合うと、アイルダの方から口を開く。


「要件というのは、今日、売却を願い出て来てくれたものだよ。あれは迷宮制覇の証だろ。何故君たちがあれを持っているんだい?」

「それは俺達が迷宮を制覇したからです」

「本当?」

「ええ」


 やはりその件か、っと納得して堂々と受け答える。嘘をついてるような怪しさはない。


「しかも、あれは少なくとも二級の物だろう。ええっと、アニー彼らは入ってどれ位だったけ?」

「はい、えっと、大体登録から五日くらいですね」

「そうそう、そんな新人がいるなんて僕は聞いてないんだけど?」

「さぁ?それはそちらの伝達ミスでは?」

「う~ん、痛い所突くね~。でも、二日で四級まで上がれるような人間の情報が入らなかった。不自然だと思わないかい?」

「私たちは入って来たばかりの新人ですので、何が自然か不自然かなんて判断が尽きませんよ」


 アイルダからの“本当は何処からか盗んできたんじゃないのか?”と言う疑いを、ジンはのらりくらりと躱していく。アイルダは嘘をついてなさそうだと感じて、やれやれと言う様に息を吐いてから話を変える。隣にいるアニーとメリアは、自身の隣にいる人物たちの覇気に当てられ縮み上がっている。


「まぁ、もういいや。一応質問しておくけど、『天使の忌み地』を攻略できたんだよね」

「ええ」

「そう。んじゃあ、他にも迷宮の戦利品とかあったんじゃないの?報酬が兜と魔石だけ、ってのはいくら何でも少ないだろう」

「それが?迷宮で獲得した物については、獲得した人物の物であると思っていたのですが、違うのですか?」

「それは違わないんだけど。お姉さんたちとしては、売らないモノがどんなものなのか気になるんだよ。あそこは攻略者が少ないからね、どんなものが集まるか情報が欲しいんだよ」

「別にいう必要もないでしょう。自分がこれから使う武具の紹介でもして、弱点さらす必要なんてない筈でしょう。知りたいんだったら何千回でも他の冒険者に挑ませて、取りに行かせればいいでしょう」

「そう簡単にいかないのがあの迷宮でしょ。大人数で行ったら迷宮の配置換えで何人か圧死するし。経験豊富な小数精鋭で行っても、迷宮で迷子になっちゃう。情報を集め様にもうまくいかないんだよ」

「それは大変ですね。では他の冒険者の皆さんに期待しますよ」

「期待できないんだから、聞きたいんだよ。攻略法と戦利品の事、教えてもらえない?」


 両手を合わせ拝むようにジンに頼み込むアイルダ。見る者から見れば、あざとく見えるのだろうが不思議とアイルダには似合っていた。ジンは冷めた目で見返しながら、こう返した。


「ただじゃ無理だ。なんか対価が欲しい」


 そう言われると、アイルダはつまらなそうな表情をする。自慢の落とし技を眉一つ動かさず、淡々と要求突き付けてきたジンへ不満があるんだろう。


「そんなこと言われてもね。う~ん、あ!じゃあ、これで」


 そう言って、突然隣にいたアニーのスカートを全開にめくる。


「きゃあ!」


 アニーは慌てて隠そうとするが、アイルダの力には敵わず、中途半端に白い布地が見えている。


「それくらいならいくらでも見れる」


 そう言ってジンも隣にいたメリアのスカートを捲りあげる。メリアは隠そうともしないので、全開で黒い布地が見えている。


「仕方ないな、今なら中身の方もサービスするよ」

「ひゃ!ちょ、ちょっと、ギルド長!や、やめて下さい!」


 そう言って、アニーの胸を見せつけるように玩ぶ。アニーは頑張って抵抗するも、その抵抗を抑えられアイルダに好き放題弄られる。アニーはそこそこ大きい方の部類に入るので、その胸がポヨンポヨン、っと跳ねる。ジンはそんな事関係ないという様に、メリアのローブを開いて胸元を晒す。メリアの物はアニーより二回りは大きい。こっちはメリアの方が隠すことなく、寄せ上げて見せつける。


