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夢の心234
「止めてくれ!」と私は両耳を塞ぎ顔を歪めて絶叫した。
迷路の蠢く無数の声が私を矢継ぎ早に責めて来る。
「お前が結婚したのは妻を利用する為ではないか」
「そうだ、お前は妻の実家から金を引っ張り、その金で愛人を作り快楽を貪ったのだ」
男の声が迷路の蠢きを反転反射させ女の声に様変わりして言った。
「貴方なんか女の敵じゃない。そんなの八つ裂きにしても飽きたらないわ」
その声に続き見知らぬ老人の声が加わり不気味に聞こえて来た。
「死ね、愚か者め」
「愚か者、死ね」
「死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、貴様など死んでしまえ」
老人の声が蠢き反転して見知らぬ子供の声に変わり言った。
「腐れ外道、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね!」
その無数の声に混じって妻が迷路の女性の声で言った。
「貴方は私を騙し蔑み見下して、他の女に走ったのよ、腐れ外道さん」
私は両耳を塞ぎ顔を歪めて絶叫した。
「止めてくれ!」




