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夢の心208
「人違いですよ。私は夢の迷路の女性じゃありません」と夢の迷路の女性が答えた。
妻から愛人の居場所を教えて貰い、私はその住所を頼りに住宅街を一人歩く。
だが見慣れない住宅街なので、なかなか目当ての住所にたどり着く事が出来ず、気がつくと同じところをぐるぐる回っており、私は完全に道に迷ってしまった。
私は途方に暮れ、たまたま通り掛かった警官に住所を尋ねると、警官が失笑してから言った。
「旦那さん、この住所はこの区画ではなく、隣の区画ですよ」
そう諭され、私は赤面した後会釈して隣の区画に向かった。
程なく私は隣の区画に入り、住所を手探りで手繰り寄せつつ、歩いている内に不意に目眩がして、倒れそうになったのを一人の女性が咄嗟に支えてくれて、言った。
「大丈夫ですか?」
私はその女性の顔を見て驚き言った。
「君は夢の迷路の女性じゃないか?」
女性が首を振り否定した。
「えっ、夢の迷路ですか?」
私は畳み掛けた。
「そうだ、君は夢の迷路の女性じゃないか、何故君がこんな所にいるのだ?」
女性が答えた。
「人違いですよ。私は夢の迷路の女性じゃありません」




