38/437
夢の心38
「殺す必要はない、お前はやがて恐怖と不安と寂しさに自滅するからな」と黒い闇の声は言った。
混乱した心を顕にして私は震える声で尋ねた。
「僕はみなしごで、その寂しさと不安に耐えられず、何度も自殺を図ったのか?」
黒い闇の声が肯定した。
「その通りだ」
僕は涙を流したままに尋ねた。
「家族がいない僕は何処で誰と一緒に暮らしていたのだ?」
黒い闇の声が優しく囁くように言った。
「孤児院さ」
私は改まった口調で尋ねた。
「何故僕は自分の事を何も覚えていないのだ?」
黒い闇の声が静かな口調を崩さず答えた。
「それはお前が統合失調症のまま生死の境目をさ迷っているから、記憶が失せたのだろう」
私は嘆息してから尋ねた。
「何故貴様は僕を殺さないのだ?」
黒い闇の声がうそぶいた。
「殺す必要はない。お前はやがて恐怖と不安と寂しさに自然と自滅するからな」




