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夢の心81
「生と死の狭間がこの夢の迷路じゃないか」と私は言った。
妻が嘆かわしい顔をして続ける。
「貴方は生き返ったのよ。それが嬉しくはないの?」
私は無表情な顔付きを崩さず答えた。
「僕は死にたかったのだ。でもこの夢の迷路の中では死ぬ事も許されないらしいのさ」
妻が言った。
「何が言いたいの、貴方は?」
私は答えた。
「だから僕は黒い闇の快楽と一体化した死を望んだのに、それも許されなかったのさ」
妻が再度ため息をつき言った。
「ならば貴方は今生きているの、死んでいるの、どちらなの?」
私は無機質な口調で答えた。
「生と死の狭間がこの夢の迷路じゃないか」