「その程度か?」

「ふぅ、舐めてもらっては困るね。まだまだ、こんなモンじゃないよ!」


 ジンの最初の慇懃な態度は何処に行ったのか、タメ口でアイルダに語りかけ、彼女もそれに倣って返す。

 二人は互いを見つめあい、不敵な笑みを浮かべる。しかし、壮絶なセクハラ合戦は意外な所からの決着に終わる。


 突然、二人の頭上に白く巨大な拳が現れて、上から押しつぶす。

 隣にいたメリアとアニーは、巻き込まれず無事だったが、アニーは声も出せずに驚いて潰された二人の方を見ている。一方、メリアは入口の方へ視線を向け、この状況を作った張本人に視線を向ける。


「遅かったねー」

「すいません、担当者の人に伝えるのに時間が掛かったもので。それで大丈夫ですか」

「あ、はい。大丈夫です。いつもの事ですので」


 アニーの答えに「いつもこんなのでは大丈夫ではないのではないのか?」とも思ったが、アスタルテはあまり気にしない様にする。

 すると二人を潰していた手がいきなり上に飛ぶ。そこに立っていたのは当然二人だったが、二人共当然のように無傷である。


「ふぅ、いきなりびっくりするじゃない。久しぶりに痛かったよ」

「取りあえず茶でも入れてくれ、アスタルテ」

「………はい、畏まりました」


 呆れるほどの頑丈さに、溜息をつきながらも命令通りお茶を淹れに行く。アニーはセクハラ地獄から解放されて、ホッ、っと安堵する。そうして数分してアスタルテがお茶を淹れてきて、話は仕切り直しになった。


「まぁ、改めて聞くけど、あそこの迷宮の情報を売ってくれ。無論ちゃんとした報酬は支払うし、そういった類の誓約書もちゃんと用意しよう」

「………まぁいいだろう。金貨五枚で譲ろう」

「高すぎ、金貨一枚」

「金貨三枚」

「ちぇ、それでも高くつくけどしょうがないか、それでいいよ。アニー。貴方は僕の口座から少し引き出しておいてくれ」

「は、はい。かしこまりました」


 アイルダはアニーに自分のギルドカードを渡して、自分の財布から出すことにする。アニーが部屋を出ると彼女は自身の執務机に向かい、その棚をあさる。暫くあさって、一枚の紙を取り出し。三人の前に置く。それは所々抜けているモノの誓約書のひな型のように思えた。


「これは『誓約の紙片(ページ)』っていう魔道具さ。紙に書かれたことについては、嘘をつけば紙が黒く変色する」

「名前のわりに効果がしょぼいな」

「否定はしないけど。これの元ともいえる、『誓約の書』は、誓約の内容を自由に設定できる」

「持ってないの?」

「そんなのを持ってるのは、王家か大きい貴族、あと大きい商人だけね。最近、何処かの商会が新しく出土したものを手に入れたって話は聞いたけど、それくらい。しがない一都市のギルド長が持てるものじゃないよ」

「そう」


 ジンが自分から質問したわりには淡泊な受け答えだった。いづれ何処かで原本が見れることを願う。


「まぁいいや。取りあえず、誓約の内容を書いておくから受けられそうだったらサインして頂戴」

「わかった」


 ジンは素直にうなずく、アイルダが書類を書いている間は暇になるので適当に三人で他愛のない事を喋る。

 数分してアイルダが書き上げた書類をもらうと、内容を読み込み不備がないことを確認してからサインする。


「手慣れてるね」

「そりゃどうも」

「うん、問題なさそう。じゃ、お金受け取ったら、早速話してもらおうか」


 すると、タイミング良く、アニーがアイルダの口座から降ろしたお金を持ってきた。それを小袋に入れてジンに手渡す。

 それを受け取り、懐に入れてから。ジンは迷宮の事について話し始めた。最初に迷宮の報酬の武具について、それから手に入れたセフィラの事。そこまで聞き終わって、アイルダが一回、口を開く。


「能力については、見せてもらわないと分かんないけど、それを見せてもらう訳には?」

「やっても良いけど、吹き飛ぶよ」

「そうだね、じゃあ攻略法について教えてもらえる?」

「了解」


 ジンはそれから自身が迷宮を苦略した方法について話し始めた。攻略法と言っても固有スキルによるゴリ押しなのであまり他の人に参考になる者もない。それもアイルダも理解したようで。


