EP1.F 楽しくなりそうです
いつの間に!?
私がテラスにでると、そこにはなぜかローレンさんがいました。
「ロ、ローレンさん!?」
先日会った時と同じ服でローレンさんはアールさんの前に立っていました。
「あら!店長さんですわ。御機嫌よう。先日は助かりましたわ。おかげで講演会は無事に終わり、街への介入も安心して行えそうですわ。」
「介入じゃと?」
「そうですわ。バックヤードなどという悪賊組織と関わるくらいでしたら名は悪名高かれど円卓がXIIの賢者にしてXIの席まっせきに座りし私ゼノヴィア・ローレン=ツァーリを頼るべきなのですわ!」
「えっ!ローレンさん”も”円卓なんですか!」
「なぬ!となるとわしら円卓の知り合いもう2人目じゃぞ!」
「あら?VI席だいろくせきからお聞きになりませんでしたの?」
聞いたことがありません。アールさんはあった時から円卓の話は好きではないと言ってあまり話してくれませんでした。かといって知ってたらどうなっていたでしょうか。
「貴様の事だ。どうせ自分から言うにきまっている。その通りになっただけだ。」
「貴方は本当に嫌いだったのね。」
「それにしても円卓がこんなあっさり人前で名乗っていいのか?」
「貴方がすでに教えているのなら問題はなくてよ?」
**{ }**
ひとまず、ローレンさんを中に入れ、サンドイッチをテーブルに置いた。
「あら、おいしそうじゃない。やっと食べられたわ。」
「それよりもローレンさんはどうしてここにいるのですか?」
「あれ?簡単よ。あなた達についていくことにしましたの。」
「何?」
アールさんが珍しく不機嫌そうな顔になりました。そこまでして嫌なのでしょうか・・・。
「貴様には財閥があるんじゃないのか?」
「あら?あると言ってもそこで仕事があるわけではございませんのよ?」
「どういうことだ。」
「名前と不定期な労働力を提供しただけですわ。もちろん私の業務は大多数がこういった講演会のみ。」
「おぬしは喋るだけでお金が入るというのか!」
「でしたら苦労しませんわよ?それ以外にも、キャラバンへの支援も怠っていませんわよ?」
それから詳しく話を聞いたところ、財閥の方は安定してきたそうで、何かあったら各地の支部を通して話が来るそうです。それよりもローレンさんは私たちのサンドイッチ(とアールさんがいるから)が理由でついてくることにしたそうです。
「それで、これからどこへ行くところなのでして?」
「グランアイトだ。先日バックヤードが襲撃をもくろんでいた街だが、目的はバックヤード絡みではない。ただのダンジョン巡りだ。」
「あら!それでしたら私もついていきますわ!私も一度やってみたかったのですわ!」
「そういえば、昔言っていたな。」
「(あの二人・・・何歳なんすか。)」
サンドイッチを食べ終わると、5人になったテラスタンクは少し狭くなったような気もした。
外を見ると城壁と残骸が見えます。昨晩から残っている残骸ですが、それを片付ける人はいませんでした。
「そろそろ到着っすね。皆さん降りる準備よろしくっす。店長は入場手続きも。」
「はーい。」
「そういえば、あなた達はこれに乗って旅をしてますの?」
「はい。これは私がずっと乗ってきた大事なものなんです。確か父が譲り受けたもので。」
「ふむ。でしたらうかつに交換なんていえませんわね。」
このテラスタンクは私が旅を始めたころからずっと乗っているものになります。どうやら10年以上前の旧式だとローレンさんは言います。私はこういうのに詳しくなかったので、助かりました。
しかし、いざ修理するとなった時に不都合が生じてしまうのはいつもの事でした。パーツが入手困難なもの等があり、次もちゃんと修理できるかどうかは運次第でした。
「でも、これ以上長く持つ保証もないですよね。」
「それは持ち主の手入れ具合にもよりますわ。幸い、これはよく整備されてますわね。」
「ヘイズさんのおかげです。」
ガコン!
