Ep.1-1 活動開始です。
私たちはこう見えて表向きは普通です!本当ですよ!
砂漠に囲まれた街の一つコオツ。ここが次のお仕事場所です。
私たちはテラスタンクに乗って様々な街でサンドイッチを売って回っています。
「それではみなさん!今日もよろしくお願いしますね。」
私の前には、
「了解っす!」
いつも通りやる気いっぱいのヘイズさんと
「うむ。やってやるのじゃ。」
気合十分のティアラちゃん。
「・・・おー」
いつも静かなロストワールさんの3人。
まずは今日販売するサンドイッチのレシピの準備とテーブルの組み立て。
テーブルは足をはめ込むタイプです。中央にはパラソルを刺すための穴があるので1つずつ開いて刺していきます。
調理場ではティアラちゃんが早速今日売る予定の卵とレスベーコンのサンドイッチを作っています。
レスベーコンというの脂分の少ないさっぱりしたベーコンで、サンドイッチにはぴったりです。
「では、少し出かけてくる。」
ロストワールさんは街に入るたびに街のギルド協会に行って調査をする係です。
ギルド関連の手続きを主に担当してもらってます。といってもお店を出すだけなら既に入場手続きの
時点で済ませちゃってます。
ちゃんと理由はあります。
「あー店長、さっそくサンイッチ2つお願いしまっす!」
そして、ヘイズさんと私が販売係です。いつも4人で分担して活動しています。
気になる売れ行きはといいますと、行列ができるわけでもないですがそこまで多くの人が来るわけでもありません。
私たちの目的はおいしいサンドイッチを売ることで、たくさんのサンドイッチを売ることではありません。
時間がかかったとしても、一人ひとりに自信をもって出せるサンドイッチを売るのがポリシーです。
そこだけは、店長として譲れないのです。
「それにしても、人が来ないものじゃのー。」
「まぁ、当然っすよ。人通りがあってもそもそもチラシとか宣伝してないっすから。」
「賑やかなのが苦手な人もいますから。」
「それは冷凍もやしだけじゃろ。わしは賑やかでワイワイしてた方が食べるのも楽しいのじゃ。」
「それもそうっすね。」
「それじゃ明日はアールさんにチラシを配ってもらいましょう!」
「いいのお!あやつならいろんなところを歩き回るから好都合じゃ!」
「では、私はチラシを準備しますのでヘイズさん、ティアラちゃん。少しの間お願いしますね。」
「了解っす!」
「うむ!サンドイッチは任せるのじゃ!」
**{ }**
数分後
目の前には完成したチラシが1枚。近くには印刷所もあるらしいので持って行って印刷してもらいます。
せっかく作ったチラシなのでアールさんにはちゃんと配ってほしいです。
「では、チラシを印刷してきますね。」
「了解っす。」
街にはいろんなお店があります。基本的のお店では1つのお店でいろんなものを売るようなことはしません。例えば食料品を売るお店でも、お肉屋さん八百屋さん魚屋さんお菓子屋さんと品物の種類によってお店が別々なことが多いです。仕入れるのも大変なのもありますが、絞って売ることで他のお店と競合しないという昔からの風習みたいなところもあります。
これは、この国で始まった文化の一つでもありますが、最近では南の方ではいろんなものを集めて売っている大きなお店もあるそうです。
通りは砂岩で舗装されており、中央を馬車やテラスタンクの小型版ことタイニータンク(人によってはタンクを省略してテラスやタイニー。私たちの物よりも大型の物ならヒュージアと呼ぶこともあります。)が走っています。これも南の鉄鋼機械産業というもののおかげだそうです。
更に歩くと、大きくINKと書かれた看板の下には「公立印刷所」と書かれた看板のある建物につきました。
ここが印刷所です。お店も物によっては街が運営していることもあります。
印刷所につくと早速先ほど作ったチラシを印刷してもらいます。数十分待てば完成です。それまでは
休憩スペースで待ってます。
こういった場所でも街の様子というのは意外とわかっちゃうものです。
「そろそろ、息子のキャラバンが戻ってくる時期なのよ。」
「今回はどんな話が聞けるかね。楽しみだよ。」
「明日の講演会、確か財閥の令嬢が来るとか言っていたな。」
「ああ、あのローレン=ツァーリか。それにしても活発なもんだ。うちの商会も世話になってるんだがな。」
