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勇者の守護者〜誰かのために出来る事〜  作者: Dr.醤油煎餅
第二章 守護者達の旅行記
18/151

14話:迷宮『天使の忌み地』

 ジンとアスタルテは、日課を終わらせ、朝一で、迷宮『天使の忌み地』へと来ていた。

 迷宮入り口の外観は、ギリシャのパルテノン神殿の建物を崖の中に埋め込んだようになっている。周りには、多くの露店が並んでいて、ここで最終準備をするのだろう。


「よう、兄ちゃん!そんな装備で大丈夫か!」

「いらっしゃい!ここの傷薬は他よりも安いよ!」

「道標に、マッピング道具、今ならなんと、合わせてなんと大銀貨一枚!」


 それらの声を、全て無視して迷宮の入り口に向かう。入口にはまだ朝も早いという事もあって、まだ入り口前にいる人間は少ない。それでも前に立っているもの達は、歴戦の戦士の様な雰囲気があった。ここら辺の、人間たちは、見た目で判断することなく、ジンの強さを見抜き観察するような目線を向けている。

 そういう目線を、全部無視して入り口から中に入っていく。


*  *  *


 迷宮の中は、意外に整備されていた。レンガ造りの廊下になっていて、地下への入り口になっているのだろう階段があった。そこを下りてみると、似たような廊下に出てきた。足を踏み入れたと同時に酷い悪臭が鼻の中を駆け巡り、ジンは思わず顔を顰める。

 この迷宮の構造は、一階層毎に一辺二~三キロメートル、高さ四メートルの直方体の構造をしている。それが地下30階まで、作られている。内部は立体迷路のような構造をしていて、様々な箇所に罠、伏兵がいる。それよりも気になった事は、各階層の入り口に転移結晶というものがある。転移結晶は、触れて魔力を流すと迷宮の入り口にある帰還魔法陣へ送られるものである。なぜこんなものがあるのか分からなかった。

 木原は地下十階層に住んでいるらしく。その階層の端の壁をぶち抜いて、大規模な地下施設を作っていた。何をやっているのかは不明だが、そこまで向かわないといけない。

 まぁ、それはさておき、中は照明がないのに、そこそこ明るい。なので、ランタンを付けずにそのまま歩いていく。通路の幅は三メートルあり、剣を抜いても大丈夫そうなほど広かった。ジンたちはそのまま、武器を納めたまま、進んでいく。

 数分すると——、


「ウバァ、……アア、アア」


 うめき声と共に、何かを引き摺っているような、音が聞こえてきた。二人は同時に立ち止まり、武器を抜く。曲がり角から現れたのは、顔面や、体のいたるところが腐った、羽の生えた男のゾンビだった。

 ゾンビは二人を見つけるなり、悪臭を漂わせながら勢いよく襲い掛かっていた。


「臭い」


 ジンはそう言って、ゾンビへ逆袈裟切りで切りつける。腐った肉は柔らかく、簡単に切り捨てることが出来た。変な液体が、周りに飛び散ったが、二人は微風の壁で防ぐ。


「切り捨てるのは、服が汚れそうです」


 そんな呑気な事を言いながら歩み始めるが。今度は二人共、徐々にスピードを上げ始め、次第に走り始めていく。


「これから、どうしますか?」

「宝箱とか探してもいいけど、地下十階より上だとそんなに良い物は入ってないだろうし、無視でいいだろ。取りあえず、木原に会うまで地下への入り口を向かうのをメインに攻略を進めよう。三か月分の食料は買い込んでおいたから、探索は長期間続けることになるけど、覚悟はいい?」

「大丈夫ですよ」


 ジンはアスタルテに尋ねると、彼女は余裕をもって頷いた。ジンはそのまま、彼女の先頭に立って案内していく。道中、羽根つきゾンビと化した、人間、犬、ゴブリンなんかの魔物等、強いという訳ではないが、数が多いので鬱陶しい。新人たちだと、この数に押されてやられてしまうのだと思った。だが、よく見れば隙が多い。統率が取れて、この数が襲い掛かってきたら脅威になるかもしれないが、理性もなくただ突っ込んでくるだけなら脅威にはならない。

