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勇者の守護者〜誰かのために出来る事〜  作者: Dr.醤油煎餅
第二章 守護者達の旅行記
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16話:迷宮攻略 

 地下十階のメリアの部屋を抜け出し、そこへ通じる穴をふさいだ。


「これで、あっちを荒らす奴はいなくなると思うよ」

「うん、ありがと」


 メリアは僅かに口元を綻ばせ、ジンにお礼を言う。一応長く暮らした住処だから、誰かに荒らされたくはないのだろう。

 そうして地下十階から下へ、下へと進んでいく。ジンの固有スキルで、道中にあった宝箱と下への階段は見逃さず。どんどんお宝をゲットしていく。


「楽ちんだねぇ~」


 メリアは二人のスピードに追い付くことは出来ないので、オメガブラックの背中に乗りながら二人を追いかけている。呑気な声でそんな事を言うが、今の現時点では彼女には何か苦労があったりするわけでは無いので、比較的リラックスしている。


「呑気なこと言わないで下さいよ」

「あはは~。ごめん、ごめん」


 呑気にそんな会話を続けているが、迫りくる数十のゾンビ達をジンが突っ込んで粗方切り伏せ、討ち漏らしたのをアスタルテが四肢を切り裂いて沈め、最後尾のメリアがオメガブラックの武器に聖術を纏わせて首を切って完全に沈黙させる。そんな一連の動作を高速で走りながら続けていた。常人から見ればそんな神業的な流れを続けていることだけでも驚きなのに、それに加えて呑気に話し始めるのだからさらに驚くことだろう。


「おっ」

「またありましたか?」

「ああ、宝箱だ」


 そう言って、ジンは立ち止まり、通路の先の曲がり角を指差す。その角を曲がると数体のゾンビが、武器を構えてとびかかってきたが、それは返り討ちにした。

 おいてある宝箱を調べ始め、罠などを入念にチェックして宝箱を開ける。すると中には――、


「おお?」

「これは……、」

「おっ、ラッキーじゃん!」


 三者三様の反応を示すジン達。メリアはそれが何か知っているようだったが、他二人は何に使うのか皆目検討もつかない。入っていたのは、大量に箱に詰め込まれていた眼球だった。しかし宝箱に入ってるからには、ただの眼球であるはずもなく、一つ掴んで持ち上げると、その視神経が生えていた部分からは糸のついた針がついていた。一瞬、呪いの装備かと思ったが、表示が出てきて説明しだす。


◇ ◇ ◇


警戒の瞳 等級:三級

 眼球の先にある針を突き刺すことで、魔力を吸い取り魔力を記憶する。記憶されてない魔力を感知すると、記憶させたものに対して思念波を飛ばす。針を突き刺してマーキングする事で、巡回ルートを設定できる。周囲に漂う魔力を吸い取り、浮遊しながら巡回ルートを監視するようになる。


◇ ◇ ◇


 中々にグロいが、監視カメラのようなものだと察した。長年この迷宮に住んでいるからだろうかメリアは便利そうなものを見る様に見ている。その横で使い道がわかっていないアスタルテに警戒心の瞳の表示を見せる。


「中々奇抜なデザインの監視カメラですね」


 彼女の感想は淡泊なものだった。原材料が何かは分からないが、質感からして本物の可能性は低そうに思えるからだろうか?例え原材料に本物が使われていたとしても、彼女の顔色は変わらないだろうが………。

 道具の等級は三級とのことから、かなり高位の魔道具であることがわかる。ビジュアルはともかくとして、性能は便利なので、外見を変えて販売できそうだと思った。ここに来るまでも複製できれば有用そうなものを、大量に手に入れてきたので、インベントリの中はお宝の山だった。ちなみに道具の等級も冒険者ランクと同じように十段階に分けられる。

