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04 四回目。




 私は、波打つペリドットの髪を後ろに払いのけた。ベッドから降りる。

 今日も四月十三日の金曜日。土曜日はまたもや来ない。

 バスルームに行って、顔を洗う。歯を磨きながら、ストレッチをした。髪をブラシでとかしながら、バスルームを出てクローゼットを開く。

 鏡に映る姿の姿を見ながら、制服のドレスに着替えた。

 手を見れば、当然メモった呪文は書いていない。当然か。また図書室に行かなくては。


「ローガン先生に会って、図書室で呪文をメモる。それから中庭に行く」


 私は今日の予定を呟いて、クローゼットを閉じた。

 私は寮の部屋から飛び出して、長い髪を靡かせて坂を上がった場所に聳える純白の学園に登校した。


「おっと!」


 今日は玄関に入って、寸前で立ち止まり、サピロス・ザフィリイアとぶつかることを回避した。


「危なかったね、おはよう。ペリドットちゃん」

「……おはようございます、サピロスさん」


 結局五日連続この人とぶつかったことに腹が立ち、睨み上げる。

 フン、と鼻を鳴らして挨拶をした。


「え、ペリドットちゃん、なんか機嫌悪い?」

「別になんでもないですけど」

「そう? あと、オレのことはサピロスでいいよ」

「サピロスさん」

「ペリドットちゃんってば……」

「では失礼します」


 行く手を阻む彼を避けて、先を進む。

 真っ直ぐ向かう教師のいる職員室。その途中でダークブラウンの巻き髪と黒いローブを羽織った後ろ姿を見付けた。


「ローガン先生!」

「ん? おはよう、ペリドット・ガルシア」

「おはようございます」

「なんだ、機嫌がいいな。何かいいことでもあったのか?」

「……覚えていないですか? 昨日のこと」


 また期待したけれども、どうやらローガン先生はまたもや覚えていないようだ。


「悪い、何か約束でもしたか?」

「……実は相談したいことがありまして」

「なんだ?」


 私は仕方なく昨日と同じく率直に伝えた。

 同じ日がループしているのだと。自分はそれに気が付いてしまった。

 そして四度目の相談で、ローガン先生は自分にもう一度話すように言ったことも話した。


「時間をいじった何者かが学園にいるということだな」


 ローガン先生はまた疑うことなく信じてくれたけれど、困ったように顎を摩る。

 同じ会話をしてから、私は手掛かりを見付けたことを話した。


「実は昨日ジュビリー・ゴールドという生徒が爆発事件を起こしたのですが」

「またジュビリーがやらかしたのか……」

「その際に生徒会長が来まして、何か事件がないかと問うと中庭に騒ぎが起きていると答えたのです。手掛かりかもしれません」

「そうか。昼休みは見回りをしているからな、あいつ。期待は出来るな」

「とりあえず、図書室に行きましょう。呪文を教えてください」

「そうだな」


 私から促して、図書室へと歩み出す。

 ローガン先生の後ろをついていくと、顔だけ振り返った。


「あと、また巻き戻ったら、オレに相談してくれ。もしかしたら覚えているかもしれない」

「わかりました。そうします」

「よし」


 そう魅力的な笑みを浮かべるローガン先生。

 でも次は期待しない。


「マルガリタリ、いたのか。おはよう」

「おはようございます……何しにきたんですか?」


 眠気たっぷりの声。カウンターの向こうの椅子にだらしなく座って本を読んでいたのは、本の虫、図書委員長のマルガリタリ・リートゥム。


「禁忌の魔導書を見せて欲しい」

「はぁい……朝から禁忌の魔導書を見るなんて穏やかじゃないですね」


 栞を挟んで、本を閉じたマルガリタリ。カウンターに置こうとしたけれど、その表紙にスルリと栞が落ちる。

 また落ちた。

 それを私が拾う。


「落ちましたよ」

「……」

「……」


 マルガリタリは絶望したような顔をしていた。

 わなわなと震えて、栞を受け取ると、すぐに本を開く。

「どこまで読んだ……どこまで読んだ……」とぶつくさ言いながら、最後に読んだページを探した。


「113ページだと思いますよ」

「!」


 一度顔を上げて真珠の瞳で私を見たマルガリタリは、すぐにそのページを開く。


「……ありがとう!」

「いえ、どういたしまして」

「……」


 とても喜んだような輝いた瞳で私を見つめてきた。

 だから、そこまで反応しなくても。


「あの、急いでいるんだが」


 ローガン先生が、苦笑を漏らす。

 マルガリタリは今度はしっかり栞を挟むと、そっと本をカウンターの上に置いた。

 それから首にぶら下げていた鍵を持って、カウンターから出る。


「マルガリタリ・リートゥムの名の下に、解放する」