 そうして、地下十階にたどり着き、その端へ来た。目の前には、無理矢理に壁に穴があけられていた。


「木原がやったのかね?」

「違うと、思いたいですね」


 自信なさげに、アスタルテは返事をする。木原なら、やりかねないと思ったからだ。

 だが、ここを進まないと、木原に会えない。二人は、覚悟を決めて入ることにした。その先へ、一歩足を進めてみる、瞬間、


「っ!」


 矢が数十本飛んで、ジンとアスタルテは、何とか避けるが、数本の矢が二人の傍を通って、後ろの壁に突き刺さる。


「殺しに来てんのかね?」

「その通りだと、思いますよ。っと、お出迎えが、いらっしゃいましたよ」


 そう言って、アスタルテは足のレッグポーチから、黒鉄のナイフを二本抜いて両手に持って構える。

 出てきたのは、羽がついていたゾンビの軍勢なのは変わらないが、様子が違った。体中がツギハギで、無理矢理繋ぎ合わされたのが見てわかる。体中がボロボロのゾンビだが、ゾンビの武器は良質で、奪ってもよさそうだが、匂いがついていてあまり装備する気にはならない。ジンはアスタルテの前についてそのまま、切り込んでいく。が、少し違和感を、感じて、アスタルテを敵の後ろに、控えさえて、自身は突撃を取りやめて後ろに下がって、警戒して観察を始める。すると、アスタルテには気付いていないみたいだが、ジンの方を見て横に立ち並んで先頭に立っていたゾンビ達は、槍を構えてそのまま、突っ込んでくる。

 ジンは、突き出された槍を捌いて、ゾンビを自身の後ろへ突っ込ませる。そのまま、前方を向いたままの後ろに突撃していったゾンビを、横に一閃して全員切り捨てる。ジンは、突撃しなかったゾンビたちに向けて駆け込むが、一体の強そうな、ゾンビが前に出てきて、ジンの剣を受け止める。そのゾンビは、周りのゾンビよりも一回り大きく、生前は名のある武人だったのだろうと、推察する。それでも、背中に羽がついてる姿が、少し間抜けな姿に見えるが、それでも脅威には違いない。一応気になったので、表示を出しておいての相手を鑑定してみる。


◇  ◇  ◇


**** 種族:隊長ゾンビ 性別:不明 年齢:不明


レベル:50

HP :1000

MP :0

STR:1000

DEF:1000

RES:1000

AGI:1000

INT:0


称号:ゾンビの隊長 作られた者 操り人形


コモンスキル

戦闘スキル

剣術     (Lv8)


魔法スキル

なし


生活スキル

なし


生産スキル

なし


固有スキル

再生     (Lv4)


・装備

武器 :鋼鉄の剣

防具 :鋼鉄の胸当て

装飾品:なし


◇  ◇  ◇


(他のゾンビとは、少し違うな。よく見ると、体がツギハギで色んなものが縫い合わされているような感じがする。それに、操り人形ってことは、操っている奴がいるって事か)


 ジンは、鍔迫り合いを続けるが、左右から二体のゾンビが切り掛かってくることを察知して、切り払って後ろへバックステップを踏む。次の瞬間、ジンがいた位置へ、予想通りゾンビ二体が横から、襲い掛かっていく


(やっぱり妙だ。聖術纏わせて切り捨てれば、動かなくなるのは変わらないが、連携して動くようになっている。……ならこうだ)


 そう思って、アスタルテにハンドサインで、指示を出し、彼女はそれに頷く。ジンは、風魔法を使って、通路の中心に小型の竜巻を発生させる。竜巻は、周りいたゾンビたちを、無差別に自身へと引き込み始める。普通のゾンビはそのまま吸い込まれていき、無残にもズタズタに切り裂かれていくが、隊長ゾンビとその取り巻きともいえる大柄なゾンビは、吸い込まれる仲間を見送り、数体で一体のゾンビを囲い、ジンの動きを観察するが、


