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夢の心93
「僕が前のように優しい夫、優しい父親になれば、君はいいわけだ?」と私は妻に尋ねた。
私は自嘲ぎみに微笑み言った。
「僕の心は壊れて、この夢の迷路の中でひたすら黒い闇の快楽を求めてさ迷っているのか?」
妻が言った。
「それは貴方の本望でしょう。違うの?」
間を置き私は答えた。
「それはそうだが、さ迷うのは嫌さ。まるで迷子と同じではないか」
妻が皮肉めいた笑みを頬に湛え言った。
「心を無くした子供なのだから、迷子になるのは仕方無いじゃない?」
私は再度自嘲ぎみに微笑み言った。
「僕が前のように優しい夫、優しい父親になれば君はいいわけだ?」
妻が答えた。
「そうね。でも怖い優しさは願い下げよね」
私は言った。
「それでは子供達の為にも、僕がその強い心の優しい夫、優しい父親になれるかどうか試してみるというのはどうかな?」




