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夢の心85
「黒い闇の快楽になる為に僕の人生はあったのさ」と私は言った。
妻が続ける。
「貴方は昏睡状態の中で、夢に心を奪われ、愛を無くしてしまったのね」
私は能面のように強張った表情のままに否定した。
「いや、僕には最初から心が無く、愛もなかったからこそ、自殺したのだから、最初から人生の目的はひとつしかなかったのさ」
妻が息を抜くように嘆息してから言った。
「ひとつとは何?」
私は答えた。
「黒い闇の快楽になる為に僕の人生はあったのさ」
妻が言った。
「本当に貴方は変わってしまったのね」
私は否定した。
「僕は同じさ」




