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夢の心171
これが白い闇の自我崩壊の始まりだと感じ、私は小刻みに震え出した。
妻がいるリビングに足を踏み入れたのと同時に私は桃の花の心になり、その心が花吹雪さながらに散り始めた。
私は確かに妻に対峙して立っているのに、その視線の中に己の心の桃の花が散って行くのが重なるように見える。
どちらが夢で、どちらが現実なのか区別がつかない重なりあった夢うつつの夢幻を前にして私は愕然とする。
心は実際に実存として見えるものであり、その桃の花の心が花吹雪のように散って行くのが妻となって重なりあうように目の前にいる。
これは白い闇の自我崩壊の始まりだと感じ、私はその恐怖に小刻みに震え出した。
その様子を見て妻が言った。
「じろじろ見ないでよ、気色悪いわね」
私は震える声で訴えた。
「す、すまない、助けてくれないか?」




