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夢の心341
この生存の証たる肉体感覚を失う事なく、何が何でも黒い闇の快楽になってみせると私は改めて念じた。
迷路に出た途端私は地に足を付けている筈なのに、唐突に落下した。
急速度で落下しているのに何故か周囲の光景が克明に見える。
紺碧の空が桃の花の色で染まり、不条理にもその鳴き声が幾重にも重なって耳に見える。
その不条理な落下をしながら、私は女性の「寂しくはないのですか?」という言葉を思い起こし、そぞろ寂しさを感じたのだが、私はそれをかぶりを振って振り払いにかかった。
やがて静かに足から着地すると、その寂しさは嘘のように消えた。
再度私は落下した迷路に逆戻りして足を踏ん張り念じた。
この生存の証たる肉体感覚を失う事なく、何が何でも黒い闇の快楽になってみせると。




