夢の心193
「貴方の家族を知っているけれど私は知らないのです」と女性としての妻が言った。
私は混乱しつつ続けた。
「君は妻を知り子供達の事をも知っているからこそ、僕に濡れ衣を着せて、苦しませ、破滅に追い込んだのだろう、正直に言え!」
女性が目付きだけ鋭い妻の眼差しになり、私を睨み付け言った。
「私は私であり、貴方の奥さんでもなければ、愛人でもありません。増してや貴方の子供達も断じて知りません」
私は苛立ち喚いた。
「ならば何故知っているのだ?!」
女性が答えた。
「夢の迷路は貴方の心の反映ですから、反射としての私という存在は対反射で貴方の心を読み取り、同化する分、周囲の状況を分かるから知っているのですが、私自身は貴方の別の角度の反射は理解出来ないから知らず、私は私自身であると主張出来るのです」
私は話しを吟味してから疑問符を投げかけた。
「同化して読み取れるならば、違う角度の状況も読み取れ分かるだろう?」
女性が答えた。
「ですから私は貴方の家族を知っていて相矛盾して知らず、知らないけれども相矛盾して知っているのです。それが夢の迷路のぼうようとした不可思議な矛盾不条理永遠遡行なのです」
私は苛立ち再度喚いた。
「訳の分からない事を言うな。知っているのか、知らないのかどちらなのだ?!」
女性が答えた。
「知っているけれど知らないのです」