 そのまま三人で流れ作業のように、出てくるゾンビを切り伏せながら、地下二十階へと、続く階段の踊り場に来ていた。


「こっから先は、もっといろいろ出てくるし。さらにその先にはこの迷宮の主がいる」

「凄いね。そんなことまでわかるなんて、マジでチートじゃん」


 ジンはこの迷宮の構造を紹介すると、ジンのスキルについて感想を言う。ジンのスキルが規格外過ぎて、若干頬が引き攣っている。メリアも、メリアの師もこの迷宮に長く住んでいるが、地下十階より下は一定時間毎に内部構造が変化する為、正確な内部構造を知ることは出来ない。この迷宮は出るモンスターの等級こそ低いが、この迷宮の入れ替え能力によりたまに、出口のない部屋に閉じ込められたり、ゾンビだらけの部屋に入ったりする。しかも、迷宮の壁は周囲の魔力を吸収し続ける特殊な素材でできている為、魔法が使いにくくなっている。これだけならともかく、罠が分り難く巧妙で熟練の斥候職の人間でも発見できなかったりするので、攻略難易度が二級になっている。

 そのためメリアはそんな厄介さを完全に無視したジンのスペックに驚愕する。かつて自分の師がこの迷宮の為に定期的に図面を更新する地図を作成しようとしていて、周辺の広範囲の定期測定用の魔力が膨大すぎたため断念したものを、ジンが自身の身一つで実現しているのだから驚愕するのも無理はない。

 それはさておき、ここまでの戦利品を出して階段の段に乗せて置く。階段は部屋が入れ替わっても、必ず次の階層とつながっている為、途中休憩できる場所として非常にありがたい所なのである。三人は魔物とゾンビ除けの結界装置を作動させる。メリアの師匠が作ったものの為非常に高品質なものである。それを表すように、マップ表示にあった敵の表示が範囲内に入っていたものがどんどん抜け出て、最終的には何も寄り付かなくなっていった。


「ようやく一息つけるねぇ~」

「あんまりだらしなくしているとみっともないですよ」

「もうぅ~、そんなにカチカチだと、私みたいに大きくなれないぞぉ~」


 階段の踊り場にシートをひいて、寝そべってゴロゴロしているメリアをたしなめるアスタルテだが、メリアからの返しで若干額に青筋が浮かぶ。ジンは我関せず、と後ろを向いて手元の作業を黙々と進めていた。


「私はまだまだ成長期なんです。これから身長も伸びていきますし、色んな所も育っていく予定です。貴方の方こそ、そんなに成長して将来垂れてくるんじゃないですか?」

「ふふふ、これがそんな事ないんだなぁ。私の固有スキルの一つに、自己調整っていうのがあってね。それを使えば、いくら食べても太らないし、今の抜群のスタイル維持し続けるのだって簡単なのだよ」

「そんなことに一々スキルを無駄遣いしない様に。いざという時に困るかもしれないのですよ」

「まぁまぁ、自分にはないモノがあるからって僻まないでよ。リョウちゃんの性欲処理ならこれから私が変わってやってもいいのよ」

「ゴフッ」

「私はやってません!!だけど、………その、…私も、……求められれば、その、やっても、良っ、たり?」


 メリアのかなりの爆弾発言に若干慌てているジン、さらに真正面にそんな事を言われたアスタルテは強く否定したが、後半は人差し指を合わせてモジモジして気恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めて俯き、小声でゴニョゴニョ言う。


「あはは~、やっぱりアルテちゃんをからかうのは楽しいね~」

「ぬぅ。………ってアルテちゃんって何ですか?」

「アスタルテじゃ呼び難いしね。どうかな?私は呼び易いんだけど」

「まぁいいですけど………」

「で~、リョウちゃんはどうなの?私の体とか、興味ない?」


 そう言って無駄に話を戻して、胸を押し上げジンの方向へ誘惑するように声をかける。だが、ジンは途中反応をしたが、集中して作業を続行している。


「もうっ!つれないなぁ~。折角こんな美少女たちが、頑張って誘惑しているというのに。もうちょっと、正常な反応を示してくれても良いんじゃな~い~」


 そう不満を吐くメリアが、ジンの頬を後ろからムニムニ引っ張り注意を引く。アスタルテは若干頬をまだ赤に染めているものの、何時も通りの顔をしながら食事の準備を開始していた。ここでようやくジンが口を開く、


