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勇者の守護者〜誰かのために出来る事〜  作者: Dr.醤油煎餅
第五章 恩師救出と教え子の旅路
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84話:勇者の旅道中(その1)

暫く、守護者達は出てきません

 祈は現在、望の背中に乗りながら移動している。一気に大量の魔力を使用したため、消耗しているのだ。魔力を使うのにも体力を消費する為、一度に大量に魔力を消費してしまうと体が疲れてしまうのだ。

 今現在、彼女たちは身体強化を施した優夢がラティーナを、願がヘレンを、望が祈を腕に、アンジェリカを背中に乗せて全員で皇国の西端の関所に向かっているだが、そんな1日でつくはずもないので間に都市によってそこで宿を取る予定である。しかし、今は夜中でもう直ぐ朝日が昇る。街に寄るのも朝が開けて夕方の方が旅人に紛れやすいだろうとの事で適当に休める場所も探している。


「あそこがいいですかね。止まって下さい」


 取りあえず、全員に望が止まるように指示を出す。祈は少し休めたのか休息地につくと望の腕から出て体をほぐす。


「うーん、やっと気を抜ける」


 ここは森の中の小川が流れている場所だ。周りには野生動物がいる形跡もないので、ここには暫く何も来ないと感じた。大体あと二時間ぐらいで夜明けになりそうだから、少しだけここで頭と体を休めることにした。


「一先ず、夜が明けるまではここで休みましょう。魔物避けと獣避けも撒きます」


 望は全員にそう呼びかけると腰のベルトに付けていた二種の小さい球を地面に投げつける。そこから煙が立ち込め直ぐに消える。

 そこから簡易テントを組み立てて全員で夜が明けるまで雑魚寝した。

 日が昇り始めると、全員が外に出る。ヘレンに水属性の魔法で水を出してもらい顔を洗って、今度は祈が望から離れて街を目指して移動を開始する。

 1時間は移動して森林を越えると遠目に街が見える街道についた。そこからは全員が地に降りて街を目指す。街の門にまで付くと、門番に呼び止められる。


「ああー、君達、少しいいかい?」

「はい、何でしょう」


 一番年上の望が他人と応対することは出発前に決めていた事だ。望はよどみなく応対する。


「実は検問をしていてね。すまないが、全員フードを取って顔を見せて貰えるかい?」

「構いませんよ」


 望は全員にフードを取るように手で合図する。全員がそれに従ってフードを取る。全員の整った容姿を見て兵士はたじろぐ。


「なんか、綺麗な奴が多いな」

「ええ、なので元に戻しても?」

「ああ、大丈夫だぞ」


 兵士にそう言われると、全員がフードを元に戻す。短い時間であっても煌びやかな美貌は周りの人間を魅了していた。トラブルが増えそうだと望は内心ため息をつく。


「何かあったのですか?」

「さぁ? 俺らもお上に言われただけだしな」

「そうですか。では、街中に入りますね」

「おう」


 検問の理由は教えてもらえなかったが望達は検問の理由を正確に予想できた。

 それはさておき、街の中に入り宿を取って今日はこの街で旅の準備を整えることにするようだった。宿にラティーナとアンジェリカを残し、5人は願、祈、望の3人と、優夢、ヘレンの2人に分かれてそれぞれ3人組は食料、2人組は衣料品とその他武装品を調達しに行った。

 三人組の方は市場を回って保存食を中心に買いまわっている。


「塩気が多いのがイマイチなんだよね」

「仕方ないよ。そういうモノだし、日本みたいに科学技術がある訳じゃないし。むしろ、ほぼゼロからここまで成し遂げられたあの人は天才的だと思うよ」

「そうだね。姉さんは不満じゃなくてアイデアを言うと良いよ」


 不満を言う祈を願が窘める。彼女たちは氷魔法を使える願がいるので他の人よりも生鮮食品を多く買い込める。


「さーてと、食材はもう少しかな。あとは、主食を買い込めば完了かな?」

「うん、乾パンに乾燥パスタ、小麦、大麦」

「重さは全部で五キロずつにしよう」

「遠出の準備は大変だ」


 苦笑いしながら祈は願に冷やしてもらってから自身の影の中に食料を詰め込む。


*  *  *


 一方、ヘレンと優夢の二人は道具や衣料品、医療品を買い込んでいく。


「目立たない方がいいんですが、やっぱりオシャレとかしたくなりますよね」

「分かる。けど、見つかってジンに迷惑かける訳にもいかないし、地味目のを選びましょ、後で裏地に目印でも縫いましょう」

「道中は野宿とかあるんでしょうか?」

「うーん、移動速度とルート取りによるかな。行き当たりばったりじゃなければ、一日ごとに街に泊まれるはず」


 十分な量を買い込むと、店を出て他三人との合流地点へと向かう。道中、優夢はヘレンからジンについて色々聞いた。


「じゃあ、小さい頃からなんでもできる人だったんですね」

「うん。不思議に色んなことを知っているから妙な子だと思ってたけど、そんな秘密があったなんて知らなかったし。というより、大分強くなってるのだって知らなかったし、小規模事業からあんな大きな大商会に成っている事とかも知らなかったし」


