EP1.7 Melancholy
隠し続けるわけにはいかないのだろう。いつまでも
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~ある場所にて~
今日も雪が降っていた。いつも通りの天気。ここでは日は射さない。
私は今日もこの場所から外の景色を眺める。部屋から突き出たところに或るバルコニーは大理石のような模様の石材でできたフェンスに囲まれ、四角いガラス製のテーブルと椅子が部屋側に置かれていた。背後の部屋には本棚が壁に並び、大小さまざまな本が整然と並んでいる。中央には四角い多結晶模様の箱が浮いており、天井には銀製のオブジェ(天体をモデルにしたものらしい。)が薄く光りながら細くカーブした棒についた球体が回転する。
思えば、この景色はもうどれくらい見てきたのだろう。
外は石造りの建物が並び、道路を馬車が走っている。城壁の遠くは霞んでいる。おそらく吹雪だろう。
横に目を移すと、塔が見える。私と同じく外に出ている人がいるのだろう。
コンコン
誰かがドアを叩く音が聞こえる。
「入ってくれ。」
ドアが開くとそこには白いローブを被った人が入ってきた。右手には大型の本(B2くらい)を持っており、顔は上は口から上は隠れて見えない。胸には灰色で丸の刺繍が施されている。
「失礼します。ただ今、召集令が発令されました。」
「そうか。内容は。」
「それが・・・」
「どうした、早く答えろ。場合によっては欠席する。」
「・・・それが、秘密・・・だそうです。」
「ふむ。わかった。欠席する。」
「し、しかし・・・!」
バシュン!
「欠席する。そう伝えてくれ。」
私が結晶体を使ってまで言い放つと、ローブを着た人は去っていった。
壁には氷でできた爆ぜた痕が残っていた。
バタン
ドアが閉まると、手元に一冊の本があることに気が付いた。テーブルの上に、数ページしかない薄い冊子のような本が置かれていた。表紙はまっさらである。
開くとそこには黒い円が書かれており、それを囲むように12個の小さな赤い円と青い円、灰色の円が書かれていた。その中でも一番下に或る灰色の縁に指を置く。
『なんだ、今日も来なかったのか。』
「行くほどの内容でもない。」
『もう1ヶ月もこちらに出ていないじゃないか。せっかくだ。顔を出してもらいたい。』
「お断りします。」
もうこの会話も飽きてきた。この場所も飽きてきた。
「時に枢機卿。」
『なんだね?』
枢機卿と呼ばれた男が答える。
「私たちは本当にあの日、この選択に行き着くと信じていたのですか?」
『さあな。この街も長生きしすぎたのは事実だが。』
「彼らは今どこにいるのでしょうか。」
『実はだな。君を呼んだのは今後の事もあってなんだ。』
「・・・あの話ですか?」
『西にも話を回して置いている。これはわが国だけにとどまらない問題だ。』
私は結晶体をいくつか作り出しドアを開ける
**{ }**
「・・・ん」
「あ、起きましたか?」
気が付けば朝だった。どうやら寝ていたようだ。体は動かない。
確か昨日はバックヤードの襲撃を未然に防いでいたはずだが。
「サーシャ。昨日の一件を確認したい。」
「はい。これが報告書になります。読みますね。」
サーシャは手元に持っていた紙を読み上げる。私が機能していなかった頃の話が書かれているはずだが。
「ボルゲンは右腕を失う重体の状態でギルド協会に渡されました。この時に、馬車による事故という形で収束しました。それと、もう一人の剣士ですが、アールさんが停止してまもなく行方をくらましました。現在は私たちの目撃情報と共に調査中だそうです。」
「ふむ。その時に私が起きていたらどんな奴かわかっていたのだが・・・。」
「アールさんがやりすぎなだけです。元とはいえ今はギルドメンバーですよ。」
「わかっている。だが、自己防衛として適用されないのか?」
「世間が適用してもシエスタは許しません。」
ああ、やはりだめか。私は許してもらえる期待感を持ってボルゲンの腕を持って行った。五体満足なことよりも奴に追撃のチャンスを与えてしまう事のほうがよくないのだが。
さて、ここで一つ言っておかないといけないことがある。私の弱点だ。
私は結晶体を攻撃されるとダメージを受けることは一切問題はない。それよりも弱点がある。
火だ。
なぜ火かというとこれは魔術師的な問題になる。
まず、私たち魔術師というのは魔力を用いて魔法や術式を使用する。魔力というのは魔術師の体内に或るものや周囲の土地や空間に存在する。ただし、この魔術師には魔力に対する適正というものが存在する。
魔力には属性が存在する。それは魔術師の体質や環境によって非情に変化しやすいものとなっている。
魔術師には魔力の持つ属性ごとに対する適応力のことを魔力適正と呼ぶ。
私は氷属性のみの適性を持っているが、その適正度合いは非常に高いらしい。
尚、魔力適正によって他の属性との適正も決まっている。氷属性の魔力というのは火属性の魔力に対しては非常に弱い。
勿論、氷属性の魔力適性が高い私は火に弱い。どれくらい弱いかというと。
活動停止するレベルである。いや、すでに停止していたか。
昨晩サーシャが私に撃ったのは火属性の魔力瓶であり、それで私が機能停止したわけだ。機械ではないが。