「グウゥガ?」


 いきなり、守っていたはずのゾンビの、頭と首が離れる。その光景に、何の反応も示さなかったゾンビたちだが、いきなり発狂し始めたのか、奇声を上げてそれぞれが好き勝手に暴れ始めた。


「ギャギャギャギャ」

「グギャ、グゥ、グゥ、グゥ」

「ベェ、ベェ、ビャ、ビャ」


 近くにいたアスタルテは、天井に張り付いてから、そこを蹴ってジンの後ろに飛び込む。

 ジンの方は、アスタルテを背にやって、後方を警戒させて、自分は発狂し始めたゾンビに向かって、火魔法を撃つ。ジンが手を翳すと、掌から淡い光と共に、直径五十センチの火の玉が三つ飛び出し、ゾンビ達に着弾する。ゾンビの体は、すぐさま燃え広がり全てが黒焦げになって、動かなくなる。


「死んだのかな?」

「もともと死んでますよ」

「じゃあ、動かなくなった、って言った方が正確か。まぁいい、今は先に進むことだけを考えよう。今みたいに隊列組んで、やってくる可能性があるから、その時は臨機応変に対応するで」

「かしこまりました」


 ジンとアスタルテだが、入った時とは打って変わって全力で走り始めた。罠も警戒しているが、魔力に反応して発動してくるモノだったので、ゾンビを掴んで、魔力を流して、投げ飛ばし、代わりに引っ掛ける、という作業を繰り返し行うと、ボス部屋のようなところに来た。そこには、100人位は入れそうな大部屋に2体の隊長ゾンビと、一体の隊長ゾンビよりもさらに一回り大きな個体が、その奥にある巨大な鋼鉄の扉を守るように立ちふさがっていた。


(見てみるか)


そう言って、巨大なゾンビの表示を出す。


◇  ◇  ◇


モンヘイ 種族:将軍ゾンビ 性別:不明 年齢:不明


レベル:100

HP :2000

MP :0

STR:2000

DEF:2000

RES:2000

AGI:2000

INT:0


称号:ゾンビの将軍 作られた者 操り人形 守る者 指揮官ゾンビ 


コモンスキル

・戦闘スキル

剣闘     (Lv5)

斬撃耐性   (Lv3)

衝撃耐性   (Lv3)


・魔法スキル

なし


・生活スキル

なし


・生産スキル

なし


固有スキル

再生     (Lv5)


・装備

武器 :金剛鉄の剣

防具 :金剛鉄の鎧

装飾品:防御の首輪


◇  ◇  ◇


(安直な。なんというか、妙にきっちりとした能力値だな。作られた者っていうからには、分かりやすくするために、こんな感じになっているのか?)


 考えても答えは出ないし、相手の方は剣を抜いてやる気満々だった。

 ジンは溜息をついて、剣を引き抜いて前に出る。アスタルテは、気配を消してゾンビとジンから少し離れる。

 隣にいた隊長ゾンビが、突撃してくる。体が腐っているが、そんなことを思わせないほどに、機敏な動きで、ジンに近づいてくる。隊長ゾンビも、レベル1だが剣闘なので、ちゃんと基本に即した動き方だった。剣闘は剣術が進化したスキルである、まだ進化の余地は残してはいるが

 それを捌くが、体格とリーチが違う、それが二人に増えているのだ、ゾンビを操っている指揮官ゾンビは奥にいる将軍ゾンビなので、先にこの二体を倒さないといけないのは変わりない。ジンは上げていた身体強化をさらに引き上げる。一段、速くなってきた剣速に、ゾンビ達はかろうじてついていこうとする。だが、速度が桁違いだった。ゾンビが剣を一振りするたびに、ジンは剣を五回振り終える。その剣速の違いによって段々と、隊長ゾンビは体を切り刻まれていく。ゾンビが、三回剣を振り終えたところで、“再生”が追い付かなくなるほど、体がバラバラになる。まだ、再生しようとするが首を、聖術を纏わせて切り飛ばすと完全に動かなくなる。

