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夢の心262
「いや、今の僕には自殺する勇気もないから、この迷路をさ迷っているのさ」と私は答えた。
私は続けた。
「子供達や妻に塗炭の苦しみを与え、心を深く傷付け、これから産まれる赤ちゃんの命をも奪い、他にも大勢の人を傷付け苦しめでいる僕の心は、それが本当に事実ならば、けして美しくなんかないと断じて思う」
女性がおもむろに言った。
「その通りだと思います。だから貴方はこの迷路で苦しみ、他者の心を傷付けた罪を認めたのですから、それを償う為にも、貴方の本心は生きたがっているのですよ」
私は首を振り否定した。
「いや、逆だと思う。僕の醜い本心は償う事からも逃げ、再三言うがそれが本当に真実ならば、生き返ったとしても自殺するのが落ちさ」
女性が言った。
「そこまで言うのならば貴方はこの迷路で自殺するのですか?」
私は答えた。
「いや、今の僕にはその勇気もないから、この迷路でさ迷っているのさ」




