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夢の心376
「黒い闇からは遠ざかっていると思う」と私は自問自答を繰り返す。
再度固唾を飲み、私は自問自答を繰り返す。
「しかしあの女性の話しでは、この世界には時間の流れはなく、一つしか無いと言っていたからな、これが夢の迷路の本来ある姿なのかもしれないな?」
「お前、家族を失って悲しいのか?」
私は蝋人形のように固まって動かないくすんだ色の妻や子供を見やり言った。
「悲しみは無い、ただ┅」
「ただ何だ、寂しいのか?」
間を置き私は答えた。
「家族云々の話しではなく、完全に世界に取り残され、一人ぼっちになってしまったのだから、寂しく無いと言ったら嘘になるだろう」
「まあ、それはそうだが、それよりもどうだ、黒い闇に近付いているか、遠ざかっているか、感触はどうだ?」
私は沈思黙考してから答えた。
「遠ざかっていると思う」