 そのまま、ジンは後ろで佇んでいた将軍ゾンビに目を向ける。視線を向けられた将軍ゾンビは、剣を片手に持ち、剣を持たない方の手をジンの方へ向ける。その瞬間、薄暗い粒子が掌から溢れたかと思うと、前方をえぐり取るかのような激しい竜巻が襲ってきた。ジンは驚くが、それで硬直したりせず、余裕をもって横に飛ぶ。

 が、それを追いかける様に、将軍ゾンビが掌の向きを変えると、それに従う様に竜巻も横にある物を薙ぎ払っていく。したがって、ジンもそのまま横に走って、逃げ続けなければいけない。だが、数秒立ったところでジンは向き直り、掌ではなく、剣を迫ってくる将軍に向けた。魔力が見えるものからすれば、今のジンの剣には大量の魔力が込められていて、ジンがそれを、照準を付けるように構えて、一気に突き出す。

 次の瞬間、将軍ゾンビが放っているような竜巻と同等くらいの規模の竜巻がジンの剣からも放たれる。そのまま、将軍ゾンビがジンの方を向いて真正面から竜巻同士がぶつかり合う。両者の竜巻は拮抗しあいこのままでは魔力切れを起こして、どちらかが倒れるかと思いきやーー、


「バハァ?」


 将軍ゾンビの首に、ナイフが突き刺さる。その衝撃で、将軍ゾンビの竜巻が消え、それに合わせる様にジンも竜巻を消し、そのまま走り、下段に構えて切り掛かっていく。首にナイフを刺したアスタルテに気付いて、無造作に彼女の左腕を掴む。アスタルテは焦らず、左足の靴に仕込んだナイフ起動させて、蹴り上げ、将軍ゾンビの腕を切り離す。そのまま、突っ込んできたジンが聖術を纏わせて首を切る。それで、決着がつき将軍ゾンビは膝をついてそのまま倒れ込む。


「終わったな」

「そうですね」


 魔力がなかったのにもかかわらず、魔法のような事象を打ち出したことの答えをこの先にある人物は知っているはずであり、それを調べるためにもジン達は鋼鉄の大きな扉に手をかける。


*  *  *


 時間は少し戻って、迷宮『天使の忌み地』の10階層にある、住人の私室。ジン達が壊されていた穴から中に侵入したころ。


(ヤ、ヤバイ)


 迷宮『天使の忌み地』の住人は、焦っていた。

 自分の住処に入ってくる人間は、かなり前から例外なく返り討ちにして仕留めるか、逃げられるかのどっちかだった。だが、今回は違ってどんどん進撃してくる。仕掛けた罠も、魔力に反応して作動することが見抜かれたのか、ゾンビに魔力を纏わせて罠の身代わりにし始めている、指揮官を中心にして周りのゾンビを操っているのもばれたのか、重点的に指揮官ゾンビを狙い始める。なので、防衛に回していたゾンビを一か所に集めて、迎え撃とうとするが。


「な、何それ!!」


 住人は目を疑った、少年の剣が振り払われたと思ったら、前方で構えさせていた部隊が一気に薙ぎ払われて、ゾンビ達が壁にぶつかって、トマトのようにつぶれる。


「理不尽すぎるでしょ! 隊長じゃないんだから、そんなチートな性能で攻めてこないでよ!」


 住人はヒステリックに叫ぶ。だが、状況は変わらないどころか、むしろ悪化の一途をたどる。迎撃のためにゾンビを集中して集めていたが、それが仇となる。その場のゾンビを鬱陶しく思ったのか、彼らは魔法で竜巻を発生させ、まるで紙をシュレッダーにかける様に、ゾンビを切り裂き続けていく。しかも普通の剣なら切られたところで再生し、すぐに再戦できるが、少年の剣に何かあるのか、首を切られてすべてのゾンビの動きが止まる。


