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夢の心5
分かった、桃の花の心になりたいと、念じてみると私は女性に向かって言った。
私は頓狂な声で尋ねた。
「何だ、その桃の花の心というのは?」
女性が冷静な口調で答えた。
「ですから桃の花の心になるのですよ」
私は首をひねる動作も出来ないままに、ひきつる声で尋ねた。
「しかしおぼろ月を見上げて、ここに封じ込められ、それを解くのに桃の花の心になれと言われても、どうしていいのか分からないではないか?」
女性が答えた。
「ですから考えるのではなく、念じるのです」
私は唸り声を上げてから神妙に答えた。
「分かった。念じればいいのだな?」
「そうです」
私は息をつき女性に向かって言った。
「ならば僕の念じ方がおかしかったら、指摘してくれないか?」
女性が肯定した。
「分かりました」