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夢の心268
「いや、何度も言うようだが僕は苦しむのは嫌なのだ」と私は言った。
女性が言った。
「自我崩壊すれば、貴方の存在そのものが消え失せるのですよ。それでもいいのですか?」
私は嘆息してから答えた。
「仕方ないじゃないか。僕にはなす術が無いのだから┅」
女性が身体の輪郭を背景に溶け込むように明滅させながら言った。
「再度言いますが、逃げて自殺を選択するよりは、生きる希望を持てば違うと思うのですが、違いますか?」
私は再度嘆息して憂いを湛え言った。
「いや、僕の本心がどう思うのかは知らないが、僕は実際問題何も覚えていないし、苦しむのは真っ平御免だからな」
女性が言った。
「でもそれが貴方の本心の要求ならば、素直に従う方がいいのではありませんか?」
私は答えた。
「いや、これも何度も言うようだが、僕は苦しむのは嫌なのだ」




