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夢の心240
「身に覚えはありませんか┅」と夢の迷路の女性が言った。
無数の赤子の声が遠く聞こえなくなり、私の自我崩壊した心がまるで凝固するが如く私はそぞろ目を覚ました。
がらんどうの部屋。
迷路の女性が目の前にいる。
女性が言った。
「目が覚めましたか?」
私はかぶりを振り答えた。
「無数の赤子なんか僕は殺していないぞ」
女性が答えた。
「何の話をしているのですか、ここは貴方の心の迷路ですよ」
私は嘆息してから答えた。
「だから僕は僕の心の迷路で、狂った無数の赤子の声を聞いたのだ」
女性が無機質な口調で尋ねて来た。
「貴方には身に覚えはないのですか?」
私は答えた。
「僕は何も覚えていない、だから僕には身に覚えなんか無い」
女性が物静かに言った。
「そうですか、身に覚えはありませんか┅」
物静かな女性の声が、がらんどうの部屋に家具や調度品を、まるで重複して入り込む迷路のように、ぼやけつつも
明瞭化して行き姿を現して行った。