「そもそも何でだらける話から、俺の性欲処理に話が変わるんだよ」

「ええ~それを女の子に言わせるの~。全く、スケベだなぁ~」


 ジンが文句を言うと、それをクスクス笑いながらメリアはジンを抱き寄せてくる。


「危ないっての」

「大丈夫だよ、ちゃんと見極めてるから」


 まだ工具を持って作業を続けていたため、危ないのだがそんなこと気にした風もなく、遠慮なくメリアはジンを膝の上に抱きかかえる。アスタルテはなんか言いたそうだったが、口を挟むことなく見ている。


「そういや、なに作ってんの?」

「ここで手に入れた魔道具使って、新しい物でも作ろうかなって」

「ほうほう、例えば?」

「例えば――、」


 そうしてメリアはジンを膝の上に乗せて説明を求め、ジンは律義にそれにこたえていく。アスタルテはもう言っても無駄だと割り切ったのか、黙々と料理に没頭していた。暫くそんな光景が数十分続き、食事が出来上がり、食事がシートの上に出されていく。今回の食事は牛肉のシチュー、パン、果物が出された。


「果物が新鮮だよね。なんで?」


 メリアは不思議そうに首を傾げて、ジンを見て尋ねる。


「俺のスキルで、色んなものを時間的や空間的に隔離して保存し続けられるんだよ。っていうか、昨日説明してなかったけ?」

「え~、そういうものがあるとは説明されてたけど、固有スキルについてはちゃんと説明は受けてないよ。教えて!」


 メリアは元気よく両手を上げて、ジンのスキルについて説明を求める。アスタルテは話には加わらずシチューを食べ続けて、ジンの事を傍観しながらどうするのか興味深そうに見ている。


「俺の固有スキルは今かなりあるんだけど、さっきから使ってるのはその中のメニューってやつ。周囲の地図を視界の中に表示ができる。さっき言ったみたいに亜空間を作って物を種類分けしながら収納する事も可能。レベルアップのログを見れるし相手や自分のステータスも確認できる。画面の表示的にゲームみたいなものかな?」

「ふ~ん。便利、なのかな?」

「便利だよ。魔法をよく使うものなら、アイコンとして登録して、魔力変換させずに打ち出せる。収納の中身は自分が認識できる所ならどこへでも排出可能」

「うへぇ。チートじゃん」


 やや呆れる様に感想を言うメリア、ジンは苦笑いするだけで何も言わない。アスタルテは同意するようにうんうん、っと頷く。


「そういうお前はどんなものなんだ?」

「私の固有スキルは四つあるけど、神様からもらったのは三つだけだったよ」

「どんなのなの?」


 一応鑑定してあって、知ってはいるが本人からの意見も聞きたいので聞いてみる。


「私が協力してもらった偉人はねぇ、何と!あのトーマス=エジソンなんだよぉ~。リョウちゃんはどんな偉人だったの?」

「………、俺は船坂弘って人だったよ」


 ジンは食事を挟みながら、メリアの質問に答えていく。するとメリアは首を傾げて尋ねた。


「どんな人だったの?」

「どんな人って………、立派だったんじゃない?第二次世界大戦の戦場でどんな大怪我おっても戦い続けて、敵軍の施設を破壊なんかして相手側に打撃を与えたり、戦後も色んな所で慰霊碑を立てたりして、日本の発展にも貢献した人だよ」

「なんか、リョウちゃんに似てるね」

「そうですね」

「そうなの?」


 ジンには自分に似ていると言われても、いまいち、ピンとこない。首を捻って問いかける。


「普通は自分の死後とか知らないもんね。アルテちゃんはどう思う?」

「今の話聞く限りでは。まぁ、似ていると言えば、似ていると言えますけど、私は何も言ってませんよ。私も自分の死後は分りませんし、わざわざ言う必要もないでしょう」

「まぁ、知っても知らなくても、どっちでもいいか」

「俺はどうでもいい」

「う~ん、一応自分の事なんだから、興味位持とうよ」

「どうでもいいもんは、どうでもいいんだよ」


 ジンはぶっきらぼうにそんな事を言うが、その顔は嫌なことを忘れようとしているように見える。女性陣二人はジンからの悲しそうな雰囲気を察して、それ以上の詮索をやめた。暫くして食事が終わりそれぞれのスキルの話になった。最初にジンとアスタルテが話し、最後にメリアの番になった。


