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夢の心430
「快楽は永劫に続けば、単なる苦痛な、の、が、分からない、あ、な、た」と妻がせせら笑い言った。
私は喚いた。
「ちーちゃんを出せちーちゃんを出せ、ちーちゃんを出すのだ!」
妻が太い声で答えた。
「貴方は愛人とのめくるめく快楽に耽溺しての罰が、この状況ならば、その快楽に押し潰されそうな苦しみの中で、家族愛、親子愛を取り戻し、塗炭の苦しみを味わうのは無上のエクスタシーじゃない、あ、な、た」
私は逆らい叫んだ。
「うるさい、俺は負けない、ちーちゃんを出せ、出すのだ、腐れ外道め!」
妻が今度は拍手を贈って来て、せせら笑い言った。
「その欺瞞的偽善者意気地意気も、貴方の無上のエクスタシーを増幅している材料だから、自我崩壊し、な、い、でね、あ、な、た」
私はかぶりを振って涙を振り払い喚いた。
「うるさい、ちーちゃんを出せ、出すのだ、腐れ外道!」
妻がせせら笑い言った。
「腐れ外道、腐れ外道と、まるで壊れた玩具みたいね、愉しい、あ、な、た」
そう言って妻が高らかにせせら笑い続けた。
「快楽は永劫に続けば、単なる苦痛な、の、が、分からない、あ、な、た」