突然何かが外れる音がしてテラスタンクが傾きました。
「な、なんですか!」
「みなさんしっかりつかまって欲しいっす!なんかパーツとれたみたいっすね!」
ガガガガガガガ
先ほどまで振動のなかった室内が大きく揺れだす。食器がガチャガチャと音を立て、壁にかかっているものが落下する。
「思ったより早く来たっすね・・・!」
「こ、これで今まで走ってきたと、言います、のっ!」
「その通りだ。」
「おいおぬしだけ浮いててズルいぞ!」
「傾いているところは見つけた。今だけ埋めておく。」
アールさんはテラスタンクの横に移動すると、傾いている部分を持ち上げ、
「形成。展開。固定。」
そこに結晶体を挟み込みました。
ガガガガガ・・・コンッ!・・・ゴウンゴウンゴウン
「ふぅー・・・隊長。助かったっす。」
「到着したら外す。それまではこれで持つだろう。サーシャ。」
アールさんがテラスに降りると、諦めたように言い放ちました。
「そうですね。そろそろ限界みたいですね。」
話しているそばからといいますが、仕方ありません。これも長い間無理に乗り回したこともありました。
それよりも一つ問題になることがありました。移動手段がなくなるかもしれないということです。
「ということは、次のダンジョン巡りは・・・」
「徒歩か・・・。」
アールさんと顔を合わせた後、二人でヘイズさんを見ます。
「あのー視線がいたいんすけど。」
「今回のも何とかして直してください!1日だけなんとかしたら後はもう買い換えます!」
「私からも頼む。これは必要不可欠だ。君の腕を見込んでの頼みだ。」
「流石に今の音は無理っすよ!」
**{ }**
そんなことを話しながらも、テラスタンクはグランアイトの城壁につきました。私は降りると、入場手続きを行います。
「滞在は。」
「えーっと・・・一週間で!」
「ダンジョンですか?」
「はい!」
「かしこまりました。後ほどギルド協会へこちらを提出して下さい。」
そう言割れると透明な板を渡されます。そこには”特例地域活動申請票”と金色の文字で書かれていました。
私が戻ると、街の中へ入っていきました。
街の中は高い城壁に囲まれ、非常に窮屈さを覚えますが、街は狭いわけでもありません。
グランアイトはシェルハラでも3番目に大きな町で、鉄鋼業とダンジョンでここまで大きくなったのです。
街のいたるところには高低差のある土地があり、土地の高さに応じて城壁で補強されていました。
この街のギルド協会は今いるところから見て左に位置する広い高台の上に建っています。
そしてその隣には
「あ、あれですわ!」
「ここにもあるのか。一体どこまで浸透しているんだ。」
ローレン=ツァーリ財閥の建物もありました。
「それはもちろん、シェルハラ全土でしてよ。」
「いやぁ、そこまでよくやるっすね。」
「せっかくですし、これからは財閥の空き部屋でもお貸ししますわよ!休憩スペースとして提供いたしますわ!」
「なんと!そんなことをしてくれるのか!」
「でしたらお願いします!」
「ええ!いくら国内最大規模の商会とは言え、その全部屋が埋まるほど人がいるわけではございませんわ。こうして客室として提供するのもまたお仕事ですわ。」
私たちは財閥のある高台まで移動することにしました。道は広く、私たち以外にもおおくのテラスタンクが走っていました。とめる場所も広く確保されており、各地には鍛冶場もあります。
「グランアイトにはその職人の得意分野ごとに居住区域が分かれていますの。あまりにも職人が集まりすぎてどこに誰がいるのかわからないほどですから。」
「剣、槍、斧、盾、魔装具もあるのか。珍しい。」
「ええ。最近はグランパレスから引っ越してきた人もいまして、知り合いもいますのよ!」
「それは驚いた。近いうちに顔を出しておこう。」
**{ }**
「ひろーい!」
「ふっかふかじゃ!」
「あはは・・・二人ともはしゃぎすぎっす。」
財閥につくとすぐに私とティアラちゃんはベッドにダイブしました。
「なんかすまないっす。」
「気にすることではないですわ。使えるものは全部使う。でしてよ?」
「それにしても、本当に空き部屋が多いな。これ全て客用の宿泊室とは。」
私たちが案内された部屋は入ってすぐ横にあるお部屋でした。5,6人用といっていましたが、その倍は入っても不自由ない広さでした。
「滞在期間中はここを自由に使ってもらっても構いませんわ。その代わり、私もここを使うことになりますけど。」
「君でも使えない場所があるのか。」
「いいえ?せっかく同行することになりましたもの。ご一緒するべきですわ!」
「なるほど。その通りだ。では、改めてよろしく頼む。」
アールさんが珍しく親しげに話しています。それほど円卓の中でも仲が良かった人のようです。
これからはきっとアールさんの意外な一面も見れそうです。
「ええ。昔同様仲良くしたいただきたいですわ!」
そんなこともあり、私たちはローレン=ツァーリ財閥のお嬢様こと元・円卓XII賢者師団XIの席のゼノヴィア・ローレン=ツァーリさんが私たちと同行することになりました。
ローレンさんがいうには今後も財閥の施設があれば、相応の対価で使わせてくれるそうです。
そしてその対価というのが
「お待たせなのじゃ。今日はハムと金糸卵のサンドイッチじゃ。」
「コレがこの街で出す新作ですわね!いただきますわ!」
シエスタでつくるサンドイッチです。
「隊長。」
「ああ。私も思うのだが、彼女はどうしてあそこまでサンドイッチに興味を持った。」
「恐らくチラシの影響っすね。実はあの講演会に俺も参加したんすけど、どうやらうちのサンドイッチをどうしても食べたかったそうなんすよ。」
「しかし、当の本人は講演会や仕事のスケジュールに縛られ、自由がきかない。」
「そのうえ、講演会の最後にとんでもないことを言ったんすよ。今の仕事を辞めるって。」
「それで私たちに同行し、サンドイッチを食べながら旅をしたいと。
「自由がわりと利くのもギルド活動の特権すからね。」
「さてヘイズ。サンドイッチを食べておこうか。」
「え?」
アールさんの手の上にはお皿に乗ったサンドイッチが。先ほど私が渡しておきました。
「無くなるぞ・・・今回のも素晴らしい出来だ。私も料理ができればな。」
「あはは・・・隊長は料理センスは皆無なんで・・・。」
「それを率直に言われても困る。」
また一人増えて、サンドイッチもおいしくなりそうです。
こんにちは。電波式廃墟少年です。
昨日は最後書きなぐったようにいろいろ書いてしまいましたが、今回はまともだと信じたいです。
やっぱり、これくらいの場面変化だと4000字が書きやすいです。もう少し細かく書けるような表現力があれば6000字は行けそうなのですが・・・。
さて、これでEP1といいますか1章は終わりです。
次回からはEP2と題しまして、グランアイト周辺のダンジョン巡りをしながらあるものを手に入れます。
もうバレバレですね。
ローレン=ツァーリやヘイズたちの戦闘シーンも書く予定です。
よろしくお願いします。