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夢の心46
「苦しみにのたうち回るよりは、心地良い方が余程増しさ」と黒い闇の声が女性に向かい言った。
私は力なく言った。
「でも、この、心地良さからは、抜けたくはないのだよ、わ、分かってくれないか?」
私の弱音に黒い闇の声が同意した。
「そうだ、お前はその喜悦快感と同化して、本来お前が望んでいる闇の無としての桃源郷に戻ればいいのさ」
女性の声が黒い闇の声に抗議した。
「死ぬ事なんが桃源郷ではありません!」
黒い闇の声がどす黒くせせら笑い言った。
「うるさい、ならば尋ねるが、迫害され虐め抜かれて、不安と孤独感に苛まれるのが桃源郷なのか?」
女性が瞬時怯む間を置いてから言った。
「それでも無に帰すよりは増しです」
黒い闇の声が再度せせら笑い言った。
「苦しみにのたうち回るよりは、心地良い方が余程増しさ」




