EP1.5 成敗ですっ
勧善懲悪が私のモットーです!
~ロストワールが商会に入る少し前~
「この辺りからいきましょう!」
私はガントレットにフック(ハンドルで巻き取ることができるロープ付き。)を取り付けると屋根の上に乗るように打ちました。
カキンという乾いた金属音と同時にフックが引っかかりました。そこからハンドルを撒いて上に上がっていきます。屋根の軒先に手をかけると上に飛び乗りました。
屋根を伝って今度は商会の裏口につきました。
「後は皆さんの指示を待ちましょう。」
**{ }**
数分経つとアールさんが裏口に来ました。正面突破したかったそうですが、招待状を手に入れてからのほうがよかったみたいです。アールさんが裏口に入ってからというもの商会が青白く点滅するようになりました(これはアールさんの結晶体から撃っている魔法で、細いビームのような魔法です)。
「アールさん順調そうですね。」
すると、今度は4階で何かが連続して光りだしました。それと同時に裏口から人が入ろうとしています。
「機銃音だ!中に誰かいるぞ!」
どうやらアールさんを捕まえに来た人たちのようです。このままでは危ないですね。
早速私はガントレットに瓶を装填します。中には白い液体のようなものが入っていますが、これが魔力なのです。
魔力も水と同様に固体、液体、気体の3つがあります。この状態というのは使用者の目的や手法に応じて調整することもできます。私の場合は液体で使用することが多いです。
装填したら、裏口を狙って左手を握ります。これが引き金代わりです。
ヒュン!ドン!
裏口に当たった瓶はそのまま爆発。入ろうとしていた人たちを足止めします。
「なんだ!」
「どこから撃ってきた!探せ!」
バシュン!
「ぐわあああっ!」
「くそっ!次から次へと・・・どうなってるんだ!」
皆さんが混乱してる間に別の屋根へと移ります。同じところにいるとばれちゃいますから。
その頃、4階の発光も止まりました。どうやら何とかなったようです。
「このまま様子を見ておきましょう。」
**{ }**
それから少し経つと再び下の階に人が集まっていました。かなりの数の人を配置していたようです。
それと同時にアールさんの結晶体がこちらに来ました。
『ヘイズ。要救助者3・・・いや4名。一人は4階。他は地下だ。』
『了解っす!』
「アールさん。大丈夫でしたか?」
『ああ。こちらは。アゾットを見つけた。気絶しているがな。』
『よくやるのう。よし。わしらもそろそろ動くとするかの。』
『今何をしている。』
『ちょっとした調べものっすよ。そしたら面白いもん見つけたんで。あとで教えるっす。』
『わかった。』
「止んだか!突入しろ!」
『・・・あー隊長。悪いっすけど、このままだと無理っすよー』
『そのようだな・・・やれやれ。』
通信をしている間に、一斉に裏口に入ってしまいました。それと同時に何人かが吹き飛ばされて出てきました。
「ぎゃあ!」
バシュン!
「うろたえるな!たった一人だろ!!やれ!」
「はぁ・・・よくまあ一人相手にここまで準備ができたものだ。これもすべてゼノヴィア・ローレン=ツァーリのためか?」
「貴様だな侵入者は!」
「ああ。挨拶はそこまでにしてくれ。仕事は余計な口を挟むなといわれている。」
一人撃ち倒すと同時に全員が襲い掛かってきました。後ろには人がいるようでしたが大丈夫でしょうか。
「さて、君たちは向こうだ。形成。展開。送信」
アールさんが詠唱すると、結晶体に3人がすっぽりと入り、そのまま
ビュン!
と、飛んで行ってしまいました!
「あ、アールさん!?」
『ヘイズ。今3人を避難させた。よろしく。』
『そんな無茶っすよ!』
『早く助けないと全員みんちになるか』
パリン!
突然通話中に結晶体が割れる音がしました。おそらくヘイズさんが割ってしまったのでしょう。
『”そっちから”壊すなといっただろう・・・。』
「今のはアールさんが悪いです!」
『そう怒らないでくれ。要救助者だ。死なない程度に救助した。怪我は連中につけられたと話しておけば問題ないだろう?』
「その考え方に問題があります!」
アールさんも悪い人です。困りました。
アールさんの結晶体には一つ弱点があります。それは、結晶体をアールさん以外の人が破壊すると、結晶体に入っている魔力の量に応じてアールさんに直接ダメージが入ることです。アールさんは常に結晶体を各地に飛ばして、自由に動き回れるように戦うのが基本的なスタイルなのですが、逆に言えば、自分の弱点を過剰に広げている諸刃の剣なのです。
『仕方あるまい。サーシャ。一人ずつ丁寧によろしく。』
「終わったらいろいろ話したいことがありますからね!」
私はそういうとガントレットに紫色の魔力瓶を装填します。今度は睡眠術式を組んである魔力瓶です。
「当たってください!」
ヒュン!