「嘘でしょ!」


 飛び散るゾンビの残骸をものともせずに、そのまま直進して一直線に自分の居住区に向かってくる。


「えっ!まさか、ここの事とかバレてんの!」


 まずい、非常にまずい、この少年たちの異常な戦闘能力もそうだが。自分の居所がわかっている事に。自分と、自分の生みの親が此処でやってきたことを考えると、外に連れだされると、状況はよくわからないが、日本の常識で照らし合わせれば、死刑になってもおかしくはないだろう。そんなのは絶対に嫌だった。まだ生きていたい、と、とてもではないが、言えた口じゃないが。まだ、まだ、目的は、達成できていないのだ、こんなところで死ぬのはごめんだった。だから、門の前に立たせた、師の傑作たちに、頑張ってもらうしかない。気合を入れて、ゾンビを起動させる。

 相手が、扉前の部屋に入ってきた。侵入者の容姿をよく見てみると、まだ、いやかなり若い、日本で言えばまだ小学生くらいの年齢であるように思える。二人の容姿は、まだ可愛らしい感じだが、凛とした感じで、容姿はかなり整ってる。敵になっていなければ、色々としている所だが、今は最大レベルの脅威。かなり気合を入れて、対処していくことに決めた。

 侵入者たちは先程までと、同じように少年が先頭に立ち少女を後ろに下がらせる。そのまま剣を引き抜いて、隊長で挟み込み少年に切りかかる、剣術のレベルは剣闘のレベル1だが、それを二体挟み込むように切り掛からせている。先ほどまでのゾンビ大襲撃での戦い方で、彼らの身体能力はおおよそ把握できている。ゾンビの身体能力を底上げし始め、彼らの身体能力を超えた動きをさせるが――、


「は?え?捌ききってる?」


 住人は武道の試合を見たことがあるだけで、それの良しあしは分らないが、ゾンビの攻撃はすべて捌いて、受け流している。そして暫くすると、少年の身体能力が上がる。その速度が、ゾンビと住人の反応速度を超える。ゾンビを操る速度が、少年の剣を振る速度に付いて行かない。段々と押されはじめ、ついには体をバラバラにされて、首を切られ、ゾンビの操作もできなくなる。


「いやいやいや、おかしいでしょ」


 少年の異常すぎる身体能力に、驚愕し、言葉を失う。身体能力のギアが桁違いだった、多分将軍ゾンビの身体能力を確実に超えている。だがそれでもゾンビの操作を続けて、将軍ゾンビに相手をさせる。だが、初見殺しの必殺技をくらわせようと発動させるが、簡単に躱される。だが、諦めず方向を変えて向かわせ巻き込もうとする。それに対抗手段はないのか、少年が室内を逃げ始める。


「やった!逃げ始めてる!」


 始めて少年に有効な対抗策が打てて、住人は歓喜する。

 だが、少年が向き直り。持っていた剣の切っ先を向けると、そこから将軍ゾンビに向かって強力な竜巻が繰り出される。このままでは、巻き込まれて将軍ゾンビも戦闘不能になりかねない。圧倒的な差だと思うが、真っ向から対決させる。何とか拮抗させるが、それでも分が悪い。かなりの出力で、断続的に放出される竜巻に押され気味であった。


「なっ!」


 すっかり忘れていた少女が将軍の後ろにいた、それだけでもなくその首にナイフがつきたてられている。その反動で、将軍ゾンビから発動させていた竜巻が消え去る。だけど、少年も竜巻を消し、剣を下げて、そのまま直進していく。住人はまだ動ける将軍ゾンビを操って少女の腕を掴んで、その体を盾にしようとする。だが、その考えを否定されるかのように、靴に仕込まれていた刃が少女を掴んでいた将軍ゾンビの腕を切り取る。何とか態勢を整えようと、後ろへ下がらせようとすると、いつの間にか接近してきた少年に頭を斬られて、将軍ゾンビも動かなくなる。


「嘘………、でしょ。あり得ないわよ、こんなの。………っ!」


 師が作り、自分が改良を加えた傑作がいとも簡単に片付けられて、呆然とする住人。だが、その目は諦めず、次の策を発動させるために手と頭を動かした。そして、自分が一から作った最高傑作を始動させることに決めた。


「まだ、制御がきちんとできるかは分かんないけど。その実力、試させてもらうわよ」


 不敵に笑い、自分の後ろにある液体の入った、三メートルくらいのカプセルの中身を見やって、レバーを下ろし、術を発動させて中身を始動させた。


*  *  *


 ジンが鉄の大扉に手をかけると、中から衝撃音みたいのが聞こえてきた。ドォン、ドォンと扉を向こうから強引に抉じ開けようとするような音が聞こえ、慌ててアスタルテと共に後ろに下がる。

 直後――、


ドォォン!!


