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夢の心238
「ぼ、僕は無数の赤子なんか殺した覚えはない!」と私はうろたえ叫んだ。
私は抗った。
「ぼ、僕は無数の赤子なんか殺した覚えはない!」
迷路が重複して幾重にも重なり、それが交錯して、ぼやけ矛盾して明瞭に見え、その全体としての相矛盾する一部から愛人が答えた。
「一人でも殺した事が無数に殺した事じゃない」
私は泣き叫んだ。
「そんなの余りに理不尽だ!」
愛人が妻の声で言った。
「理不尽なのが貴方の心であり、その心の反映としてのこの迷路なのよ」
私は再度抗った。
「ぼ、僕は自分の心で無数の赤子など殺した覚えはない!」
愛人が遠くになり近くになる声で言った。
「貴方の心は狂った心の迷路だからこそ、貴方は狂った自身の心で無数の赤子を殺したのよ」




