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夢の心168
この夢の迷路自体が白い闇の悪夢なのだと私は考えた。
妻とタクシーに同乗しての帰路、無言のまま私は窓の外を眺めながら思索を巡らせて行く。
この夢の迷路自体が白い闇の悪夢なのだ。
その白い闇の申し子たる妻としての女性に、取り殺される前に何とか突破口を見出ださなければ、私の命はない。
命がなくなる事はやぶさかではないが、私としては心が自我崩壊するのは何が何でも避けたいのだ。
言い換えれば、私は自我を保持したまま黒い闇の快楽に成りたい。
しかし自分の心に嘘をつく戦略ではどうにも突破口を見出ださない。
何か活路はないかと暗中模索していると、妻が言った。
「着いたわよ」
私は顎を引き曖昧に頷いてから答えた。
「分かった┅」