キャラバンというのは、商会ギルドなどの商業組織が時頼派遣している輸送旅団の事です。定期的に出向くものや、特定の時期に大規模な移動を行うなど、形態はさまざまです。
そしてローレン=ツァーリというのはここ西の公国ことシェルハラ公国の商会ギルド
「ローレン=ツァーリ西方財閥」という場所の事です。首都「ティタニウム」に拠点を構える西方最大規模の商会ギルドです。
そのギルドマスターは経歴にも有名なものがあるそうなのですが、公には一切公表されていないこともあり、少しばかり謎の残る人だそうです。
あ、この国についてお話しますね。
私たちがいるのはマニュエール大陸の北西にある連合5国ユニオンフィールドの西に位置する
シェルハラ公国という国です。
この国は国土の大半が砂漠でおおわれており、街と街を移動するにもちゃんとした準備がないとすぐに行方不明者として数えられることになってしまいます。
また、この砂漠のいたるところには廃墟のような建物や洞窟などがあり、場所によってはダンジョンと呼ばれる土地になっています。このシェルハラに或るギルドにはダンジョンに行きたいメンバー(ギルドに所属する人たちの事)が多く、冒険の国とも呼ばれています。
私はもともと南にある国の出身ですが、シェルハラに近かったこともあり、何度かキャラバンや商会ギルドのお世話になっています。
「XXXの券をお持ちの方ー。印刷が完了しましたので受け取りに来てください。」
どうやら印刷が終わったようです。
そこには
「・・・えーっと」
「いやぁ。最初は驚きましたが、こんなに刷ったのは久しぶりですよ。」
「あ、あの。私は60・・・」
「確かにチラシ9000枚!ここに書いてある通り印刷して置いたよ!」
そこには枚数の所に9000と書かれた印刷依頼書が一枚。
よく見ると桁を書き間違えるだけならよくありありますが・・・
「向き・・・逆でした・・・」
**{ }**
数分後
「・・・確かに、君にとっても私にとっても緊急事態なのは事実だが。」
「ごめんなさい!まさかこうなるとは思わなくて!」
「いや、そこではない。そういうことでもない。枚数が多いだけならまだましな方だ。」
印刷所で9000枚もチラシを印刷した人がいるといううわさを聞いたロストワールさんが来てくれたおかげで
少しは何とかなりそうだと思っていたのですが。
「これは、さっそく一仕事しなくてはならなさそうだな。」
9000枚分の印刷代でお金がほとんどなくなってしまいました。この国では印刷用のインク自体が貴重品なこともあり、印刷代はかなりの物なのです・・・。さらに、今日中にと依頼してしまったこともあり、その分更にお金が増してしまったという悪循環。
「それで、このチラシは何のためのチラシになるんだ?」
「お、お店の広告ようにと・・・」
「なるほど。問題はこのチラシをどこに挟むかだな。」
そうです。この9000枚のチラシ。普通に私たちだけでなんとかできる量ではありません。
しかし、そこはとっさの機転を利かせて、
「た、確かローレン=ツァーリ財閥の講演会があるそうなんですが!」
さっきの話によると明日の講演会にはきっとたくさんの人が来るはずです。全部とは言わなくても。半分くらいは配れたらいいかなと思っています。
「・・・あいつか。いいだろう。あいつなら喜んで引き受けてくれるだろうな。」
「そこでチラシを配りましょう!」
チラシの束を私が持とうとした瞬間、
「今から会場内で配布するよう依頼しに行くぞ。」
・・・え?
「その方がいい。その9000枚全部だ。」
「・・・え?」
「どうした。その方が都合がいいだろう。その講演会には人が来る。ならその人たち全員に配るまでだ。それでも残ってしまった場合はその時に考えればいい。」
始まってしまいました。
ロストワールさんはことあるごとに無茶なことを思いついた上に自分も巻き込む勢いで本気でやってしまう癖があるんです。
それに何度か助けられていることもありますが・・・
「行くぞ。」
「えっ!あっ!はい!」
せめてチラシ持って行ってくださいーい!!!
「・・・すまない。半分もとうか。」
こんにちは。電波式廃墟少年です。
ちょっと書き方が変わったと思うかもしれませんが、ここにもちょっとした趣向を。
今回はサンドイッチ屋の店長ことサーシャ目線で書いてみただけですので。
次回は新しい人物が出ますが、どんな人であってもどんな文章であっても序盤だからということで・・・。