夢の心166
仮にここが現実世界であろうとも、自分を狂わせ自殺に追い込んだのは妻だと言う事に私は気がつき、背筋に凍るような悪寒が走り、ぞくりと身震いした。
妻が続けて言った。
「貴方も回復したようだし、退院の手続きをして来るから、身繕いしておいて頂戴」
妻が病室から出て行った後、私はベッドから起きあがり、退院の為の身繕いをしながらそぞろ考えた。
妻の言葉を聞いて明瞭に私は理解した。
ここは夢の迷路であり、妻は女性であり矛盾して女性が妻だと言う事を。
そしてこの理不尽で不条理な矛盾に満ちた世界は自分の心を狂わせ、破滅に追い込もうとしている事を。
そして私はもう少し突っ込んだ思索を巡らせて行く。
仮にここが現実世界であろうとも、自分の心を狂わせ自殺に追い込んだのは妻であるという事を。
この心を発狂させる過酷な世界から私は逃避する為に、桃源郷たる黒い闇の快楽を標榜しているのだという事を。
それは間違いない事事だと私は己に言い聞かせ、病室の中をゆっくりと見回した。
夢が現実に変わり、現実が夢に変わる
変幻自在なる面妖な世界は、そのまま手で触れば物体感覚のある正体不明の物質としての、人を取り殺す妖怪変化なのだと感じ、私は背筋が凍るような悪寒を覚え、ぞくりと身震いした。