「私のスキルは、トーマス=エジソンの【発明王への道】【不断の努力】の二つと、私の前世から【精密な指先】があって、その上で今世の私に固有スキルの【自己調整】があるよ。それでそれらの能力としては——、」


 そこそこ話が長かったので要約していくとこんな感じ。


・発明王への道

 職業【発明王】になりやすくなる。INTにスキルのレベル×1000の値を加算。脳の記憶力、想像力、計算力、その他諸々の能力が向上する。工具を自由に顕現させる。材質や形自分の頭の中から無意識で判断されて最適な形で造形される。


・不断の努力

 集中状態が長時間続いても疲労がたまらなくなる。物事を続ければ続ける程、それに関係するレベル、スキル、能力値が成長し易く、発展し易くなる。


・精密な指先

 指先の繊細さが増す、同時に手、指の関節の可動域が上がる。

 

・自己調整

 体の体型、状態、代謝等を自由に操作可能。一気に全てを変化させることは出来ないが、時間を掛ければ子供から大人や、大人から子供へと体を変えることも可能。変化の幅は個人の体の資質によって左右される。


 メリアからの説明が聞き終わりジンが開口一番、こんな事を言った。


「何というか活用場所が狭いスキルたちだな」


 どちらかというと交戦よりも後方支援向き、そんな感じのスキルたちだった。何回かメリアには触れているのでジンは既に彼女のスキルはゲット出来ている。


「ま、そろそろ休もう。俺はもう眠くなってきた」


* * *


 迷宮の下層へ潜っていった、道中はゾンビに加えて、スケルトンやゴーストなんかの上位種のアンデットが出てくる。

 が、聖術が使えるジン達には特に意味はない。切り捨てながら浄化していくが、羽根つきゾンビはここまで来た冒険者が変わっていってしまったモノだからなのか、かなりの手練れだった。憐れに思うが、そんなことを敵は考慮しないのでこちらも情けを捨て、聖術を纏わせながら首を切って仕留めていく。そんなこんなで、十数時間経った頃。


「ついた……、か?」

「案内についてきた私たちにわかる訳ないじゃないですか。この先がボス部屋になっているんでしょう。この前で一回休憩して、次に備えましょう」

「おっ!やったね、やっと休憩が取れるよ」


 魑魅魍魎が闊歩する、迷宮の中だとは思えない程にのんびりとした会話がされているが、全員が近辺を油断なく索敵している。そのため迷宮の魔物が襲撃する隙はない。

 腰を落ち着け、魔道具を起動して休憩することにした。ジンはまだ余裕がありそうで、アスタルテはいつもと変わらなさそうながらも少し疲れを見せていて、メリアはオメガブラックに覆いかぶさって、ぐでぇ、っとしている。


「だらしないですよ。せめてソレを枕にして、ちゃんと横になってください、っきゃ!」

「う~、一緒に寝る~」


 アスタルテはメリアの態勢を整えて、その体に毛布を掛ける。すると、布団を掛けられたメリアは寝ぼけてアスタルテを抱き枕にして、そのまま夢の世界へ旅立っていった。抱き着かれているアスタルテは、乱暴に振りほどくわけにもいかないので、ジンに助けを求めるが。ジンは、「気にすんな」という様に見返して周囲の警戒を始める。そのまま休憩しておけという事なのだろう。


(う、裏切り者ぉ!)


