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夢の心251
「僕には心がある!」と私は怒鳴った。
女性が続けた。
「それに貴方は両親の事を覚えていないのに、両親を慕っているのですか?」
私は間を作るように一度息を吐き出してから言った。
「そんなのは常識的な事柄じゃないか。誰だって両親を慕うのは当然の事なんだし」
女性が冷淡に言い放った。
「その常識的な心が無いからこそ、貴方はここで苦しんでいるのでずよね」
私は逆上して喚いた。
「心があるからこそ、僕は君と話しを出来ているのじゃないか?!」
女性が言った。
「冷酷な心の持ち主でも人と話しは出来ますよね?」
私は怒鳴った。
「僕には心はあるのだ、こんな所、嘘と欺瞞だらけじゃないか、言い掛かりをつけるな!」
女性が動じることなく応じた。
「この迷路は矛盾していて不条理なのですが、嘘や欺瞞はありません」
私は再度怒鳴った。
「君だって僕を矛盾した言葉で騙してばかりいるじゃないか?!」
女性が言った。
「貴方の心には苦しみが必要だからこそ、この迷路がそうしているのです」




