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夢の心197
「私は貴方を殺したいとなんか金輪際言っていません」と女性が再度冷静な口調で言った。
私は喚いた。
「でも君は僕を苦しめて家族愛に目覚めさせたいと言っていたじゃないか。それはとりもなおさず僕を苦しめて殺したい妻の心の顕れではないか?」
女性が反論した。
「私は貴方を殺したいとなんか一度も考えた事はありません」
私は怒鳴った。
「でも僕は現にこんなに苦しんでいるじゃないか?!」
女性が再度反論した。
「私は苦しむ必要はあると言いましたが、貴方を殺したいとは一度も言っていません」
確かにその言葉は事実なのだが、私は認めず開き直った。
「僕は記憶喪失だから覚えていないが、君は確かに妻と同じように僕を殺したいと言っていたじゃないか?!」
女性が断じて否定した。
「私はそんな事は言っていません。とんだ濡れ衣です」
私は再度怒鳴った。
「濡れ衣を着せて殺そうとしているのは君達じゃないか?!」
女性が再度冷静に答えた。
「いえ、私は貴方を殺したいとは金輪際言っていません」