「やっぱり固有スキルか。他の人の参考には出来ないね」

「別に、参考になる方法がないわけじゃない」


 参考になるかどうかは分からないが、ある程度テンプレ化した攻略法がジンにはあった。そんなことを思いもしなかったのかアイルダは瞠目して驚いていた。


「本当?」

「うん。金貨二枚」

「むぅ、しっかりしている」


 だが、アイルダは何処からか取り出した金貨二枚をジンに投げ渡す。ジンはそれを受け取って、小袋を取り出して、中から一冊の本を取り出す。本と言っても、雑に紐で縛って纏めただけの簡易的なものだった。それを表面だけ見せながら説明を始める。


「あの迷宮の内部構造の変化は、地下十一階層から始まる。そうして内部構造の変化は、大体三十分に一回。十一階層から二十階までは、内部の構造の変化のパターンが四通り。その下から最後までは大体二十分に一回。変化のパターンは九通り。一日たてば元通りに戻る。場所によっては閉じ込められるけど、入り口から出口までのルートは毎回確実に確保されている。変化は別にランダムじゃなくて、規則的になっている」

「変化のパターンが、分かったの?」

「俺の固有スキルの能力だ。詳細の説明はなしで」

「はいはい。んじゃ、それも売ってもらえるの」

「前金は貰った。いらないなら別にいい」

「いや、いる。いるよ。頂戴」


 袋にしまおうとするジンを止めてアイルダは攻略法の書かれたと思われる本をもらう。


「最初から金貨五枚だったら、もしかして全部教えた?」

「さぁ、搾れるとこからなら、いくらでも搾るつもりだよ」

「おお、こわ」


 体を震わせて大袈裟に怖がって見せるアイルダ、隣のアニーは苦笑いを隠せないでいる。

 ジン達はやることは終わったという様に、その場を離れようとする。だが、それはアイルダに止められる。


「待ちなよ。君たちについて、やっておきたい手続きと依頼したいことがあるんだよ」


 愉快そうに笑いながら、自分の依頼を任せたいと願う。


* * *


 あれから二時間くらい手続きと依頼の話をして、やっとの事で宿に戻った。


「あ!おかえりなさい!もう夜も遅いんですから、気を付けてください」

「ああ、ごめん」

「はい!いいですよ。もうご飯が出来ているので、食べちゃって下さい」


 そう言って宿の娘は食堂へ案内する。娘は三人を食堂に着かせると、厨房へ引っ込みシチューを三人分持ってくる。


「はいどうぞ!今日はオーク肉のシチューですよ。ゆっくり食べて下さいね」

「ああ、ありがとう」


 ミリノが持ってきたシチューは、たっぷり牛乳を使われ濃厚でちゃんとトロトロしている。木のスプーンを使ってしっかりと口の中に入れていく。豚肉の様なオークの肉を口の中に入れる。野菜を巻いたオーク肉はしっかりとした味付けで喰いごたえがあった。


「アルテちゃんのと、同じくらいに美味しいね」

「本当、美味しい」


 ジンやメリアはその味を素直に楽しみ、アスタルテはそれを研究するように口の中で転がす。

 特に問題なく食事が終わり、騒ぐ冒険者を横目に部屋に戻って就寝する事にする。


* * *


 翌朝、宿で起床する。

 起床後、ジンとアスタルテは日課を済まそうと宿の外に出ようとする。すると、広場の方が騒がしかった。

 一応、屋台の準備なんかでこの時間は少ないながらも人が多かったりするんだが、通常の時とは違うどよめきが聞こえてくる。

 不安、困惑、恐怖そんな感情がどよめきの中に交じり、騒ぎは広場に広まっている。

 気になったジン達はその広場へ近づいていく、近づくにつれて騒ぎの元凶が明らかになり、後悔していく。


「おい、おい。何だよ、あれ」

「惨いな」

「二人いるぞ、男女だし夫婦か?」

「悪趣味な奴もいるもんだな」


 顔に不快感を浮べ、広場の中心に吊るし上げられた二人の死体を見ている。


「………」

「………」


 ジンとアスタルテは両者とも言葉を失っていた。ジンはその見たことのある光景に、アスタルテは見たことのある人物たちの無残な末路に、声が出なく、頭が真っ白になった。

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