 鉄の扉が吹き飛び、ジンの方へ向かってくる。が、片手で払って、横へ飛ばす。

 二人は、油断なく前方を睨み付け、構える。

 扉があった先の所には、身長が二メートル以上はあるような、黒いウェットスーツを全身に来ているような見た目の、体のいたるところを機械に改造されている、ヒト型の怪物が出てきた。

 それは、全身が濡れているのもあるが肌や表面が、やけにツルンとしていて、口は引き裂いたかのように歯茎がむき出しの笑顔を浮かべている。四肢に、銃器のようなものや、刃が取り付けられていて、背中には酸素ボンベのような物を背負っている。目のようなところは見えないが、目のある所を、望遠鏡のような物を取り付けられている個体もいる。


(何だ、こいつら?)


 明らかに、強力な個体が現れて、少し驚くが。立ち直りも早く、すぐさま相手の情報を覗き見た。


◇  ◇  ◇


ブラック01-01 種族:改造ゾンビ 性別:不明 年齢:不明


レベル:120

HP :5000

MP :0

STR:12000

DEF:12000

RES:5000

AGI:12000

INT:0


称号:作られた者 改造された者 操り人形 近接戦闘型


コモンスキル

・戦闘スキル

剣闘     (Lv8)

拳闘     (Lv8)

立体機動   (Lv5)

空中歩行   (Lv5)

気配感知   (Lv5)

斬撃耐性   (Lv5)

衝撃耐性   (Lv5)

魔法耐性   (Lv5)


・魔法スキル

魔力浸透   (Lv5)


・生活スキル

鑑定遮断   (Lv5)


・生産スキル

なし


・固有スキル

再生     (Lv8)


・装備

武器 :魔導機械戦闘系攻式壱型

防具 :魔導機械戦闘系守式壱型

装飾品:魔導機械戦闘系補助式壱型 魔力タンク


◇  ◇  ◇


ブラック02-01 種族:改造ゾンビ 性別:不明 年齢:不明


レベル:120

HP :5000

MP :0

STR:12000

DEF:12000

RES:5000

AGI:12000

INT:0


称号:作られた者 改造された者 操り人形 遠距離戦闘型


コモンスキル

・戦闘スキル

射撃     (Lv8)

照準補正   (Lv8)

斬撃耐性   (Lv5)

衝撃耐性   (Lv5)

魔法耐性   (Lv5)


・魔法スキル

魔力調和   (Lv5)

魔力浸透   (Lv5)


・生活スキル

鑑定遮断   (Lv5)


・生産スキル

なし


・固有スキル

再生     (Lv8)


・装備

武器:魔導機械戦闘系攻式弐型

防具:魔導機械戦闘系守式弐型

アクセサリ:魔導機械戦闘系補助式弐型 魔力タンク


◇  ◇  ◇


ブラック03-01 種族:改造ゾンビ 性別:不明 年齢:不明


レベル:120

HP :5000

MP :0

STR:12000

DEF:12000

RES:5000

AGI:12000

INT:0


称号:作られた者 改造された者 操り人形 援護補助型


コモンスキル

・戦闘スキル

拳闘     (Lv5)

射撃     (Lv5)

斬撃耐性   (Lv5)

衝撃耐性   (Lv5)

魔法耐性   (Lv5)


・魔法スキル

魔力調和   (Lv5)

魔力浸透   (Lv5)

魔力拡散   (Lv5)


・生活スキル

鑑定遮断   (Lv5)


・生産スキル

なし


・固有スキル

再生     (Lv8)

結合     (Lv2)


・装備

武器:魔導機械戦闘系攻式参型

防具:魔導機械戦闘系守式参型

アクセサリ:魔導機械戦闘系補助式参型 魔力タンク


◇  ◇  ◇


(改造、か)