 優夢とヘレンの共通点はジンの事しかないのでやっぱり雑談の流れもそっちの方向になってくる。


「それでジンは祈ちゃん担当じゃないんだよね」

「私はそう聞いてますし、実際に祈ちゃん担当の人にも会いましたよ」

「うーん、あの子の担当の勇者の子はどんな子なのかな?」

「ははは、機会があれば会えるかもしれませんよ」


 優夢は知っているのだが、ここで話す事でもないだろうと話をやめる。合流地点につくと既に祈達が待っていた。


「お待たせしました」

「ううん、私達も今来た所」


 優夢が遅れてきたことに謝罪すると祈はデートの待ち合わせの定番のセリフで返す。

 祈は優夢とヘレンが買い込んできた物を影の中にしまうと宿に戻る。優夢と願は台所へと向かう。


「それじゃあ、私達は夕食を作ってきますね」

「はーい」

「お願いします」

「……お願いします」


 少しだけ望が複雑そうな表情を浮かべている。母としてのプライドからするとちょっと複雑なのだろう。現段階だと優夢と願が作った方が美味しく料理できるのだから仕方が無い。


「今日はリゾットにでもしましょうか」

「そうね。サラダとスープも付けましょうか」


 優夢と願は協力して作っていく。二人で協力して四ヶ月間ずっと食事の準備をしてきたのだ、息を合わせながらスムーズに調理を進めていく。


*  *  *


「出来たよー」


 優夢は中にリゾットを入れた鍋を持ち、願は両手で鍋をもってその上に大皿に盛られたサラダを載せていた。用意されていたテーブルに載せ、ラティーナ含めて全員に配膳していく。


「見た事のない料理ばかりですね」

「一応、食堂にもあったらしいですけど、見てませんか?」

「見た事もない料理に手を出すのはね……」


 確かに初見の料理に手を出すのは勇気がいるだろう。そのため、先ずは優夢が率先して料理に手を付けていく。


「うん、大丈夫そうですね」

「では、私達も」


 それを見るとラティーナは安心してリゾットを食べ始める。彼女の立場からすれば、多少毒見っぽくなっても仕方が無いだろう。

 談笑しながら食事をとり、やがて食べ終わり。食器と鍋を全員で洗ってフロントに返すと、急に疲れが出てきたのか全員が泥のように眠った。


*  *  *


 朝になり、全員で素早く出立の準備を整える。

 朝一で街を出発して街道を進んでいく。道を進んでいき、人影が周りに見えなくなるとショートカットと検問回避のために森の中に入る。


「それじゃあ、私が先導しますので志穂は私がおぶります。他は願と優夢がお願いね」

「分かった」

「はい、了解です」


 アンジェリカを優夢が願がラティーナを背負うことになる。ラティーナはジンの授業を受けてかなりレベルは上がっているが、まだ森の中を身体強化で移動ができる程に習熟はしていないのでおぶって貰う事にしている、更にアンジェリカは流石にスペックに差があるのでおぶってもらっている。


「では、行きますよ」


 望達はヘレン達に声を掛けるとヘレン達を背負って木の枝々を飛んでわたっていく。重みで潰れない様に足場になる枝は魔力で保護していたりする。

 そのまま二十キロの道のりを数十分歩き休憩を取り、そこからは歩きで街道を目指す。魔法を使い続けると体力の消費が激しいので午前の数十分で距離を大きく進めて捜索隊の捜索予想範囲から直ぐに抜け出すことを目標にしている。

 捜索隊の予想範囲は少女の騎士が一人と箱入りの王女が一人だと考えているなら、捜索の範囲は大分狭いものになる。実態は三級冒険者レベルの人間を四人連れて、腕利きの魔法使いが一人、そこそこに鍛えられた人間が二人。脱出するのは相当たやすい。

 今日で余裕を持って捜索の範囲から抜けられる。少しは意識しなくてはいけないが、明日からは余裕を持って旅を続けられるだろう。

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