また、砂漠は火属性と地属性の魔力が非常に高く含まれている。そのため、長時間砂漠にいると私は機能停止する。
いわば、シェルハラは私にとっては地獄でもある。
「さて・・・この街に騎士団は来たか?」
「はい。先ほどルミナイツが到着したようです。」
「そうか。そういえばそろそろ出国の時間か。」
我々は1日の延長を要望したが、それ以降はしないことにしていた。コオツとはお別れである。
しかし、また機会があれば来ることもある。
さて、次はどこへ行こうか。
「それでしたらグランアイトに行きませんか?」
「あの街か。」
「はい。そろそろダンジョンに行きたくなりましたので!」
グランアイトには金属が眠る鉱山を有するダンジョンが多く分布している。せっかくだからこの際に一つ体を動かしてもよさそうだ。
私はヘイズとティアラに連絡すると、すぐさまテラスに出た。
ゴウンゴウンゴウン
テラスタンクの重厚な駆動音と共に車体が動く。そのまま通りを駆け、壁を抜ける。
しかし、それにしては珍しく重いような気もするが。
「ヘイズ。速力は。」
「あーそれがいつもの1割減っすね。何があったんすかね?」
「うむぅ。もう街を出てしもうたからの。グランアイトまでの辛抱じゃ。」
さて、これからどうしたものかとフェンスに寄りかかり空を見る。
あの場所とは違い、空は青い。そして砂漠は暑い。燃えるような暑さに体を慣らすのにどれほどの時間を有したのだろうか。あの土地の雪はもう何年も見ていない。しかし、あの場所にはもう何もない。あるのは荒廃した土地と雪と思い出だけだ。その思い出も考えてみれば大したものはない。
私はあの場所で何もしていない。それが事実であるのにどうも納得いかない。
常に静観し続け、顛末を観測し、静かに生きた。それが最大の間違いとも知らずに。
そうだ。私の目的は―
「あら?貴方にしては珍しく思い詰めているのね。」
「・・・なるほど。遅い理由が分かった。」
「私が重いってどういうことですの!」
スタッ バッ
誰かが屋根から飛び降りた。そしてそのまま右頬をかすめるように槍を突かれる。
避けはしない。向こうも当てる気はないのだろう。それにしても相変わらず私の前によくあらわれるものだ。
私は名前を呼ぶ。
「ゼノヴィア・ローレン=ツァーリ。君には財閥があるんじゃないのか?」
「ええ。ですが、あの場所に収まっているとでも?」
この騒ぎにサーシャとティアラが駆けつけてきた。この様子だと明らかにローレン=ツァーリのほうが侵入者なのだが。
「ロ、ローレンさん!?」
「あら!店長さんですわ。御機嫌よう。先日は助かりましたわ。おかげで講演会は無事に終わり、街への介入も安心して行えそうですわ。」
「介入じゃと?」
「そうですわ。バックヤードなどという悪賊組織と関わるくらいでしたら名は悪名高かれど円卓がXIIの賢者にしてXIの席に座りし私ゼノヴィア・ローレン=ツァーリを頼るべきなのですわ!」
「えっ!ローレンさん”も”円卓なんですか!」
「なぬ!となるとわしら円卓の知り合いもう2人目じゃぞ!」
「あら?VI席からお聞きになりませんでしたの?」
「貴様の事だ。どうせ自分から言うにきまっている。その通りになっただけだ。」
そうだ。彼女は北方グランパレスにかつて旧世代から存在していた組織[円卓XII賢者師団]のXIの席である。
そして私も彼女と同じくVI席として所属していた。
円卓賢者とは、グランパレスの最高行政機関にして最高戦力組織でもあった。
いわば政治と軍事の2つを持っていた。さらに言えば、この円卓賢者においては司法に属する人も所属していたため、実質北方全土の権力が集中していた組織でもある。12人による独占政治とでもいうべきだろうか。私はこの世界が嫌いだった。
円卓も当時は2分していた。I席率いる北方内での安定化を望む静派、通称「枢機卿派」。II席に属したデューク・ゲオルギヴス率いる北方外をも含む旧世代の更に前に存在した王政時代復権をもくろむ動派。通称「ゲオルギヴス派」の2つだ。ゼノヴィア・ローレン=ツァーリは枢機卿派、私はどちらにも属さない唯一の中立派だった。そしてX席は当時誰も属していなかった。
その二分したうちのゲオルギヴス派はとあるクーデターの後、グランパレスの大部分を破壊しどこかへと去っていった。それからだ。私が動き出したのは。
今ここにいるのもそれが理由だ。サーシャには語ったことはない。語ったのは円卓であることだけだ。
彼女はそれだけでわかってくれていた。むしろこれ以上彼女たちにはかかわってもらいたくなかった。
それでも、あの一言だけで私は理解してしまった。
「アールさん。私と一緒に行きましょう!」
あの日さしのばされた手、周囲が焼夷された砂漠の中で約束された声。
きっと、私はあの時から―
こんにちは。電波式廃墟少年です。
一応ここでEP1が終わりつつあります。
最後に明日で締めくくらせていただきます。
この後はちょっとした回想録でも流そうかなって思います。
ちょっとわかりづらい文章になってしまったかもしれませんがどうかもう少しだけお付き合いいただければ。
あ、EP2は今週中に出します。よろしくお願いします。