夢の心28
「いえ無理です。この戦いは貴方自身の生死を懸けた戦いですから、私には助言しか出来ません」と女性は言った。
少し間を置いてから女性が付け加えた。
「貴方は重い心の病にかかり、その苦しみを克服する為に夢の迷路をさ迷っているのです」
私は遠近感の失せた闇を凝視しつつ尋ねた。
「この迷路の苦しみは僕の病の反映なのか?」
女性が肯定した。
「そうです。そして貴方はその苦しみを克服して、私を助け、安息たる地としての家にたどり着かないと、本当に死んでしまうのです」
私は死の恐怖に震え、涙ながらに言った。
「でも僕は僕の心の原点である桃の花の心になったのだから死ぬ事はないだろう?」
女性がおもむろに言った。
「いえ、貴方は生死の境をさ迷っている状態であり、最後の試練と言うか、戦いを繰り広げているのです」
私は震える声で再度尋ねた。
「貴女は僕を助けてはくれないのか?」
女性が言った。
「いえ、私にはどうする事も出来ません。これは貴方の生死を懸けた戦いなのです」
私はすがり付くように言った。
「家族ならば助けてくれ!」
女性が突き放すように言った。
「いえ無理です。これは貴方自身の生死を懸けた戦いですから、私には助言しか出来ません」




