夢の心437
私は自我崩壊混濁する心でちーちゃんの手を引っ張り、ちーちゃんと手を繋ぎたどたどしく言った。
「た、だいま、ち、ちーちゃん」
ベッドに横たわるちーちゃんが涙ながらに微笑んで答えた。
「パパ、お帰りなさい」
妻の声が海の波間を漂う光る空の広がる浮き輪になり┅。
私は自我崩壊した桃の花の輪郭おぼろげな身体になって┅。
身体の外側と内側のほとりを、矛盾して浮き輪のように浮き沈みする広げた拳の白い目が、私ははかない小宇宙を漂って見つめながらもの悲しく回転している┅。
ただ手の温もりが、自我崩壊の、まとわりついたエクスタシーを、その引力で桃の花の心に順次変え、その身体の外側なのか、内側なのか分からない手の温もりの快楽の中でそっと花びらを手繰り寄せ┅。
バラバラになった桃の花の花びらの浮き輪の目で凝視すると、下から上への回転軸が同時に上から下への回転軸に変わったのが見え┅。
その混濁した心の襞がエクスタシーをちーちゃんの手の温もりに変え、私は混濁混乱する心の中心軸に水の滴る望遠鏡のようにエクスタシーの慈しみを添えてから、ちーちゃんの手を引っ張り、その温もりを少しずつ手繰り寄せた┅。
そして私は混濁するエクスタシーそのものとなりつつも、ちーちゃんの手の温もりを混濁する心で引っ張り続け、渾身の力を以て引き寄せた┅。
そして私はちーちゃんと手を繋ぎ、その温もりに、ふと瞼を開き、たどたどしく言った。
「ち、ちーちゃん、パパ、か、帰って来たよ、か、ち、ちーちゃん、家に帰ろう、か」
私の手の温もりがベッドに横たわるちーちゃんの目を覚まし、ちーちゃんが涙ながらに微笑んで言った。
「パパ、お帰りなさい」
私は会心の笑みを湛え再度たどたどしく答えた。
「た、だ、いま、ま、ち、ちーちゃん」
家族しか信じられない愛が広がり、皆が家族のように手を繋ぎ、愛を語れる世の中になれば良いという理想を添えて、完結します。拙著通読有り難うございます。