 元は、普通の生物の死体だったのだろう。だが、実験や改造の果てに、何とも、分からない生物に、成り果ててしまった。

 だが、別に改造した奴を怒る気にはならない。そいつはそいつで事情があったのだろう。だが、そんな事情など、ジンにとってはどうでもいい。自分の行く手を阻むなら、何であろうと切り伏せていくだけである。


 出てきた数は、六体。近接三体に、遠距離一体、そして補助が二体だ。

 有利に事を進めたいから、先ずは補助タイプを狙いたいところだが、近接タイプが壁を作って、それを妨害している。さっきまでと違って、布陣も実力も桁が違う。本当に奥の手として、出してきたのだろう。

 警戒しながらも、アスタルテの念話で会話をはじめ、作戦を決める。

 今回は定石から外れて、アスタルテを先頭に立たせ、ジンは銃を顕現させて構える。

 アスタルテは、風魔法を使ってホバークラフトの様に自身の体を浮かして、追い風を出し、高速で改造ゾンビに突っ込んでいく。

 だが、近接用の改造ゾンビはすぐに彼女の動きを察知して、右手にある籠手と一体化した剣でガードする。だが、アスタルテはそのまま近接型の一体に連撃をくらわしていく。懐に入られて、改造ゾンビは防戦一方になっている。他の近接タイプも、戦闘に加わる。だが、アスタルテも負けていない、ゾンビの技量を超えて、ナイフを振って捌いていく。三対一だというのに、全く引けを取らない。遠距離型もアスタルテを狙っていくが、近接型にかぶっているので、狙いが付けられない。なので、後方に下がっていたジンに左手の銃器を向けて、照準を合わせる。そのまま魔力を注入して、光弾を作成して、ジンに向けてそのまま解き放つ。

 ジンは、その場を動かない。アスタルテも一瞥もせずに三体の近接型を対処し続けている。

 ジンに接近してきた光弾は、直線的に迫ってきた。ジンはギリギリまで引き付けてから、躱す。そのまま、近接型を無視して、遠距離型の方へ突っ込んでいく。

 近接型はすぐに後方のカバーへまわろうとしたが、アスタルテがそれを許さない。結局、足止めを喰らっている。

 接近していくジンに、補助型が遠距離型の護衛に入る。補助型は無手のまま遠距離型の前に出る、ジンは銃を構えて銃弾を放った。その銃弾は補助型の拳を吹き飛ばし、後ろにあった壁に打ち込まれその壁に亀裂が入る。後ろにいた補助型と、遠距離型は巻き込まれずに済んだが、守る壁はあと一つ。相手の事を考えれば、戦力が不足している事は確定的だった。

 すると、ジンの前方の二体の改造ゾンビは遠距離型の背に補助型が手を突っ込みはじめ、吹き飛ばされた補助型が近接型の方へ行き三体の背中に両手と頭を突っ込み、それぞれが黒い液体が纏わり付くように、補助型が溶け出し、他の個体を飲み込み始める。アスタルテとジンは、その場から離れ、部屋の出入り口へ下がる。


 改造ゾンビは、グチャ、グチャ、と音を立てて、変形していき、黒く、丸い、二つの球体へと変形していく。一応、聖術を纏わせて切りつけてみるも、あまり効果はなかった。

 やがて音が止むと、二体の内一体から、腕が四本、足が二本、分化して、それぞれの腕には砲身のような武器が取り付けられていた。

 もう一体からは、顔が三つに分かれ、腕が六本生え、足はあるが、その足先は両方とも剣に置き換わっていた。腕の六本の内上段二本は剣を握って、中段二本は無手で、下段の二本は剣が取り付けられていた。その姿は歪み、狂った、黒い阿修羅像のようになっていた。


(どうしたものか?)


