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夢の心163
「家族なんかもうとっくに崩壊しているわよ。私はただ貴方が破滅するのを楽しみながら待っているだけなのよ」と妻が冷笑してから言った。
ここは夢の迷路に違いないと私は内心思いつつ言った。
「酷い事言うなよ、ならば訊ねるけれど、どうして君は僕を追い出さないのだ?」
妻が代わる代わる女性の声に声変わりしつつ答えた。
「世間体よ、体裁に決まっているじゃない」
私はすかさず言った。
「世間体を取り繕って家族崩壊じゃ、洒落にもならないじゃないか?」
妻が答えた。
「家族なんかもうとっくに崩壊しているわ。私はただ貴方が破滅するのを楽しみながら待っているだけなのよ」
私は言った。
「僕が黒い闇の快楽になることは破滅することではないだろう?」
妻が冷笑して言った。
「貴方は黒い闇の快楽になんかなれないわ。白い闇の自我崩壊がお似合いなのよ」




