表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君にこの音が届くまで  作者: 神無月 タクト
3/6

そして不安の詰まった一日が始まる

 枕もとで甲高い金属音が小刻みに耳を貫く。手探りでその元凶に触れると、半ば自動的にアラームのスイッチをOFFにした。

 一夜分の自分の温もりが染み込んだ毛布を惜しみながら体の上からどかして、小さく伸びをする。いつも通りの朝の風景、しかし、今日一日のことを考えた途端に、気持ちは憂鬱になった。

 とうとう迎えてしまった、高校生活二日目の朝…本格的な授業の開始、おそらくあるであろう自己紹介イベント…そして何より恐ろしいのは___

「弁当か…」

 高校生になったからには当然給食は出ず、弁当制となるのだ。そして当然、中学校までとは違い、席も自由、その上で昨日僕は一度もクラスメイトと話せなかった。つまり僕が今、一番恐れている事態は、教室で一人だけ孤立し、下を向きながら弁当を食べなければいけなくなるのではないのか?そんな学校生活は絶対に嫌だ!

 何もしないで孤立するわけにはいかない。自分の力で未来に抵抗してやる!


 勝負は自己紹介イベントだ!


静かな決意を胸に、力強く起き上がった。


※ ※ ※ ※ ※


 いまだに寝ぼけたまぶたを擦りながらゆっくりと階段を下りていくと、勢いよく玄関が開かれる音がした。視線を向けると、肩まである黒髪を後ろで一つ結びにした妹が、靴を履きながら玄関の敷居を越えていた。

「いってきまーす」

 たいして声を張っている訳でもないのに彼女の声は家の中によく響く。そして父がその声を目覚まし代わりにして起きてくるのが我が家の日常だ。

 どうやら静音は、今日から朝練が始まるようだ。

「ぉはよー」

 すでに朝食の並んでいる食卓に座りながら、キッチンにいる母に、間の抜けた挨拶をする。すると少し遅れて父が自室から出てきた。父にも一応朝の挨拶をしてから、机に置かれたトーストを一口かじり熱々のコーヒーを火傷やけどしないように気を付けながらすすると、先ほどよりもわずかに脳がクリアになる。そしてクリアになった思考に先ほどの今日起こるであろう嫌なイベントのリストよぎる。大げさなのは自分でもわかっているのだが、不安なものは不安なんだ。


 頭の中で広がる無数の不安を、熱いコーヒーと共に飲み込んだ。


「あぢっ!」


 そして見事に火傷した。

なんだかこのままだと、高校デビューができなかった男の子が”脱ぼっち”する話になってしまいそうですね(笑)

近いうちにしっかりと吹奏楽の物語に軌道修正するつもりなので、しばしお待ちを!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