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夢の心26
「家族の顔を思い出せないのも、僕自身が僕を苦しめている証なのか?」と私は言った。
女性が反論した。
「でも貴方は家族の顔を忘れているのですよね。ならば私は家族であるかもしれないではありませんか?」
闇をまさぐるように私は震えた声で笑い言った。
「でも貴女は僕と道端で出逢い、意気投合したと言っていたではないか?」
女性が冷静沈着な口調で答えた。
「夢の迷路は不条理の世界なのです。つかず離れず貴方を見守りサポートする私が貴方の家族であってもおかしくないではありませんか?」
私はせせら笑い言った。
「今度は貴女を家族として愛せと言うのか、こんなに僕を苦しみでいる貴女を?」
女性が言った。
「貴方を苦しめているのは貴方自身なのです」
私は再度震える声で笑い言った。
「家族の顔を思い出せないのも、僕自身が僕を苦しめている証なのが?」
女性が言った。
「そうです」