 明らかに強力にパワーアップした姿に、若干顔が引き攣るが、油断なく相手の情報を盗み見る。


◇  ◇  ◇


オメガブラック 種族:改造ゾンビ 性別:不明 年齢:不明


レベル:130

HP :7000

MP :0

STR:15000

DEF:12000

RES:10000

AGI:12000

INT:0


称号:改造された者 融合した者 操り人形 歪んだ阿修羅


コモンスキル

・戦闘スキル

剣闘     (Lv8)

拳闘     (Lv8)

立体機動   (Lv5)

空中歩行   (Lv5)

気配感知   (Lv5)

斬撃耐性   (Lv5)

衝撃耐性   (Lv5)

魔法耐性   (Lv5)


・魔法スキル

魔力調和   (Lv5)

魔力浸透   (Lv5)

魔力拡散   (Lv5)


・生活スキル

鑑定遮断   (Lv5)


・生産スキル

なし


固有スキル

再生     (Lv8)


・装備

武器 :魔導機械戦闘系攻式壱型×3 魔導機械戦闘系攻式参型

防具 :魔導機械戦闘系守式壱型×3 魔導機械戦闘系守式参型

装飾品:魔導機械戦闘系補助式壱型×3 魔導機械戦闘系補助式参型 魔力タンク×4


◇  ◇  ◇


アルファブラック 種族:改造ゾンビ 性別:不明 年齢:不明


レベル:125

HP :5000

MP :0

STR:12000

DEF:12000

RES:5000

AGI:12000

INT:0


称号:改造された者 融合した者 操り人形 


コモンスキル

・戦闘スキル

射撃     (Lv8)

照準補正   (Lv5)

砲撃     (Lv2)

魔法耐性   (Lv7)


・魔法スキル

魔力調和   (Lv5)

魔力浸透   (Lv5)

魔力拡散   (Lv5)


・生活スキル

鑑定遮断   (Lv5)


・生産スキル

なし


固有スキル

再生     (Lv8)


・装備

武器 :魔導機械戦闘系攻式弐型 魔導機械戦闘系攻式参型

防具 :魔導機械戦闘系守式弐型 魔導機械戦闘系守式参型

装飾品:魔導機械戦闘系補助式弐型 魔導機械戦闘系補助式参型 魔力タンク×2


◇  ◇  ◇


 明らかにさっきの奴らとは違う。個体数を減らして、一体、一体の能力を底上げしてきたという事は操作能力を向上させて、戦いに集中するためであろう。

 取りあえず、隣で油断なくナイフを構えて、改造ゾンビを睨み付けるアスタルテに、奴らのステータスを確認させる。


「どうしますか?」


 ステータスを見て、最初に出てきた言葉がこれだった。流石に、丸投げに近い形で言葉が飛んできて、どうしようか悩む。


「まともに、相手するのはダメだと思う。あんまり、使いたくない手だけど、ここは一気に片を付けよう」

「分かりました。作戦は、どうします?」


 そこからは念話で会話して、作戦を決める。


*  *  *


 先ず、アスタルテが動き出す。彼女の周りに白い霧が発生し、ジンもろともその姿を飲み込んでいく。霧が消えた時には、二人の姿は見えなかった。

 だが、オメガブラックはその行き先を察知しているかのように、左の顔が、二人の背にあった出口とは見当違いの方へ向く。その左の顔の向く方へ従って、本体の体が動き出す。

 二人の姿は見えないが、オメガブラックの足取りに迷いはない。アルファブラックもその後に続く。室内を縦横無尽に飛び回り、走り回る。大体の位置関係がわかりにくくなってきたところで、左の顔が部屋の出口へ顔を向ける。そのまま体も引っ張られるように体が方向転換を開始して、見えなくなっているはずのジン達を追いかけて廊下へ飛び出す。そのまま追いかけていくように走るが、数メートル進んだところで二体のゾンビの動きがピタリと止まる。

 二体の前方には、喉に黒い剣、目の前に黒いナイフが添えられている自分たちの主の姿。


「手間かけさすなよ」

「これ以上、話し合いをする気がないのなら、その命を終わらして差し上げましょう」


 二人は冷たい声色で、武器を突き付けながら戦いを止めるように要求する。


「ま、参りましたぁ~。もう、何もしないので、命だけは勘弁して下さい~」


 二人の冷めた視線の先には情けない声を上げながら、両手を小さく上げた、十代後半の見た目の少女がいた。

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