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夢の心377
「黒い闇も人間感覚には違いあるまい」と私はもう一人の自分に問いかけた。
私は自分自身を叱咤激励した。
「夢だろうが何だろうが、あらゆる現象は夢幻泡影のものならば、そこで一々一喜一憂していたのでは、永遠なる黒い闇の快楽にはなれないぞ」
「そうだな┅」
「人間としての心をなくした事はお前にとっては行幸ではないか?」
「そうだな┅」
「ここまで来たら、寂しさを感じるどころではなく、完全に人間の心を捨て去り、無と化して黒い闇の快楽と一体化するしかあるまい」
私は頷き翻って反論した。
「そうだな、だが黒い闇の快楽も人間感覚には違いあるまい?」
もう一人の私が反論を重ねた。
「いや、人間は黒い闇に快楽など見出ださないからな、人間感覚ではあるまい」
「そうかな?」
「そうだと思う」