発射と同時に連続して射撃します。数が多い分スピード勝負です。
ヒュン!トスッ
「うっ・・・」ドサッ
「まだまだ!」
「ぐおっ・・・」
バシュン!
「くそ・・・こんな奴に・・・」
『窮鼠猫を噛むというが・・・いや、私はネズミではない。』
「ミイラ取りがミイラになった?」
『私はミイラではない。』
「ものの例えですよ。」
そんなことを言いながら二人で攻撃を続けていると立っている人は私とアールさんだけになりました。
『このくらいでいいか。』
『形成。通信。ヘイズ。そっちはどうだ。』
『ティアラがいなかったら全員ミンチっすよ!!!』
『そうか。それはよかった。ではアゾットを運び出してくれ。』
『お使い感覚で頼むのやめてほしいんすけど!』
『わかった。私が外まで持ってくる。』
「ヘイズさんも大変ですね。」
『おい!わしもつれてゆけ!』
『店長!できればフォローしてほしいっす!』
**{ }**
ひと段落ついたところで、馬車の屋根に飛び降りてから地面に着地。この時に間違って踏んでしまった人に軽く誤ったところで、馬車の中を見ます。中にはアールさんが言っていた通り球体の物がありました。
馬車には馬がいなかったので恐らくどこかに休ませているはずです。
すると、そこにヘイズさんとティアラちゃんが来ました。
「ふぅ・・・全く人使いの荒い人っすね・・・。」
「あやつ人じゃないじゃろ。」
「一応人ってことで。”見た目"は人なんで。」
「あ、二人とも!お疲れさまです!」
「うむ。あの3人は気前のいいお嬢様みたいな奴が預かっていったぞ。」
「ローレン=ツァーリ財閥のひとっすよ。」
「ローレンさんでしたか!それなら安心ですね!」
私は二人でローレンさんと会った時のことを話しました。
「なるほど。彼女が今回の依頼人だったんすね。」
「それにしては妙じゃのう。まるで分り切っていたかのように待っておったぞ?」
「なんででしょうか?」
こんな話をしているうちに或ることを思い出しました。
「この馬車の中身、せっかくなのでギルドに提出しましょうか。」
「うーんそれもいいんすけど、この街が街なんすよね。」
「まあいいじゃろ。」
「そういえば、アールさんはアゾットを連れてくるはずでしたが・・・遅いですね?」
後はアールさんがアゾットを連れてくればおしまいですが・・・
ドタン!
「ん?」
突然裏口の奥、階段の方から物音がしました
ガタン!ガン!ゴトン!ガタン!
「何じゃ?」
物音が次第に大きくなり
ズドン!
「う・・・ど、どこだ此処は。」
突然裏口から何かが飛び出してきました。顔を見るとアゾットでした。
「お、こやつアゾットじゃ!」
「隊長、まさか吹っ飛ばしてここまで転がしてきたわけじゃないっすよね。」
「この馬車ごと連れて行きましょう!」
「応援を呼ばれたか・・・くそっ・・・。」
「悪いっすけど、詳しいことはゆっくり聞きたいんで。」
ティアラちゃんが近くにあった馬車にアゾットを乗せ、ヘイズさんが馬小屋にいた馬を一頭馬車につなげました(この世界ではまだ馬車を使っている人もいるんです。砂地でも走れる品種ですよ)。
「それで、アールさんは・・・。」
「なんじゃ。あ奴、まだ来とらんのか!」
そう言って裏口から階段の方に行こうとした瞬間
ぐにっ
何かを踏みました。
それと同時に知覚を浮いていた結晶体が一斉に砕けました。
「えっ!あ、アールさん!」
ぐにっ
「ど、どうしたんですか!」
私はアールさんを助けに裏口へ走っていきました。そのまま階段を上がると、いたるところに倒れている人がいました。一人ひとり顔を見ましたがアールさんはいませんでした。
私は二人の所に戻ると
ぐにっ
「大変です!アールさんがいません!」
げしっ
「・・・」
「どうしたんですか!探しに行きましょう!」
ごっ
「・・・あのなサーシャよ。」
「なんですか!こうしている場合じゃないんですよ!」
げしっどかっぐにっ
「ロスなのじゃが・・・」
「下・・・っすよ。」
「え?」
げしっ
下に目線を移すと
・・・
「・・・サー」ぱたっ
アールさんが、息絶えていました
「・・・ご、」
ごめんなさーーーーい!