 っと、アスタルテはジンを心の中で罵りながらも、サッサと就寝することに決めた。そのまま、前の休憩の時と同じように眠りについて、全員が体調を万全に整えた。


* * *


 準備万端に整えたジン達一行はボス部屋の扉に手をかけてそのまま勢いよく開ける。

そこにいたのは一匹のゾンビだった。

 髪は茶髪で長く、ボディラインは実に女性的に豊満で、皮膚はまだ今も生きているかのように瑞々(みずみず)しい。実際背中から生えている翼が無ければ、生きている人間として接していただろう。

 取りあえず罠の警戒をしつつも、剣を構えて表示を写す。


◇ ◇ ◇


アラ 種族:古代(エンシェント)戦乙女動乱死体(ヴァルキリーゾンビ) 性別:不明 年齢:不明


レベル:152

HP :5000

MP :0

STR:10000

DEF:10000

RES:5000

AGI:10000

INT:10


称号:迷宮ボス 名持ちの魔物 元人間 特殊ゾンビ 死んでしまった者 選ばれた者 槍の名手 最後の敵 迷宮との契約者 迷宮の操り人間


コモンスキル


・戦闘スキル

槍戦     (Lv4)

体戦     (Lv3)

危機感知   (Lv7)

気配感知   (Lv8)

魔法耐性   (Lv10)

聖耐性    (Lv5)

火耐性    (Lv10)

雷耐性    (Lv7)

氷耐性    (Lv5)


・魔法スキル

魔術     (Lv8)

火魔法    (Lv1)

地魔法    (Lv2)

魔力精密操作 (Lv5)

魔力感知   (Lv8)


・生活スキル

読み書き   (Lv8)

礼儀作法   (Lv8)

計算     (Lv8)

共通語    (Lv8)

鑑定     (Lv5)

鑑定遮断   (Lv7)


・創作スキル

なし


固有スキル

光進(こうしん)     (Lv10)

光撃(こうげき)     (Lv10)

光砲(こうほう)     (Lv10)

光刃(こうじん)     (Lv10)

超再生    (Lv4)


ギフト

迷宮の加護


装備

武器 :堕ちた光槍

防具 :亡者の軽鎧

装飾品:意思のイヤリング 決闘者の腕輪


◇ ◇ ◇


(だいぶ反則的なステータスだな。というかいままでにもあったけど、魔力無いのに魔法スキルがあるんだな。死んだ人間の名残、ってところか)


 一応これまでに反則的なステータスを持った者なら幾人か見てきたが、彼女はその中でも上位にいるような気がした。いや、既に性別は不明なのだから彼女かどうかは分からないが。

 スキル、能力値、レベル、全てが、この迷宮で今まで見てきたどのモノよりも強力であった。一応、二人にも表示内容を見せて置く。


「リョウ様みたいな内容ですね」

「うへぇ、リョウちゃん並みの能力値とか見た事ないよ」


 ジンは反則的な能力の事を全部自分に例えるのをやめてほしかったが、あんまり否定できないので口は噤んでおく。

 で、目の前にいる脅威に目を向ける。アラは槍を構えたままこちらを見ている。構えはパッと見て隙はない、十分に洗練されきったものであることが分かる。生気のない虚ろな瞳で、ジン達侵入者の事を見据える。

 取りあえず、前と同じようにジンが前に出る。が、突然ジンとアスタルテたちの間に半透明の膜が出来て、ジンをボス部屋に一人隔離する。


「え?」


 驚くのもつかの間、アラが踏み込んで突っ込んできた。ジンはそれをギリギリで躱して、追い打ちできた槍を剣で捌き、槍の軌道を逸らす。追撃を警戒して、上に飛び跳ねて部屋の中央に着地する。アラからの追撃はなかったが、アラはアスタルテ達は視界に入ってないのか、ジンに向き合って槍を構えている。アスタルテ達は何か叫んでいるようだが聞こえないし、膜を叩いている所を見るにそこから入ってこれないのだろう。

 ジンは取り残された状態で、一対一(サシ)で高レベルゾンビとやりあわないといけなくなってしまったのだ。


(わかりやすい程ピンチになったな)


