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夢の心19
「貴方が生きている証拠に、貴方は私と話しているではありませんか?」と女性は言った。
闇と化した私は恐る恐る己の手首に指をかけ脈を測ってみたが、脈はなく、私は恐怖の余り絶叫を上げたが、女性は冷静な口調でそんな私を諭した。
「大丈夫です。貴方は死にはしませんから」
闇と化した私は狼狽え喚き立てる。
「大丈夫なものか、脈がないのだぞ、それが死んでいる証拠じゃないか?!」
女性が落ち着いた口調で諭した。
「大丈夫です。貴方は死んでもいないし、闇と化してもいません」
私は泣きじゃくり喚いた。
「それじゃ僕はどこにいるのだ、どこで生きているのだ?!」
女性が即答した。
「貴方は生きて夢の迷路をさ迷っているのです」
私は泣きながら女性の言葉を否定した。
「でも僕には迷路なんか見えないぞ、何も見えない真っ暗闇ではないか?‼」
女性が言った。
「大丈夫です。貴方が生きている証拠に、貴方は私と話しているではありませんか?」




