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夢の心436
「あ、な、た、さ、よ、う、な、ら」と妻が静かに言った。
己の身体が全てエクスタシーに満たされ消えて行くのと同時に意識が混濁して、自我が崩れ、瓦解して行くのを抑える事が出来ない。
矛盾不条理に満ちた光景が身体の内側と外側のどちらか識別出来ない不能状態のままに成されて行く。
光の草むらに尻尾をつけた眼球が複数私を見ているが、見ているのは身体の内側の私であり、見られているのも身体の外側の私であるというもとがしさが、暗い稲妻の食料となって腹を破壊して満たす不条理な体感が無上のエクスタシーの源になっている回転に、私は狂おしく喜悦しているのが瓦解の内側で分かる。
そこで消えて行く稲妻の花の満開模様の向こう側に矛盾して一本の手が見えた。
私はその手を繋げばもっとエクスタシーを感じられると瓦解する思考で不条理に感じ、手を繋ぐ為に手を振った。
そこで妻が静かに言った。
「あ、な、た、さ、よ、う、な、ら」




