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夢の心162
「と言うか、貴方は病気で心を失ったわけではなく、最初から冷酷な心しか持ち合わせていなかったのよ」と妻が言った。
私は瞬きを繰り返してから心にもないことを言った。
「何か物悲しい話しだな┅」
妻の声が再度妻の声に戻り嘲笑い言った。
「心無い貴方にそんな悲しみなんかあるの?」
私は苦笑いを浮かべて嘘をついた。
「それはあるさ」
妻が充血した目を細め、冷ややかに言った。
「そんな言葉信じられないわ」
私は再度嘘を重ねた。
「僕にだって感情のかけらはあるさ」
妻が言下に言って退けた。
「貴方には無いわ」
私は苦虫を噛み潰すような顔付きをしてから言った。
「酷い物言いだな」
妻が冷淡な口調で畳み掛けて来た。
「と言うか、貴方は病気で心を失ったわけではなく、最初から冷酷な心しか持ち合わせていなかったのよ」




