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夢の迷路  作者: 岩本翔
262/437

夢の心262

「いや、今の僕には自殺する勇気もないから、この迷路をさ迷っているのさ」と私は答えた。

私は続けた。


「子供達や妻に塗炭の苦しみを与え、心を深く傷付け、これから産まれる赤ちゃんの命をも奪い、他にも大勢の人を傷付け苦しめでいる僕の心は、それが本当に事実ならば、けして美しくなんかないと断じて思う」


女性がおもむろに言った。


「その通りだと思います。だから貴方はこの迷路で苦しみ、他者の心を傷付けた罪を認めたのですから、それを償う為にも、貴方の本心は生きたがっているのですよ」


私は首を振り否定した。


「いや、逆だと思う。僕の醜い本心は償う事からも逃げ、再三言うがそれが本当に真実ならば、生き返ったとしても自殺するのが落ちさ」


女性が言った。


「そこまで言うのならば貴方はこの迷路で自殺するのですか?」


私は答えた。


「いや、今の僕にはその勇気もないから、この迷路でさ迷っているのさ」

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