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1.登場人物の名前は次回紹介

ぐだぐだで適当に終わるか、王道に吸血鬼だとバレしてシリアス展開後、最終回になるかは未定です。

赤ちゃん死なないでね☆

たぶん、死なないので安心してくださいw

どうしてこうなったのでしょう。

目の前には途方にくれている若い男と泣いている赤ん坊がいます。

若い男といってもそれは見た目だけで、実際には齢150を超えてからは年齢を数えるのを諦めてしまった吸血鬼です。そんな吸血鬼に抱っこされているのは首はすわっているものの、腰はまだすわっていない赤ちゃん。普通の人間の赤ちゃんです。

ふっくらとして全体的にぷにぷにした柔らかそうな生き物です。短い黒髪が風に揺れてつい触りたくなる誘惑の動きをしています。


いったい誰の子?

どこから拐ってきた?

そもそもこの吸血鬼男はどうして姿形を変えているのでしょう?



まぁ、いいかな、考えても仕方ない。そこまでコイツに興味はないです。断言できます。お気に入りのタオルケットを賭けてもいいです。



というのに!興味はないのに!関わりたくないのに!引きずり込まれました。

「けーちゃーん、頼むよー」

情けない顔と声音ですがられました。

ええい、大の男が情けない。男のひんやりとした大きな手をぺしりと払いのけて体重をのせて踏みつけます。でも、軽すぎてダメージゼロです。爪を立てようかと思いましたが、相手は吸血鬼です。ムダです。お日さまぬくぬく攻撃をしたいですが、このでっかい図体を屋外まで運べません。断念します。


「そんなつれないこと言わないで、僕とけーちゃんの仲じゃない?」

小首を傾げて上目遣いで頼んでくるが、大の男がやっても気色悪いだけです。元の姿なら……うら若い純真な乙女には通じたかもしれないです。ですがこのご時世、純真な乙女なんて生物は探さないと見かけないと思います。最近見た女性は腐っていました。男同士で仲良くしている様子を邪な眼差しで観察していました。


このお願いポーズはどこにでもいそうな平凡な冴えない容貌では無駄でしかないです。無造作ヘアとはお世辞にも言い難いボサボサの黒髪。高くも低くもない特徴のない鼻。目だって大きくも小さくもない。以前の容貌は容姿端麗、眉目秀麗そんな美辞麗句ばかりが挙げられる姿だったのに。……まさかそのキラキラ時代の名残?


「断る」

「ほんのちょっとの時間でいいから面倒見てよー」



「………ほんのちょっと?」

こら、待て。吸血鬼が言うほんのちょっとの時間とはどのくらいなのでしょう、このアホは更にふざけたことを言いそうだと、じとっとした眼差しを向けます。するとこのアホは興味を引けたことに満足したのか不安そうに下げていた眉尻から表情を一変させてニコニコとした顔で言い切った。


どう、言い切りました。


「成人まででいーからさー」

おい、こら待て。人間の成人までっていつまで?18?20?学生の間?信じられない生き物を見つけてしまったかのように思わず大きく目を見開いてしまった。


「捨ててきなさい」


人間の子育てはよくわからないですがせめて、小学校まででしょう。これでもほんのちょっとの時間ではないはずです。文字通りなら一人で歩ける時期までにしてほしい。獣なら歩いて自分でご飯の確保が出来るまでです。それに……そんな長い時間このアホとは付き合いたくないです。


「えーそれはダメだよ。この子を持ってきた弁護士…だっけ?笑顔のくせして拒否権なんてねーぞって無言の圧力をかけてくるんだよー」

「育てられないなら、戻してきなさい」

そもそも『この子を持ってきた』ってなんですか。せめて『連れてきた』と言え。このアホ。こめかみに血管が浮かび上がりそうです。


「この子のママもその両親ももうあの世に逝ってるから、身寄りは僕だけだって。弁護士さんが恐ろしい笑顔で言うんだよぅ。可哀想でしょ?」

「人間にはそういう身寄りのない子を育てる施設があるでしょう」

「えー?そんな血も涙もないことを言っちゃうの?こんなに可愛いんだよ」

視線を向ければニコニコとしたご機嫌顔で抱っこされている赤ちゃんが目にはいる。まぁ、確かに可愛い。あれ?今、血も涙もない吸血鬼に変なことを言われた気が……。

「なんか、こう美味しそうだよね☆」

………は?

今、なんと?衝撃的な発言が続き、出ようとしていた文句が思わず引っ込んでしまいます。

「柔らかくて甘い匂いで」

いろいろと突っ込みどころがあるが、もう何から突っ込めば良いのかわからないです。

「体温が高いせいか僕までぬくぬくだよー。ん?どうしたの」

反応がないことを不審に感じたのかこのアホが顔を近づけてきました。

「あー、ゴメンゴメン。僕に血も涙もないって言われたくなかったよね。血も涙もないのは僕の方だし。あれ?違う?」

違わないです。それについても文句を言いたかったです。


でも。


「それは非常食か何かですか?」


生命力溢れる赤ちゃんはさぞ美味しいだろうけれど、こいつの言動がわからないです。アホとは相容れないのでしょうか?


「ええー?食べないよ。子育てを一緒にしようってお願いしてるでしょう?今の時代、戸籍がないといろいろと面倒だから鈴木さんから戸籍をもらったんだよー。戸籍に載ってる子供が一人消えたら事件になって面倒なことになるよ」

突然、キリッとした顔でこの日本社会を説いてきた。そんなことは解っています。アホの子には言われたくないです。


「けーちゃんと一緒なら頑張れるし、頼りになるし。ねえ、お願いだよぅー」

このアホの懇願は赤ちゃんがぐずりだすまで続きました。二人で―――人ではないですが―――てんやわんやでお世話をして、なし崩しに了承することになったのは言いたくないです。恥です。このアホに屈してしまったことが不満です。


でも、これが狙いだったのでしょうか?ずる賢いのでそうかもしれないです。

読んでくださり、ありがとうございます。

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