**{ }**
レオの月 18
翌日
今日も朝から暑かったです。
「助かりましたわ!おかげで講演会は問題なく行えそうですわね!」
「だったらよかったな。」
「あら?あなたにしては機嫌が悪そうですわね?」
「そんなことはない。」
その後、夜の間にギルドに馬車を渡して調査してもらいました。やはり、バックヤードの物だということが判明しました。そこでアゾットとアゾットが持っていた商会は差し押さえられることになりました。
アゾットはバックヤードを使って商人と取引をしていたのですが、それを利用してバックヤードが商人たちを脅していたそうなんです。ただ、これでバックヤードに関する事件は無くなりそうにないと判断したギルド協会は、治安向上のために国に申請し騎士団を派遣することにしたそうです。
街を納めていた市長もこの一件に関与していた可能性があるとみられて、取り調べを受けているそうです。
ひとまず、ローレンさんが講演会を無事に進められそうでよかったです。
「講演会、頑張ってください!」
「ええ!私の声、必ずこの街に響かせますわ!」
そういってローレンさんは講演会へ向かいました。
「なんとも元気な奴じゃのう。」
「そうっすね。あれが隊長の知り合いとは意外っすね。」
「おかげで、店の広告もできそうだ。ちょうどよかったな。」
「それにしても、この街はあとどれくらいバックヤードが潜んでいるのでしょうか?」
「ふむ。確かに気になるな。この一件で終わってくれるはずもないだろう。アゾットもあの様子だと上に誰かいるようなそぶりだった。」
「黒幕は今どこにいるんすかねぇ。」
「何はともあれじゃ。この街はそう簡単に放っておけなくなりそうじゃの。」
確かにそうです。このまま終わる気配はなさそうです。
ギルド掲示板に唯一張り出されないバックヤード関連の依頼、空になっていたバックヤードの拠点、
何よりも、脅迫状について街の人は誰も知らない。
どれも、普通ではありえないような状況ばかりです。
「みなさん。一度戻りましょう。」
「そうっすね。」
「うむ。」
「・・・。」
外に出るととても高い塔がありました。あの塔は確か市長がいたそうなのですが、その人も今は不在です。
その知らせを聞いた人たちで街は重い空気になっていました。
お店にもすこし活気がなくなりつつあるのは少し寂しいです。
その後夜までサンドイッチを売りましたが、お客さんも心なしか気分が晴れないようでした。
外に出ていたアールさんも同様の状況を酒場で見てきたそうです。
その日の夜。
「さて・・・やることは決まっているのだろう?」
「はい。このまま街に滞在し、この街をなんとかしたいです!」
「とはいっても・・・どうするんすか?」
「それについては、一つ心当たりがある。」
アールさんはギルドの依頼書を一つ取り出しました。
「ナンスかこれ?ただの輸送依頼・・・」
「いや、この依頼書だけ魔力印が使われていた。」
「たしか、特定の魔術師でやり取りをするための・・・」
アールさんが紙に手を押し付けると、バチッと火花が散った後、紙に大きな印がつきました。
「蛇じゃ!蛇がでてきたぞ!」
「てかこのマーク足しか馬車にあったような!」
「そうだ。この依頼を私が受けておいた。君たちにはこの依頼に同行し、彼らを見てもらいたい。」
「場合によってはやっちゃっていいんすね?」
「それはサーシャ次第だが。」
「(なんでそこは店長次第なんすか。)」
アールさんが私を見ます。もちろん答えは決まっています!
「行きましょう。この街をバックヤードから守ります!」
「うむ。これで決まりじゃな!」
「というわけだ。行こうか。」
改めてみんなで出発の準備です。
**{ }**
~ある場所にて~
「アゾットもつかまりましたよ。」
「うるせぇ。んなことくらいわかってる。」
暗い部屋。そこで食事をする人が一人。見た目は大柄で目は赤く光っている。
その横には細身で黒服の男がいる。左腕には細身の剣が鞘に収まっていた。鞘はベルトで固定されており、剣も歯車のようなもので固定されていた。
テーブルには豪勢に盛り付けられた料理が乱雑に並んでいる。
「財閥のやろう・・・この街をつぶすつもりだな?」
右手で丸焼きの肉を掴み大胆に食べる。
「だとしたらどうしますか?この街に入ってきたテラスの一行もこちらに気づいているのでは?」
「そんときはそん時だ。俺が直々にぶっ潰す。」
「かしこまりました。私も手伝わせていただきます。」
「そういやそろそろ出発の時間か。行くぞ。フェレス。」
「(もっとも、あなたには多くのことをしていただかないといけませんから・・・。)」
こんばんわ。電波式廃墟少年です。
今日は何とか間に合いました。さて、ここからなのですが、もう少しだけ続きますよ。
今度こそ黒幕に近い人を出します。もう少し派手に戦闘描写をします。
よろしくお願いします。
コメントや感想などはいつでも受け付けてますが、全部返せるとは限りませんがなるべく全部出すようにします。
少しずつ文章を書くことには慣れてきました。
次はより情景がイメージしやすい文章作りですかね。
追記 2018/07/29 21:00
1.5でしたよ!!!