 ポーッと蛍が舞うような光の玉が溢れ出して、図書室の奥の施錠されていたスペースが開かれる。

 ローガン先生は迷うことなく、灰色の鉄の表紙を開いた。


「時を巻き戻す魔法は……ここのページだ。おいで、解く呪いが書かれている」

「これを発動者の目の前で唱えればいいのですね。ペンをお借りしてもいいですか?」


 私はすぐに手首に呪文を書き写した。


「なんですか? 時の禁忌の魔法を使って、ループが起きてしまっているんですか?」


 壁に凭れているマルガリタリが問う。


「そうなんだ。お前じゃないだろうな?」


 ローガン先生は冗談を言う。


「そんなハイリスクな魔法を使うお馬鹿さんではありません」


 メモを終えると歩み寄ったマルガリタリが、私の目を覗き込む。

 また目を輝かせていた。


「あなたがループから抜け出したということですね。頑張ってループから解放してください」


 今日も本の続きが読みたい感がない。


「なるべく早くループを解けるように善処いたします」


 私はそれだけを応える。


「ああ、頑張ってくれ。とりあえず昨日と同じ行動をして、中庭に行ってみろ」


 ローガン先生は、私の肩をポンッと叩いた。


「はい。わかりました」


 そのローガン先生と教室に行き、窓際の席に座る。

 そして、午前の授業を受けた。これも六回目で、ノートを取ることにうんざりしてしまう。小テストでもあれば、満点が取れて楽しいのだけれど、残念なことにそれはない。

 何回言っているんだろう、これ。

 いつも一緒にランチをとる友だちに断りを入れて、校内を歩いた。


「さて、中庭に行きましょうか……」


 自分の顎を摘んで、呟く。


「あ、ペリドットちゃん」

「……サピロスさん」


 食堂に向かおうとしたであろうサピロスと目が合ってしまう。

 これも回避したいものだ。


「なんでオレのことさん付けするの?」


 それはあなたが女たらしだから、距離を置くため。


「私の勝手でしょう。さようなら」

「待ってよ。一緒にランチでもどう?」

「私、用があるので、お断りします」


 はっきりと断りを入れて階段を駆け下りていく。

 サピロスが首を傾げた。


「何の用? そんなに急いで」

「あなたには関係ありません」


 そこでボンッと爆音のような音が遠くでしたけれども、気に留めることなく、中庭に出る。

「今爆発音しなかった?」と尋ねながらついてくるサピロス。

 中庭には、学年二位のエリオト・ハイマティーテースがいた。赤髪に赤い瞳の顔立ちのいい男子生徒。それと数人の男子生徒が向き合っていた。

 ただならぬ空気だ。数人の男子生徒達の方は怒った顔で、エリオトを睨みつけている。喧嘩をする雰囲気だ。


「ちょっと待った!!」


 私はそこに大きな声を響かせた。

 普段なら見て見ぬ振りをするけれど、今回だけは仲裁して訳を尋ねてみよう。


「ええ? ここで声かけちゃう!?」


 まだついてきていたサピロスが戸惑う。

 うるさい関係ないでしょうが。


「なんだい? ペリドット・ガルシア。今から魔法対決をするんだ。邪魔をしないでくれないかい」

「こいつが挑発してきたんだ!」

「負け犬がワンワン吠えるなよ、うるさい」

「なんだと!!」


 どうやら原因は、エリオトの性格にあるらしい。

 学年二位だもの。天狗にもなる。

 ちなみに私はずば抜けて魔法生物が優れているだけで、あとは平均的な成績だ。


「魔法対決は、教師の立会いがなければいけませんよ。それにもう少しで生徒会長が来ますよ」

「ちょうどいい。生徒会長に立ち会ってもらおうじゃないか」


 エリオトは、やる気満々だった。

 血の気の多い生徒でもあるのだ。

 はぁ、やれやれとため息をつく。

 私はエリオトと男子生徒達を交互に見てから、とりあえず呪文を唱えることにした。手首に書いた呪文を読み上げる。

 男子生徒達は何の呪文かわからずに、顔をしかめて私を見た。


「君……その呪文はまさか、ループに」


 エリオトだけは解くための呪文だと知っているようで、目を丸める。

 流石は学年二位の成績の持ち主だ。

 読み終える。けれども、魔力の反応は丸っきり感じない。

 ぽかんとした私は、瞬きした瞬間にベッドの中にいた。


「外れかよ〜!!」


 私はベッドの上でのたうち回る。そしてベッドから落ちた。

 てっきりエリオトに負けた男子生徒の誰かが時を巻き戻す魔法を行使したのかと思ったけれど、あの場にいた者は外れだ。


「振り出しっ!!」


 手掛かりを失って振り出しに戻されたことに悔しくて、ベッドをダンダンと叩いた。





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