 何の能力かは分からないが、パーティーを分断して仲間同士を手助けさせないようにして各個撃破が目的なのだろう。加えて、ゾンビの回復能力があるから、相手は連戦になっても消耗は少ない。

 取りあえず、ジンは腹をくくって、剣を構えなおしてアラに向き合う。

 するとアラが、槍を構えて突撃してくる。ジンは槍を捌いて剣で首をはねようとしたが、捌いたところで槍を首元に戻されて受け止められる。ジンの膂力を受け止めきれなかったのだろう、少し後ろに下がる。一応剣を振った時に魔法で風の刃を作って切りつけたが、相手は無傷だった。

 アラは槍を中段で構えて少し離れたところから、虚空を突くモーションを行う。嫌な予感に従って、ジンは完全に突かれる前に、全力で跳ねて上に逃げる。先ほどまでジンがいたところは図太い光の砲撃が通って、地面をえぐり飛ばして通っていく。


(どのスキルかは分からないが、多分【光砲】ってやつなんだろう。とんでもねぇ威力だし、発動速度が速い。連発できたら厄介だな)


 ジンはアラに接近されない様に、距離を取ってアサルトライフルを顕現させて構える。そのまま弾速を加速させて、鉛球をぶち込んでいく。だが、いくら景気よく風穴開けようと、それを上回る速度で再生されていく。

 銃は使えないと判断すると、投げつけて怯んだところを切りつける。アラは銃をはじいたが、ジンの剣は生身の皮膚で受ける。アラの皮膚は、聖術を纏わせて斬り付けたのにも関わらず、爛れた様子もなく平然とした様子である。斬られた傷もすぐに再生して、何事もなかったように見える。

 本来なら聖術で切られた傷は、ゾンビであってもそう簡単に再生できるものでもないが。このゾンビは、本来の苦手な属性の耐性が高いため、この速度で再生できると考えた。頼みの綱が、少し効き難くなっていることを理解して、若干渋い顔になるが次の対応を頭の中で考えていく。


(聖術が効かない。なら燃やすか、さらに密度を上げるかだけど。燃やす方は火耐性もついてるから難しい。纏わす聖術の密度を上げて斬り付ける)


 ジンはそう決めると魔力を聖属性に変換。ゾンビを浄化する為の聖術の効果範囲を縮小、

 そのまま勢いよく切り掛かっていく。アラも負けじとジンを間合いに入れまいと、槍を振って応戦する。ジンは槍の間合いのうちに入ろうとするが槍を振られて阻まれる、転移を使って入り込もうにも、なぜかアラの四メートル内では転移が使えない、一旦距離を取って魔法を撃とうにも、すぐに詰められ結局は自力で応戦するしかない。したがって、自分の力でアラの間合いに入らないと勝機はなかった。

 数回打ち合うが、アラの能力とジンの能力はほぼ互角だった。が、決着の時は来た。

 アラの槍が突然発光する。ジンの目が多少くらんだが、勘でバックステップを取って後ろに下がり、すぐに視界は正常な機能を取り戻す。アラの槍が放つ光は段々と集まって、刃の形を形成していく。ジンも黙って見続けているわけでは無く、数発風の弾丸を作って相手に叩き込むが、形成中でも動けるのか、槍で捌かれはじき落される。

 そうして作り終わった光刃をジンに向け、そのまま突きを放つ。間合いの外だというのに光刃が伸びてジンに襲い掛かる。ジンは剣で防御ではなく、回避を選んで迫ってきた光刃を躱す。

が、この判断はよくなかったのだろう。

 躱し切ったジンはそのまま突きを放ち切って硬直しているアラに向かうが、光刃は突然形を変えてジンの脇腹に刺さって、そのまま壁までジンを吹き飛ばす。


「がはぁっ!」


 ジンの体からは、血が漏れて、内臓も露出していた。ジンは聖術ですぐに傷を塞ごうとする。それを許さんとばかりに、アラは直径二十センチくらいの光球を自分の周りに出して、ジンへ打ち出し、治療を止める。ジンは治療が止まった瞬間に痛みで意識が飛んでしまいガックリっと、項垂れてしまう。

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